2020年2月分鉱工業生産指数・速報値について

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

生産・前月比+0.4%と3ヵ月連続増だが、一部品目で部品供給に影響が出て小幅な伸びに

 

製造工業予測指数4月分大幅プラス見込みも、新型コロナウイルス感染拡大でマイナスの可能性が

 

2月分景気動向指数:先行CI・一致CIとも前月差上昇だが、基調判断は「悪化」継続か

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は+0.4%と3ヵ月連続の増加になった。15年を100とした季節調整値の水準は100.2と、19年9月分(103.2)以来の指数水準になった。消費税増税や台風の影響などで大きく落ち込んだ19年10月分(98.6)・11月分(97.6)からは回復してきたが、19年7~9月期の指数水準102.5に比べるとまだ低い。また、前年同月比は▲4.7%と5ヵ月連続の減少になった。

 

●2月分は前月比増加になったものの、製造工業生産予測指数と比べ下振れが大きく、また後述のように鉱工業出荷指数はしっかりした前月比であったが、鉱工業生産指数前月比は小幅な伸び率ににとどまった。新型コロナウイルス感染拡大により、一部の品目で部品供給に影響が出たことなどが、生産が小幅な伸び率になった要因と考えられよう。

 

●2月分鉱工業生産指数では、電子部品・デバイス工業の増加寄与が大きかった。電子部品・デバイス工業は19年4月を底に増加傾向が続いている。ほかに、鉄鋼・非鉄金属工業、石油・石炭製品工業等7業種が前月比増加した。自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、生産用機械工業等の7業種が前月比減少となった。電気・情報通信機械工業1業種が前月比横ばいとなった。

 

●経済産業省は基調判断を19年8月分・9月分の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正し、11月分・12月分でも判断を据え置いていたが、20年1月分では「総じてみれば、生産は一進一退ながら弱含んでいる」と上方修正した。2月分も判断は据え置きになった。

 

●鉱工業生産指数の2月分製造工業予測指数・前月比は+5.3%の増加であった。また、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値である先行き試算値でみると、1月分の前月比は先行き試算値最頻値で+2.0%の増加になる見込みであった。90%の確率に収まる範囲は+1.0%~+3.0%になっていた。+0.4%という実績は下限を下回る伸び率である。

 

●2月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+2.6%としっかりした伸び率で3ヵ月連続の増加となった。前年同月比は▲4.7%で5ヵ月連続の減少となった。

 

●2月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲2.0%の減少になった。3ヵ月ぶりの減少である。前年同月比は+1.4%と16ヵ月連続の増加となった。

 

●2月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲2.5%で2ヵ月連続で前月比下降となった。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年4~6月期は出荷の前年同期比が▲2.7%、在庫が同+3.0%、19年7~9月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.9%、19年10~12月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.9%であった。20年1~2月は出荷の前年同月比が▲4.0%、在庫が同+1.4%と、19年10~12月期に続いて「在庫調整局面」の状態にある。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると3月分は前月比▲5.3%の減少、4月分は前月比+7.5%の増加見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、3月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲3.1%の減少になる見込みになる。90%の確率に収まる範囲は▲4.1%~▲2.1%になっている。

 

●ただ製造工業予測指数の数字に関しては経済産業省もHPで、「この計画は、3月上旬に実施した調査結果の集計であるため、新型コロナウイルス感染症をめぐる最近の情勢変化の影響は十分織り込まれておらず、3月の大幅低下の後、4月に生産が戻るかは不確実性が大きいものと考えます。」と述べているように、特に4月分に関しては今後の動向によっては大幅な下振れが懸念される。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、3月分を先行き試算値最頻値前月比(▲3.1%)で延長すると、1~3月期の前期比は+0.7%の増加になる。この数字だけからは1~3月期に前期比が3四半期ぶりに増加に転じる可能性もあることになる。また、3月分を製造工業予測指数前月比(▲5.3%)で延長すると、1~3月期の前期比は0.0%と横ばいになる。ただし、製造工業生産予測指数回答時点から新型コロナウイルス感染拡大が深刻になっているだけに、1~3月期の前期比が減少になったとしてもおかしくはないだろう。

 

●鉱工業生産指数は2月分確報値が公表される4月17日の段階で年間補正が実施され過去の数字も変わる。そして4月30日に3月分速報値が発表される。その段階で1~3月期の前期比が、プラスかマイナスかが判明することになる。

 

(2月分景気動向指数:先行CI・一致CIとも前月差上昇だが、一致CIによる基調判断は「悪化」継続か)

 

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.9程度と2ヵ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、マネーストックの4系列が前月差プラス寄与に、中小企業売上げ見通しDIが前月差寄与ゼロに、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の4系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●2月分の一致CIは前月差+0.4程度と2ヵ月連続上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の5系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業が前月差寄与ゼロに、有効求人倍率1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分・11月分・12月分・1月分に続き、2月分も「悪化」継続になると予測する。一致CIの前月差、一致CIの3ヵ月後方移動平均前月差ともにプラスになるが、3ヵ月後方移動平均前月差のプラス幅が上方修正への条件を満たさない。

 

●2月分の先行DIは33.3%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、マネーストックの3系列がプラス符号に、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になると予測した。

 

●2月分の一致DIは85.7%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がプラス符号に、有効求人倍率1系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年2月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

2020年3月31日

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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