事業年度が1年未満の場合は償却率を月割計算する
法人の設立1期目や決算期を変更した場合には、その法人の事業年度が1年に満たない場合があります。このように事業年度が1年未満の場合は、定額法や定率法の償却率を月割計算することになります。具体的には、定額法または定率法に係る償却率または改定償却率×その事業年度の月数/12を使って計算することになります。
例えば、12月に設立された法人(3月決算)が取得価額2000万円、耐用年数17年、償却率0.118、定率法の資産を12月に取得し、即時に事業供用した場合の減価償却費を見てみましょう(償却保証額は省略します)。
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まず、この場合の償却率は、0.118(定率法の償却率)×4/12=0.04になります。ここで、小数点3位未満の端数がある場合、その端数は切り上げられます。この償却率を基に減価償却費を計算すると、2000万円×0.04=80万円となります。
資産の損耗程度に応じて償却額を増加できる制度も
通常の減価償却費にプラスαの費用を上乗せして費用計上できる「増加償却」という制度があります。増加償却は、通常考えられる以上に資産が消耗したときに、その分だけ償却費に加えましょう、という制度です。
例えば、工場の生産ライン(機械装置)が通常の使用時間を超えて24時間フル稼働している場合などは、償却資産の損耗が大きくなるので、通常の減価償却費に、償却資産の使用時間が長くなっている分の増加償却を加えることができるということです。
機械及び装置の法定耐用年数は、通常の経済事情における平均的な使用時間(標準稼働時間)を基に決められています。しかしながら、注文の増加などにより、法定耐用年数が想定している標準稼働時間よりも実際の使用時間が長い場合があります。そこで、損耗の程度に応じて償却額を増加するわけです。
増加償却が適用できる償却資産は機械装置のみであり、また、次の五つの要件をすべて満たす必要があります。
①標準稼働時間を超えて使用していること
②定額法又は定率法により償却していること
③増加償却割合が10%以上であること
④増加償却の届出書を、増加償却を行う事業年度等の法人税等の確定申告書の提出期限までに提出していること
(注)この届出書は、増加償却を行う課税期間ごとに提出する必要があります。
⑤超過使用したことを証明する証拠書類を保存していること
増加償却割合とは、機械装置の1日当たりの超過使用時間数×3.5%(少数点以下2位未満切り上げ)とされています。一方で、機械装置の通常の使用時間は、国税庁の通達により、設備の種類ごとに週6日制を前提として、1日の時間が8時間、16時間、24時間とされています。通常の使用時間が24時間とされている設備には、増加償却の適用がありません。
1日当たりの超過使用時間数が2.6時間以上であれば、増加償却割合は10%以上になりますので、要件の一つを満たすことになります。通常8時間の機械装置であれば、10.6時間以上の使用、通常16時間の機械装置であれば、18.6時間以上の使用が必要になってきます。なお、要件を満たせばいくらでも償却費を上乗せできるわけではありません。法人が増加償却を適用する場合の償却限度額(損金に算入できる減価償却費の限度額)は、次のとおりです。
償却限度額=普通償却限度額+普通償却限度額×増加償却割合
増加償却については、増加償却割合の計算が面倒ですし、超過使用したことを記録し、証拠書類を保存するとともに、確定申告書の提出期限までに届出書も提出しなければならないことから、適用要件を満たすのは、なかなかハードルが高いかもしれません。
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また、増加償却の適用ができれば、減価償却費を通常よりも多く経費や損金に算入できますから魅力的に思えるかもしれませんが、基本的に使用実態に合った減価償却を行うもので、課税の繰延というタックスメリットはあまり得られません。