今回のEU首脳会談では、復興基金の設置に大枠で合意となりました。同じ23日に公表されたユーロ圏の4月の購買担当者景気指数(PMI)が前月に続き歴史的低水準であったことを見ても、大規模な景気支援策が求められることは容易に想像できます。ただ、詳細が先送りされた要因は財源と見られ、ユーロ圏の財政問題が浮き彫りとなった面も見られます。
EU首脳会議:「復興基金」設置で合意、ただ規模や財源など詳細は先送り
欧州連合(EU)の加盟国首脳は2020年4月23日にテレビ会議を開催し、新型コロナウイルスの感染が収束した後の経済対策について復興基金を設けることで合意しました。
基金は財政状況の悪い加盟国の支援に使われる見通しです。しかし、基金の財源や規模、仕組みなどの詳細には踏み込まず、合意は次回以降に持ち越しされました。
どこに注目すべきか:EU首脳会談、復興基金、財源、共同債
今回のEU首脳会談では、復興基金の設置に大枠で合意となりました。同じ23日に公表されたユーロ圏の4月の購買担当者景気指数(PMI)が前月に続き歴史的低水準であったことを見ても、大規模な景気支援策が求められることは容易に想像できます(図表1参照)。ただ、詳細が先送りされた要因は財源と見られ、ユーロ圏の財政問題が浮き彫りとなった面も見られます。
報道などから今回のEU首脳会議では、復興基金の設立ではまとまりましたが、財源や規模を巡り意見が集約できていない模様です。EU首脳らはEUの行政執行機関である欧州委員会に対し、5月6日までに妥協案を準備するよう指示したとも伝えられており、詳細を待つ必要がありますが、大枠は次のように想定されます。
まず規模については、基金の規模は1兆~2兆ユーロ(約116兆~232兆円)超という観測記事が見られます。実際、ミシェルEU大統領は記者会見で復興基金創設の意義を強調し、ミシェルEU大統領と共に会見したフォンデアライエン欧州委員長は億単位ではなく兆単位の話をしていると述べていることから、ある程度の規模は想定されます。
仮にその様な規模となると、財源が問題となります。一部報道では、EUの次期7ヵ年中期予算案に復興資金を計上して支出することや、新たな資金調達の仕組みを通じて資本市場からの借入れなどが候補となっているようです。
ユーロ圏の総論合意の最終的な落ち着き所を占うのは困難ですが、依然EUで影響力があると見られるドイツのメルケル首相が支援に前向きな点がポイントです。
その点期待はありますが、イタリアやスペインなど財政が厳しい国と、財政規律を重視するオランダやオーストリアとの間の溝は解消されていないようです(図表2参照)。イタリアやスペインは返済が必要でない融資として補助金を支持する一方で、自国民の税金が他国の支援に使われることを懸念するオーストリアなどは反対していると見られるからです。
ユーロ圏各国で債務を分かち合う共同債(いわゆるコロナ債)を発行する案は加盟国の立場の相違が大きく、議論は深まらなかった模様です。共同債は合意を形成することも難しい上、これから新たな仕組みを考える必要があり時間が必要です。目先は時間優先で必要な対策を揃えた結果なのかもしれませんが、物足りなさは残ります。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁はユーロ圏の景気後退は深刻でEU首脳に対策のスピードと規模に警告を発したそうですが、ラガルド氏の不満が解消したのかに注目しています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『EU首脳、復興基金で合意するも詳細は先送り』を参照)。
(2020年4月24日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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