不整脈には、危険なものとそうではないものがある
不整脈はとてもありふれた疾患です。どれくらいありふれているかというと、成人した日本人のおよそ99%が不整脈を持っているくらいです。したがって、この記事を読んでいる皆さんも、まず間違いなく不整脈を持っています。
大半の方は不整脈の存在に気づいていないだけで、検査をすればほぼ全員に不整脈が見つかるでしょう。では、なぜそんなにありふれた不整脈が問題になるのでしょうか。
それは、不整脈には、危険な不整脈とそうではない不整脈があるからです。
「不整脈」という病気は存在しない
最初に断っておきたいのは、「不整脈」という病気は存在しないということです。いわゆる不整脈とは、脈が乱れるさまざまな疾患を、まとめて呼んでいるにすぎません。
脈が乱れる疾患は、原因となる心臓の場所や種類によっておよそ8種類ほどありますが、もしあなたが医師でなければ覚える必要はありません。
つまり、「不整脈」という病気はないのです。私は、そもそも不整脈という言葉は要らないのではないか、とさえ思っています。
そしてもっとも重要なことは、不整脈と呼ばれる症状の9割はとくに問題はなく、何の問題も要らないということです。日本人のほぼ全員が持つ不整脈がそんな危険な疾患だったら、大変です。
しかし、不整脈のなかにはごく一部に、放っておくと危険な状態につながりかねないものがあるのも事実です。
【まとめ】
・不整脈とは「脈が乱れる病気」の総称
・不整脈の9割は心配不要
気付かないことも多い「不整脈」の症状とは?
不整脈の症状には次のようなものがあります。
・脈が速くなったり、動悸がする
・脈が抜ける
・胸の違和感
・息切れやだるさ、めまいなど
このように、脈が乱れるといってもさまざまな症状があるのが不整脈です。気づいていない方も多いことでしょう。
また、不整脈のメカニズムには今もよく分かっていない部分が多いため、他の心血管疾患と同じように、症状から病気を判断することはほぼ不可能です。症状が感じられないからといって問題ないわけではありませんし、辛い症状があるから重い病気ともいえません。
したがって、不整脈の種類や重症度を知るためには、心電図検査をするしかないのです。心電図検査というと大げさなようですが、痛みもありませんし、恐れる必要はまったくありません。
自分の不整脈に気付き「いつか突然死してしまうのではないだろうか……」と不安に襲われる方も多いのですが、検査をして問題ないタイプの不整脈であることがわかったとたんに、不安が消えるケースが多いようです。
【まとめ】
・不整脈の症状はさまざま
・症状からは病気があるかどうかを判断できない
・不整脈の種類や重症度を知るには心電図検査が必要
受診すべきなのか、自分で見分けるためには?
大半の不整脈は、放っておいても全く問題ないと診断されることでしょう。ただし、繰り返しますが、一部に危険な不整脈があることも事実です。
治療すべきかどうかは、症状からも推測することができます。先述した症状を確認していただくと、短時間だけ起こる症状と、長時間持続したり、全身に起こる症状とに分けられることが分かります。
短時間だけの症状は「脈が一時的に早くなる・抜ける」「一瞬、胸がつかえる感じがする」などが代表的です。こういった症状の不整脈のほとんどは命に別状がなく、特別な治療は要らないものがほとんどです。
しかしなかには、動悸が長時間続いたり。だるさや息切れなど全身に影響を及ぼす症状もあります。場合によっては意識が遠のくケースもあります。
こういった不整脈は、次の2つの理由から治療が必要になります。
まず、このように持続したり、全身に症状が現れる不整脈の背後には、命に関わる重大な病気が隠れている可能性が高いためです。直ちに検査をし、病気を突き止めて治療しなければなりません。
もう1つの理由は、不整脈の裏に隠れる病気とは別に、不整脈の症状そのものが生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)を著しく下げるためです。仮に命にはまったく影響がない不整脈でも、QOLを下げるならば放っておくわけにはいきません。
【まとめ】
・短時間だけ現れる症状のほとんどは治療不要
・症状が持続したり、全身に現れる不整脈は治療が必要
山下 武志
心臓血管研究所・所長