2020年1月分「機械受注」データの分析

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

1月分機械受注(除船電民需)は前月比+2.9%と2ヵ月ぶりの増加

 

1~3月期見通し前期比▲2.0%減少に。残り2ヵ月各前月比+0.1%で達成だが

 

3ヵ月移動平均前月比は2ヵ月ぶりの増加も、「足踏みがみられる」の判断継続

 

製造業の12月分・1月分に見られた持ち直しの動きは、今後新型コロナで水泡か

 

 

●1月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は+2.9%と2ヵ月ぶりの増加になった。3ヵ月移動平均は前月比+0.4%で2ヵ月ぶりの増加になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は▲0.3%で2ヵ月連続の減少になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回12月分では大型案件は0件だった。今回1月分でも大型案件は0件だった。

 

●1月分製造業の前月比は+4.6%と2ヵ月連続の増加だった。当初前月比+0.6%の増加だった11月分は季節調整替えで、前月比▲1.2%の減少に転じた。続く1~3月期の製造業の前期比見通しは▲3.9%から▲1.0%に変更された。これはかなり弱かった過去3四半期の平均達成率(季節調整値)86.2%を乗じて計算しているためだ。残りの2・3月分が各々0.0%なら、1~3月期は前期比+5.8%と上振れる計算になる。製造業は、米中貿易摩擦が一服したことなどから、新型コロナウイルスの感染拡大がそれほどひどくなかった1月時点まででは持ち直しの動きがみられていた。1月分の製造業では17業種中、10業種で増加し、減少は7業種だった。

 

●1月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲1.7%と2ヵ月連続の減少になった。12月分の電力業の大型案件は0件だった。1月分の電力業は大型案件が発電機の2件であった。前月比は+9.7%の増加になった。1月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比▲5.1%と2ヵ月連続の減少になった。非製造業12業種中、7業種が増加で5業種が減少となった。

 

●大型案件は、前回12月分では合計5件。内訳をみると、前述の運輸業・郵便業3件(船舶3件)の他は、外需2件(電子計算機等2件)であった。今回1月分では合計7件。内訳をみると、前述の電力業2件(発電機2件)の他は、官公需3件(防衛省2件〔船舶1件・航空機1件〕、その他官公需1件〔電子計算機等〕)、外需2件(電子計算機等2件)であった。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は1月分前月比+8.1%と2ヵ月ぶりの増加となった。前年同月比は▲4.5%と9ヵ月連続の減少になった。

 

●外需は1月分で前月比+9.1%で2ヵ月連続の増加になった。前年同月比は+3.2%と10ヵ月ぶりの増加になった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、19年4月分では「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。5月分・6月分・7月分に続き8月分でも「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断で据え置きとなった。9月分で下方修正され、18年10月分・11月分以来の「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断になった。

 

●その後10月分では前月比が4ヵ月連続減少かつ3ヵ月移動平均が2ヵ月連続減少したことなどから下方修正され、18年12月分~19年3月分以来の「機械受注は、足踏みがみられる」という判断になった。11月分・12月分に続いて今回20年1月分でも、「機械受注は、足踏みがみられる」という判断は据え置きとなった。

 

 

●1~3月期の前期比実績は、見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの11年間でみると、見通しと比較して上振れ6回、下振れ5回であり、振れ方に癖があまりない四半期である。

 

●機械受注統計は1月調査で季節調整値の遡及改定が行われた。機械受注(除船電民需)1~3月期の見通しは前期比▲5.2%から同▲2.0%に変更された。残りの2・3月分が各々+0.1%なら達成できる見通しである。また、残りの2・3月分が各々+2.1%なら、1~3月期は前期比0.0%になる。しかし、2・3月分は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で下振れが懸念される。

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIの最近の動きをみてみよう。19年12月には、設備投資関連・現状判断DIが48.2(回答したウォッチャー14人)と19年7月50.0以来の水準に戻った。20年1月の現状判断DIが52.8(同9人)と18年12月分の55.0以来の50超となった。グラフからは設備投資関連・現状判断DIの底堅さが感じ取れるようになってきていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で20年2月の現状判断DIは34.6(同13人)へと急落した。

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは11月には51.6(同16人)と1月以来の50超に戻ったが、12月は40.3(同18人)、20年1月は35.4(同12人)、20年2月は36.1(同9人)と、足元の先行き判断DIは新型コロナウイルスの影響で弱含んでいる。

 

 

●2月調査・現状判断理由では「設備投資の話が少なくなってきている。新型コロナウイルスの影響で、一部の資材が入りにくくなっているようである。(南関東・建設業〔経営者〕)」、「客先の業界全体で新型コロナウイルスにより設備投資を見送る様子見が続いているため、当社の売上がほとんどない状態である。(東海・電気機械器具製造業〔経営者〕)」といった意見がある。

 

●また、2月調査・先行き判断理由では「新型コロナウイルスの影響でイベントが中止になるなど、東北地域にも影響が出ており、先行きは極めて不透明である。景気後退で民間の設備投資が手控えになることを懸念している。(東北・窯業・土石製品製造業〔役員〕)」、「特に鉄鋼、繊維関係で中国からの原材料、製品の仕入れなどが新型コロナウイルスによる影響を受けている。操業を中断したりしている企業もあり結果的に設備投資なども抑制されている。食品販売、サービス業の客も同様であり当面景気が改善されることはない。(中国・通信業〔営業担当〕)」といった新型コロナウイルスなどを懸念する意見がみられる。

 

●今回の機械受注統計の1月分では、新型コロナウイルス感染の世界的拡大という情報はまだ入っていないため、2月分以降のデータ発表を、予断を持つことなく見守る必要があろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年1月分「機械受注」データの分析』を参照)。

 

2020年3月16日

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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