2月の日本株は下旬に大きく崩れた
2月の東京株式市場を振り返ると、「新型コロナショック」に揺れた、大荒れの1カ月であったと総括できる。
日経平均株価は、下げる場面があっても、21日(金)までは22,750円がサポートラインとして機能し、長期スパンで言えば高値圏を維持していた。中国で新型コロナの感染者が増え、それによって死亡した人が増えているとの報道が流れても「影響は限定的で、いずれ終息するだろう」といった楽観的な見方が支配的であった。
それは、世界経済をけん引する米国市場のファンダメンタルズが健全であり、NYダウをはじめとする米国株は堅調に推移していたことが背景にある。「日経平均株価は24,000円を超えてくる」、「株価下落する場面は絶好の買い場だ」といった証券会社のレポートなども見受けられた。
だが、下旬になって状況が一変し、3連休明けの25日(火)に株価は急落。長らくサポートラインとして機能していた22,750円を割り込み、月末の28日(金)には取引時間中に節目の21,000円をも割り込んでしまった。
新型コロナの感染者が中国のみならず、韓国、イタリア、イランで急増していると報じられたことが、大きく影響したようである。加えて、製造業やアパレルなどで、製品や部品が中国から届かず、実体経済に影響が出始めたとのニュースが流れたことも、楽観ムードを打ち消した。
日経平均株価がチャート・ポイントであった22,750円を割り込んだことで、機関投資家らが、いわゆる「投資の教科書」に沿って保有株を売り、当面の利益を確定したり、ポジションをいったん閉じたと考えられる。
そして、あまりにも急に株価が下落したことで、個人投資家を中心に見切り売り、投げ売り、さらには、ろうばい売りも出て、2月最終週の日経平均株価は続落したという解説が、適切である。
投資家の株価目線は下方向に移っている
これまでの株価下落局面では、個人投資家らが押し目買いを入れてくるケースが見られた。株価が上昇していく場面で買いそびれていた投資家が、下げてきたところで値ごろ感、割安感から買いを入れるといったものであり、株価の下支えとして一定の効果はある。
しかし、今回はそのような買いオーダーは入りにくいといった見方が多いようだ。企業の不祥事などと違って、新型コロナは連日の報道などで、多くの人が「脅威」と感じている。
投資家マインドが明るく、株価の先高期待があるときは値ごろ感から買いを入れてくる投資家が多いが、投資家マインドが大きく冷え込んでいる現状、日経平均株価に対する投資家の目線が、反発を期待しての上方向どころか、下方向に移っているとみてよいだろう。
3月の日本株は底堅さをみせる可能性がありそう
名実ともに3月相場入りとなったが、まずは新型コロナの影響が、どこまで広がるかを注視しなければならないことは、当然である。
この点では、最初に感染者が確認された中国では「増加ペースが落ち着いた」との見方が識者らから出てきており、ポジティブな材料だ。一方、世界的な広がりは続いており、とりわけ、米国における状況は留意すべきと言える。米国内で感染者が増えているとか、死亡者が出たということにでもなれば、金融マーケットへの悪影響は強まるとみられる。日経平均株価の反転の兆しは遠のくと言ってよさそうだ。
もし、新型コロナの影響が米国内では限定的となれば、3月の日本株は底堅さをみせる可能性がある。3月は大半の上場企業の決算期であり、3月末時点で株式を保有していれば、配当金や株主優待をもらえる権利を有することになる。いわゆる「権利取り(配当取り、優待取り)」の買いが入りやすい地合いであるため、2月下旬のような、株価急落のリスクは小さいとみられる。
それでも、株価が力強く上昇していくかとなれば、その可能性はかなり小さいと考えるべきである。4月になって、例年ならば新年度入りに伴う金融機関などからの投資資金が流入してくるが、今年は「様子見」に徹してくるとみられる。
3月期決算企業のほとんどが4~5月に新年度の事業計画や業績見通しを出してくるが、相当控えめなものになるであろうと、今から容易に想像できる。それらを見極めるまでは、機関投資家が大きく資金を入れてくるとは考えにくく、株価上昇は期待しがたい。
仮に3月末の「権利取り」に向けての投資行動をとる場合でも、買ってそのまま(バイ・アンド・ホールド)とするのではなく、買値から1割程度上がったら売って利益を確定するなど、より慎重な行動が求められる。当面は短期的な売買を繰り返していく手法が有効ではないだろうか。
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