3月17日の米国市場では、NYダウは朝方に節目の20,000ドルを割り込みましたが、その後は反発に転じています。トランプ政権が大規模な経済対策を検討というニュースがここにきて出てきましたが、このまま株価のリバウンドは続くのでしょうか。

米国政府が100兆円を超える大規模な経済対策を検討

前日の大幅下落を受け、注目の集まっていた3月17日の米国株式市場では、NYダウは終値で21,237.38ドル(+1,048.86ドル)の大幅反発となりました。+5.20%となりますが、16日は-10%ほどの下落となっていますので、戻りは鈍いという見方をする投資家もいるかもしれません。

 

ただ、朝方は売りが先行し、NYダウはいったん節目の20,000ドルを割り込みました。そこからの大幅高ですので、底堅さを見せたと言えそうです。ショート(売り持ち)の投資家が目先のターゲットを20,000ドルとしていたことは容易に予想されました。大台割れを機に買い戻しに動いたとみられ、20,000ドルを回復すると株価上昇に拍車がかかりました。

 

NYダウは20,000ドルをいったん割り込んだが、その後は上昇して1日の取引を終えた。
NYダウは20,000ドルをいったん割り込んだが、その後は上昇して1日の取引を終えた。

 

FRB(連邦準備制度理事会)による一連の利下げや金融緩和で、米国の金融セクターにおける収益悪化といった懸念は残ります。さらに、米国も日本やイタリアのように「外出を控えるように」とのアナウンスが政府サイドからあり、外食産業、レジャー産業が一段と厳しくなるというネガティブ材料も出てきました。

 

これに対して、米国の当局が無策といったことはないはずであり、節目の20,000ドル割れを機に、ショートの投資家がポジションを閉じて、いったん様子見に転じるのは自然なことと思われます。

 

実際のところ、米国の政府サイドから新たな材料が出てきました。新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響を和らげるため、経営が厳しい企業の支援や納税の猶予など、合計で100兆円を超える大規模な経済対策を検討していると、この日の記者会見でトランプ大統領とムニューシン財務長官が明らかにしました。

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、経営が悪化している航空や観光などの企業に対する資金支援を行うほか、仕事を休んでいる人の納税の猶予などが含まれ、小切手などの形で直接給付する措置も検討していると、NHKのニュースが伝えています。

「鯨幕相場」の様相で、投資家も疑心暗鬼か

当面の下値メドと見られていた20,000ドルまでの下落を達成し、ここで反発したことから、ショート(売り持ち)の投資家やベア(弱気)スタンスの金融関係者からしてみれば、ここからさらに売り崩していくには、難しくなるかもしれません。

 

同様に、安いところで買ってみようと考えている投資家からしても、ここで下落トレンドが一巡するのか、それとも底割れするのか、確信が持てません。

 

NYダウ・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
NYダウ・日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

NYダウの日足チャートをみると、このところはおおむね、下落→上昇→下落→上昇…を繰り返していることがわかります(一度だけ続落がありますが…)。これを「鯨幕(くじらまく)相場」と言います。

 

株価の相場が上げと下げが交互になっている状態のことです。終値が始値より高い場合には白色の陽線、始値が終値より高い場合には黒色の陰線で表示されるので、交互になっている様が通夜や葬式で使う白黒の幕のことをいう「鯨幕」に形状が似ていることから、そう呼ばれています。

 

これは市場の迷いがあり、上にいくのか下にいくのか市場参加者の見方が分かれている時や、手がかりとなる材料がない時に「鯨幕相場」になる傾向にあります。

NYダウはリバウンドか、底割れか?

今回のケースでは、26,000ドル近辺でのもみ合いから20,000ドル割れにかけての下落で「鯨幕相場」の様相です。

 

この状況から、売り方は売ってもすぐに買い戻し、買い方は買ってもすぐに売って、先行きに対して疑心暗鬼だったと推測できます。ただ、すべての投資家の心の中では「まだ下がるだろう」、「20,000ドルまで下げるのでは」といった思いがあったため、下落と上昇を繰り返しながら、NYダウという指数は下げていったものと考えられます。

 

一転して、彼らの心の中に「20,000ドル割れで、今度はリバウンドに転じるのでは」という思いが出てきたら、20,000ドル近辺での安値圏でのもみ合いから、株価上昇に転じるかもしれません。

 

反対に、米国内で新型コロナウイルスの感染者拡大といったネガティブなニュースが流れれば、19,000ドル、18,000ドル…と、投資家目線がさらに下がっていくかもしれません。重要な局面にあるということです。

 

当初のトランプ大統領の楽観的なスタンスからすれば、今回のFRBや米国政府の打つ手は早く、評価する声があります。しかし、トランプ大統領が日本時間の17日朝、ツイッターに「アメリカは中国ウイルスの影響を特に受ける、航空会社などの産業を強力に支援する」と投稿したことが、昨日のトピックとして注目を集めています。

 

当然ながら、中国政府はこれに猛反発しており、「場外乱闘」の様相です。「トランプだから、仕方がない…」と言えばそれまでですが、仮に感染者数が増えて、マーケットが米国政府の政策実行力に疑問を持つことでもあれば、「トランプリスク」が再燃し、株価の下押し圧力が強まることもありそうで、要注意です。

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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