米議会予算局のマイナス40%成長率の解釈

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米国議会予算法に基づき設置され、中立的な立場で予算や前提となる経済指標の推計を行う米国議会予算局(CBO)が、最新の見通しを公表しました。GDP成長率や失業率は歴史的な水準への悪化が見込まれています。ただ、市場の反応は冷静にも見えます。その背景を述べつつ、CBO予想のポイントについて振り返ります。

米国議会予算局:米国の財政赤字は今年度は約400兆円に拡大する見込み

米国議会予算局(CBO)は2020年4月24日、20年度(19年10月~20年9月)の連邦財政赤字が過去最大となる3兆7000億ドル(約398兆円)に達するとの予測を明らかにしました。GDP(国内総生産)比で17.9%と、前年度の4.6%から急拡大する可能性が示されました。

 

今回の予想の前提の経済条件を見ると、4-6月期GDP成長率は年率換算でマイナス39.6%、失業率は7-9月期に16.0%に達することなどが示されました(図表1、2参照)。

 

四半期、期間:2020年1-3月期~2020年10-12月期、予想はCBO 出所:米議会予算局(CBO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]CBOが想定する米国実質GDP成長率予想 四半期、期間:2020年1-3月期~2020年10-12月期、予想はCBO
出所:米議会予算局(CBO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

四半期、期間:2020年1-3月期~2020年10-12月期、予想はCBO 出所:米議会予算局(CBO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2] CBOが想定する米国失業率の予想 四半期、期間:2020年1-3月期~2020年10-12月期、予想はCBO
出所:米議会予算局(CBO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:米議会予算局、年率換算、労働参加率

米国議会予算法に基づき設置され、中立的な立場で予算や前提となる経済指標の推計を行うCBOが、最新の見通しを公表しました。GDP成長率や失業率は歴史的な水準への悪化が見込まれています。ただ、市場の反応は冷静にも見えます。その背景を述べつつ、CBO予想のポイントについて振り返ります。

 

まず年率換算でマイナス4割近いGDP成長率です。この数字だけを見ると、米国の景気の落ち込みは深刻です。報道などのタイトルでこの数字を見かけることはありますが、市場では注目されることはないと思われます。GDP成長率を年率で語ることが多いため、四半期年率を目安としてよく利用されますが、今のように四半期ごとの変動が極端に大きいときは、適切な尺度とは言い難いと思われます。

 

実際、7-9月期は現在の移動制限が緩和されるという仮定のもと、急回復が想定されています。結局20年を通じた成長率はマイナス5.6%と、先日国際通貨基金(IMF)が公表したマイナス5.9%とほぼ一致する予想に過ぎません。もちろ ん大きなマイナス成長であることに変わりはありません。ただ、市場が神経質だったのはどこまで下落するか見当がつかないことへの恐れでしたが、この点は解消されつつあるようです。

 

次に、失業率の予想ですが、この数字のほうが今後の鈍い景気回復動向がうかがえます。CBOは21年の成長率をプラス2.8%と見込んでいます。まずまずの数字に見えますが急落からの反動でしょう。一方、失業率は20年が11.4%、21年になっても10.4%が見込まれています。

 

失業率は労働力人口に占める失業者の割合で、4月月初に公表された3月の数字では労働力人口が約1億6291万人、 失業者は約714万人です。この統計にその後の新規失業保険申請件数(≒失業者)を加えて、失業率の概算が目安として使われますが、注意が必要です。理由は雇用市場から出てしまう人がいるからで、CBOは労働参加率の低下でその点を示しています。それによると1-3月平均の63.2%から59.8%に低下すると見込んでいます。おおよそですが800万人程度の人が雇用市場を退出することになります。この数字を基にした失業率の予想が、図表2の数字で、7-9月期に16%程度に悪化すること、21年にかけて高水準の失業率が続く可能性があること、同じことですが雇用市場からの退出による雇用市場の縮小が想定されます。

 

たとえ4-6月期で成長率底打ちしても、緩やかな回復となる可能性があることも視野に入れる必要がありそうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米議会予算局のマイナス40%成長率の解釈』を参照)。

 

(2020年4月27日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・ヘッドライン

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧