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今回の韓国の政策金利については、事前の市場予想では過半が据え置きを支持する一方で、一定数は利下げを見込んでいました。結局、韓国中銀は利下げ余地を温存して、緊急措置の効果を見極める姿勢を示しました。新型コロナウイルスの韓国経済への影響が今後も懸念されることから、李総裁は会見で今後に利下げの可能性は残しています。
韓国中央銀行:政策金利を0.75%に据え置き緊急措置の効果を見極め
韓国銀行(中央銀行)は2020年4月9日の金融通貨委員会で政策金利である7日物レポ金利を過半の市場予想通り0.75%に据え置くことを決めました(図表1参照)。
韓国は、緊急措置の一環で、債券購入により無制限の流動性供給を決めています。政策金利に引き下げ余地を残し、新型コロナウイルスによる影響との長期の闘いに備えるため様子見の姿勢を選択した格好です。
どこに注目すべきか:据え置き、ウォン、輸出、新規感染者数
今回の韓国の政策金利については、事前の市場予想では過半が据え置きを支持する一方で、一定数は利下げを見込んでいました。結局、韓国中銀は利下げ余地を温存して、緊急措置の効果を見極める姿勢を示しました。新型コロナウイルスの韓国経済への影響が今後も懸念されることから、李総裁は会見で今後に利下げの可能性は残しています。
今回の据え置きのポイントは次の通りです。まず、韓国の経済成長予想を確認します。韓国中銀の想定では、新型コロナの世界の感染ペースが第2・四半期に大きく鈍化するとの想定では、韓国の今年の経済成長率は従来予想の2.1%を大幅に下回ることが示唆されました。
韓国経済のマイナス要因としては、感染初期段階から本格化させていた感染抑制に向けた対策により国内消費が軟調なこと、韓国を訪れる観光客が激減したこと、そして最大の懸念は半導体など回復の兆しが見られた輸出の動向です。現在公表されている3月までの輸出はプラスを確保しており、どの程度の影響が出るか判断が難しい状況です。そのため、4月21日に公表される輸出データなど今後のデータを見守りたいという考えがあったのかもしれません。
韓国の市場にやや落ち着きが見られることも様子見姿勢が可能となった背景と見られます。多くの新興国で通貨安が進行する中、ウォンは3月中頃から回復傾向となっています(図表1参照)。韓国株式市場も同時期に回復基調に転じています。世界の当局が金融、財政政策を公表した時期に重なっただけという面もあるのかもしれませんが、回復が鈍い他の新興国とはやや異なる動きとなっています。
新型コロナウイルスの感染者数が低下傾向であることが恐らく最大の安心要因と見られます(図表2参照)。韓国は恐らく、15年頃の中東呼吸器症候群(MERS)で対応に後れを取ったことが感染を拡大させた経験から、恐らく、今回のコロナウイルスでは早めの対応に着手したものと思われます。ドライブスルーまで利用した迅速な検査と共に、呼吸器疾患と他の患者を区別する国民安心病院をMERSの経験から用意していたことが早めの対応につながったのかもしれません。
世界経済の減速の韓国への影響や、また韓国が経済活動を回復した後の感染者数の動向など不透明な要因がある中、拡大が期待される債券購入や、追加利下げなど緩和姿勢を残しつつ様子見を決定したと見ています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新規感染者が減る中、韓国中銀は据え置き』を参照)。
(2020年4月9日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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