経営環境の変化に合わせ、繰延利益を赤字で相殺
減価償却を活用した節税の本質は、課税の繰延であることは繰り返し述べてきました。課税の繰延を続けていくと、繰延利益が膨らんでいくことになります。
例えば、毎期10億円の黒字所得を稼ぐ会社が飛行機のオペレーティングリースで6年後に所得10億円を繰り延べたとすると、今期は所得がゼロになりますが、6年後は事業の黒字所得10億円と繰り延べられてきた所得10億円が実現して、20億円の所得になります。再度、飛行機のオペレーティングリースで20億円を繰り延べると、12年後の黒字所得は30億円になり、この所得をどうすればいいのか、検討しなければならなくなります。このように、本業の事業黒字が続くと、繰延利益は大きく膨らんでいくことになります。
[PR]元・国税局部長による特別セミナー@幻冬舎
4月11日(土)開催『資産5億円以上の方のため戦略的「相続税」対策』
では、オペレーティングリースなどで莫大に膨れ上がった繰延利益をどのように処理すればよいのでしょうか。ここでは、法人を前提として、三つの対処法を見ていきます。
第一に、経営環境の変化への備えです。例えば、課税を10年繰り延べた場合、10年後も課税所得の黒字を維持できているでしょうか。国税庁の発表によれば、法人税の黒字申告割合は、過去10年間で3割前後です。
つまり、法人の7割は赤字申告になっていて、黒字申告は少数派なのです。長期間にわたって、黒字申告を維持することはなかなか難しい、ということがわかります。そうであるなら、大抵の法人はどこかで赤字が発生するので、そこで繰り延べてきた黒字所得を処理することが考えられるわけです。
仮に黒字が維持できず、10年後、課税所得が赤字になっている場合には、繰り延べてきた所得で赤字を相殺することができます。一般的に、青色申告の法人は、欠損金(いわゆる赤字)を9年間、将来に繰り越すことができますので、この間に繰り延べてきた所得と欠損金を相殺することができます。
また、経営を続けていくと含み損を抱える資産を持つこともあるかもしれません。そうした含み損を抱える資産を売却して、損失を実現させて、繰り延べてきた所得と相殺する手法も考えられます。さらには、新たなビジネスへの投資を行うと、ビジネスの立ち上げ当初は赤字になることが多いと思いますが、その場合、繰り延べてきた所得を活用して赤字と相殺することができます。
役員退職金の原資として繰り延べてきた所得を活用
第二に、予定されている費用などへの対応です。代表的なものとして、役員退職金は一般的に多額になりますので、その支払いの原資として繰り延べてきた所得を活用することができます。
[PR]元・国税局部長による特別セミナー@幻冬舎
4月11日(土)開催『資産5億円以上の方のため戦略的「相続税」対策』
第三に、課税の繰延ではない他の多様な方法を活用して所得と税金をコントロールし、タックスマネジメントを実現していくことです。減価償却は課税の繰延という節税手法の一つですので、他の手法も活用することにより、膨れ上がった繰延利益をコントロールしていくことは可能と考えられます。