日経平均が20,000円を超えて上昇するには材料不足
3月26日の東京株式市場では、日経平均株価は大幅安となっています。25日夜に行われた小池東京都知事の会見で「感染爆発の重大局面」との危機感を表明し、26日~27日の自宅勤務や28~29日の不要不急の外出自粛を要請したことが売りの材料と、ニュースで伝えられています。これに対し、埼玉県など近県でも足並みをそろえる方針のようです。
インパクトが大きいのは「首都封鎖」という言葉です。ここにきて、「(新型コロナウイルスの感染者拡大で)首都封鎖が現実味を帯びてきた」のようなWEBのニュースも散見され始めており、マーケットの楽観ムードは再びしぼんでしまった感があります。
この都知事による会見という要因もあるのでしょうが、そもそもとして、大幅高を続けていた日本株は、上昇一服の頃合いでありました。
このまま節目の20,000円を超えてグングン上昇していくには、材料不足である点は否めません。新型コロナウイルスの感染者数にアタマ打ち感が出てきたとか、(世界的にも)死者数が少なくなってきたといった好材料が欲しいところですが、現実は逆です。感染者数うんぬんという「数字」だけでなく、芸能人や、英国のチャールズ皇太子が新型コロナで陽性反応と伝えられていることも、投資家心理を冷やします。
また、今週は3月期企業の配当金や株主優待が得られる権利を取りに、投資家の資金が流入しやすい地合いでした。その権利を得られる最終日は週末の27日なのですが、週明け30日以降は一転して、資金がいっせいに逃げ出していく展開が見込まれます。株価の反発で少しでも利益が出ているうちにと、先手を打って資金を引き揚げる動きが出ているものと考えられます。
株式市場が「通常営業」に戻るのは困難
前日の米国市場では、米国政府による大型の景気対策への期待から、NYダウは大きく上昇しました。これに対して、日本でも「10万円を全国民に配る」という話が伝わってきた頃は、それなりに政府の景気テコ入れ期待がありましたが、早くも薄れてきているようです。
所得制限をかけるというのはわからなくもないのですが、商品券を配るとか、それも国産の牛肉を買える「お肉券」にするといった話が出始めたあたりから、「迷走」が嫌気されています。
日本政府による財政政策はあまりアテにできず、日本銀行による金融政策も策が尽きてきた感があります。平時の相場であれば、米国市場が堅調に推移すれば東京市場も相応に上昇が期待できるのですが、このところの両者の動きは相関性が薄れています。
4月に入り、心機一転の展開に期待したいところではありますが、新型コロナウイルスの影響をまだまだ織り込み切れておらず、それどころか、どこまで広がるのかわからない中では、株式市場が「通常営業」に戻るのは困難でしょう。
目先では、3月下旬~4月上旬に順次発表される小売企業の月次データ、さらには4月中旬以降に公表される企業の2020年度業績見通しをみてみたいのですが、悪いのは予想されるものの「どの程度悪いのか」がイマイチ読めません。
コロナ関連倒産で飲食事業者はすべて「北海道」
参考になりそうなのが、帝国データバンクが発表した「TDB景気動向調査」です。これによると、企業の売上高の減少傾向が、どのぐらい強まっているのかがわかります。
2019年は増加企業の割合と減少企業の割合は同程度で推移していましたが、減少企業が徐々に増えています。2020年3月(速報値:3月17日~24日の集計結果)では、 売上高が減少している企業は55.8%と半数を超え、増加している企業の割合(21.4%)を30ポイント以上上回ったとのことです。とりわけ、旅館・ホテルや家具類小売、 飲食店、 娯楽サービスなどで売り上げが前年同月より減少している企業が増えています。
同じく、帝国データバンクが発表した「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査(3月24日10時現在判明分)では、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産(法的整理または事業停止)は全国で13件(法的整理8件、 事業停止5件)ありました。
業種別では旅館(2件)、 国内旅行業、 クルーズ船、 レンタカー(各1件)などの観光関連事業が5件、 コロッケ製造、 鮨割烹店、 食堂運営などの飲食関連事業者が3件を占め、飲食関連事業者のエリアはすべて「北海道」です。
北海道といえば、新型コロナウイルスの感染拡大で「非常事態」を知事が宣言したことが、記憶に新しいです。日本人観光客も訪日客も激減し、それどころか、地元の住民でさえ外出を控えるようになり、経済活動が止まってしまいました。
今回、都知事も「首都封鎖」という言葉を使って、このままでは「非常事態」になるとの危機感を表明しました。もし、感染者の増加ペースが上がってくれば、東京も北海道のように経済活動が止まってしまうリスクが出てきます。そうなれば、東京にとどまらず、日本全体に悪影響を及ぼします。
週明けから大きく上昇してきた日本株ですが、あくまでもリバウンドであって、このような状況では、本格上昇は時期尚早と考えるべきでしょう。
本当に「首都封鎖」となれば、業績悪化、資金繰り悪化で倒産する企業が急増するリスクが高まります。日本株は安値更新どころか、下値模索の暴落まで考えておく必要がありそうです。