訪日客も日本人の来店客も減少した国内デパート各社
「コロナショック」により、日本人が遠出したりせず、自宅の近くにとどまっているということを示すデータが出そろった。
国内のデパート(百貨店)、スーパーマーケット各社の2月の月次データが3月上旬から順次発表され、デパート(百貨店)は苦戦し、スーパーは売り上げを伸ばしているということが判明した。
新型コロナショックの感染者拡大によって国内の各地では外出する人が激減しており、繁華街や中心街では人通りが減ったというニュースが頻繁に伝えられている。
・三越伊勢丹:前年同月比14.3%減
・Jフロントリテイリング(百貨店事業):前年同月比27.9%減
・H2Oリテイリング(百貨店事業):前年同月比12.9%減
・高島屋:前年同月比12.9%減
・そごう・西武:前年同月比6.5%減
新型コロナの影響を最も大きく受けているのが、デパート(百貨店)各社である。ご覧のように、全社が前年の2月に比べて大きく売り上げを減らしており、大丸や松坂屋を展開しているJフロントは3割近い下振れとなった。三越伊勢丹も14.3%のマイナスで、個別に見ると三越銀座店が前年同月比36.2%減と散々な状況だ。
これには、訪日観光客の減少という要因もある。各社ともに、東京ならば銀座、浅草、大阪ならば心斎橋、難波といったところに立地する店舗は軒並み苦戦している。2月は中国、韓国といったアジア系の減少が響いているが、足もとの3月になって欧米系の訪日客も激減していることから、さらなる下振れが懸念される。
訪日客の減少は仕方ないのかもしれないが、日本人の来店者が激減しているのは、かなり痛い。当初、国内消費は底堅いという見方が新聞報道などで多かっただけに、「日本人が外出しなくなった」というのは想定外であろう。
テレワーク、リモートを導入し、在宅勤務の体制に移行している企業は三大都市圏を中心に増えてきている。休日も外出する人は目に見えて減ってきており、ターミナル駅のそばで店舗を展開するデパート(百貨店)各社にとっては、厳しい事業環境である。
なお、北海道では非常事態宣言により、自治体として住民に外出自粛を強く要請している。道内に店舗を有する企業は、より大きな痛手を被りそうであり、札幌三越のほか、丸井今井を傘下に持つ三越伊勢丹はかなり厳しいと言えそうだ。
スーパー各社の2月月次データは前年を上回る実績に
デパート(百貨店)の厳しい状況とは反対に、スーパーマーケットを運営する各社は、各社ともに前年の2月を上回る実績を残している。
・セブン&アイ(イトーヨーカ堂):前年同月比5.0%増
・ライフコーポレーション:前年同月比8.6%増
・いなげや:前年同月比8.5%増
・カスミ:前年同月比3.3%増
・オークワ:前年同月比2.3%増
・イズミ:前年同月比1.3%増
ご覧のように、こちらは全社が前年2月の実績を上回った。昨年来ずっとマイナスだったが、久しぶりにプラスに転じたというところも見られた。
スーパーの中でも、ライフやいなげやのように住宅地に近接型の店舗、とりわけ食品売り場をメインとした展開を行う会社が一段と好調であった。それに対して、イトーヨーカ堂(アリオ)やイズミの「ゆめタウン」のように、モール型の店舗を展開するところは、上振れの幅が小さくなった点が特徴的と言える。
このように、デパート(百貨店)は苦戦、スーパーは堅調という構図がわかったが、スーパーの月次データが「順風満帆」を続けられるかどうかは、まだわからない。というのも、3月になってウーバーイーツなど、宅配を利用する消費者が急増というニュースが伝えられており、これはスーパーの総菜コーナーの強敵である。
さらに、客ばなれに悩む住宅街の外食店が、一斉休校で在宅の生徒・学生をターゲットに「100円カレー」のような取り組みを始めており、これもスーパーから客を奪うことになる。子どもは「キャンペーン価格」のものを食べるが、親は通常メニューをオーダーするため、家族単位での来店を促す「きっかけ(動機)」になり、売上増に効果的として、全国で増えてきているとされる。
確かに外出を控えてと言われても、ずっと家にいるのは酷であり、天気の良い日中ぐらいは外に出たいと思うのが、自然である。三食すべて自宅でというのはちょっと…という方も少なくないだろう。
在宅の状況が長期化するにつれ、朝と夜の食事はスーパーの冷凍食品や総菜が引き続き優勢を保つものの、ランチタイムに関しては「胃袋」の奪い合いが起こりそうだ。スーパーには少しずつ、アゲインストの風(逆風)が吹いてくるかもしれない。