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日米欧の主要中央銀行が協調する格好で新型コロナウイルスによる景気悪化懸念への対応の検討を表明したことで、2日の米国株式市場は急反発しました。新型コロナウイルスが中国以外で感染拡大が懸念される中、当局の対応が一段高まった印象です。
新型コロナウイルス対応:世界の主要中央銀行が協調して金融緩和検討を表明
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議⾧は2020年2月28日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急声明を発表し経済を下支えする姿勢を示しました。FRBに続き、日本では3月2日日本時間午前に日本銀行の黒田総裁が総裁談話として適切な金融市場調節や資産買入れを表明しました。
同じ2日には欧州中央銀行(ECB)が声明を公表し、「ECBは状況の進展と景気および中期的なインフレ、金融政策効果の波及にそれが及ぼす影響を注意深く見守っているところだ。われわれは、必要かつ潜在的リスクに見合う形で、適切で的を絞った対応策を取る用意がある(下線は著者) 」と表明しました。
どこに注目すべきか:協調緩和、パンデミック、SARS、金融政策
日米欧の主要中央銀行が協調する格好で新型コロナウイルスによる景気悪化懸念への対応の検討を表明したことで、2日の米国株式市場は急反発しました。新型コロナウイルスが中国以外で感染拡大が懸念される中、当局の対応が一段高まった印象です。
金融政策だけでなく、財政政策などによる対応への期待も急速に高まっています。なぜこの時点で深刻さが増したかを改めて確認すると、市場で新型コロナウイルスの感染拡大について、パンデミック(世界的大流行)を意識し始めたからと見られます。誤解を防ぐ意味で申し添えると、世界保健機関(WHO)は現段階はパンデミックでないとの立場です。
次に、仮にパンデミックの場合、世界経済への影響はいっそう深刻でしょう。20世紀に起きた3度のパンデミック(スペイン、アジア、香港)インフルエンザでは世界経済が深刻な打撃を受けました。なお02年から03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)はパンデミックと解釈されていません。経済への影響を考える場合、パンデミックではより深刻となるため、当局の対応がより積極的となったと見られます。
なお、経済対策には国際通貨基金(IMF)が融資を示唆したり、各国で財政政策なども検討されています。この動きの中で、金融政策は重要ですが、今回は主役とは言い難いようです。例えば、先の主要中央銀行の声明でも、ECBを例にとると、金融緩和の必要性を述べながらも、声明文の終わりの方で「適切に的を絞った対応策」と説明しています。また、ごく最近のECBメンバーの発言においても、慎重さがうかがえます(図表参照)。今回のような感染症の拡大や自然災害などでは資金繰り悪化先への(的を絞った)融資のような一見地味な対応の重要性が高いことが考えられます。幸い、当局の中で資金繰り対応への重要さが議論されており、適切な対応を期待したいところです。
次に、そもそも主役となるには金融緩和の余地が乏しいと見られることです。その点特にECBなどは利下げ余地は限定的ですが、FRBであっても余裕があるとは言えないでしょう。
現在、経済を救う要因は、もし新薬開発に時間がかかるとすれば、感染拡大の終息が最も待たれるところです。ただ、終息をいつ迎えるか誰もわからないことから、余裕に乏しい金融政策はある程度の余裕を残しながらの運営になることも想定されます。その点で、新型コロナウイルス感染拡大の終わりが不透明な中で、過剰な利下げ期待による資産価格の上昇には危うい面もないわけではない点に注意は必要とみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナウイルス感染拡大を受け、主要中銀が協調姿勢』を参照)。
(2020年3月3日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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