●世界的に株安が進んだ2月以降日本では下げが限定的となった業種や上昇した銘柄もみられた。
●東証33業種では内需中心の12業種が底堅く推移、うち構成銘柄の上昇割合10%超は9業種。
●インスタント食品やテレワーク、ウイルス治療薬開発に関連する企業やドラッグストアの株価が好調。
世界的に株安が進んだ2月以降日本では下げが限定的となった業種や上昇した銘柄もみられた
新型コロナウイルスの世界的な感染の拡大を受け、2月以降、主要国の株価指数は大きく下落しました。日本でも、1月31日から3月31日までの間、日経平均株価は18.5%、東証株価指数(TOPIX)は16.7%、それぞれ下落しています。ただ、詳しくみていくと、業種のなかには、比較的下げが限定的であったところもあり、また、そのような業種のなかには、上昇した銘柄も散見されます。
そこで今回のレポートでは、具体的にどのような業種に底堅い動きがみられたのか、上昇していた銘柄はどのようなものであったかについて、具体的に検証していきます。検証期間については、前述の1月31日から3月31日までとします。業種の分類は東証33業種を用い、対象銘柄は東証1部上場銘柄のうち検証期間の騰落率データを入手できる2,153銘柄とします。
東証33業種では内需中心の12業種が底堅く推移、うち構成銘柄の上昇割合10%超は9業種
東証33業種のうち、1月31日から3月31日までの期間において、TOPIXを上回るパフォーマンスを示したのは、内需を中心とする12業種の指数でした。具体的には、電気・ガス業(+0.1%)、パルプ・紙(-2.0%)、食料品(-8.6%)などです。一方、外需を中心とする21業種の指数は大きく下落し、海運業(-31.4%)、鉄鋼(-34.9%)、鉱業(-38.8%)の下落率は30%を超えました。
次に、比較的下げが限定的となった12業種の指数について、もう少し詳しくみていきます。各構成銘柄のうち、上昇した銘柄の割合が10%を超えた業種は、前述の電気・ガス業(36.4%)、パルプ・紙(33.3%)、食料品(30.1%)のほか、情報・通信業(12.2%)、医薬品(18.4%)、化学(10.3%)、小売業(15.1%)、水産・農林業(14.3%)、陸運業(11.6%)の合計9業種でした。
インスタント食品やテレワーク、ウイルス治療薬開発に関連する企業やドラッグストアの株価が好調
これら9業種のうち、上昇した構成銘柄が5銘柄以下の業種は、パルプ・紙(4銘柄)、水産・農林業(1銘柄)、陸運業(5銘柄)の3業種です。便宜上、これらの3業種を除いた6業種について、上昇率の上位10銘柄をまとめたものが下記の図表になります。電気・ガス業の上昇銘柄については、このところの原油安で、燃料コストの低減につながるとの見方が背景にあると推測されます。
その他の業種について、食料品では冷凍食品やインスタント食品メーカーが、情報・通信業ではテレワーク関連企業の株価が好調です。また、医薬品や化学では、ウイルスの治療薬や検査薬の開発にかかわる企業が上位に目立ち、小売業ではドラッグストアが健闘しています。このように、業種や個別銘柄の動きをみると、新型コロナウイルスの影響が色濃く表れていることが改めて確認できます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『世界的な株安進行のなか、底堅い動きの業種・上昇した銘柄は?』を参照)。
(2020年4月6日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト