ドル円は111円台を回復~今後の方向性を考える

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ドル円は111円台を回復、リスクオンにおける円売り・ドル売りの関係が崩れ、円全面安の展開に。

●ただアジア通貨などは対米ドルでまちまちの動き、新型肺炎の懸念後退を理由とした反応ではない。

●円安は日銀の追加緩和期待が背景か、110~115円のレンジ定着を試すも期待剥落に要注意。

ドル円は111円台を回復、リスクオンにおける円売り・ドル売りの関係が崩れ、円全面安の展開に

ドル円は、2月19日の東京外国為替市場で1ドル=110円台を回復し、欧州時間に入ってからも、ドル高・円安の流れが継続しました。ニューヨーク外国為替市場では、米主要株価指数がそろって上昇したことなどを背景に、ドル円は一気に111円台をつける展開となりました。その後もドル買い・円売りが続き、一時111円59銭水準までドル高・円安が進行しました。

 

これまで、リスクオフ(回避)の局面では、日本円や米ドルが買われやすく、リスクオン(選好)の局面では、日本円や米ドルが売られやすかったため、結果的にドル円の為替レートは小動きとなるケースが多くみられました。しかしながら、19日の主要通貨の動きを確認すると、日本円がほぼ全面安となる一方、米ドルは日本円ほど売られておらず、従来の連動性が途切れていることが分かります(図表1)。

ただアジア通貨などは対米ドルでまちまちの動き、新型肺炎の懸念後退を理由とした反応ではない

各通貨の動きについて、もう少し詳しくみていきます。対米ドルで上昇率が大きい通貨は、ノルウェークローネ、ロシアルーブル、カナダドルです。これらは、いわゆる原油関連通貨で、足元の原油相場の戻り基調が、対米ドルでの上昇につながっていると推測されます。しかしながら、その他の欧州通貨や、アジア・オセアニア通貨は、まちまちの動きとなっています。

 

具体的には、英ポンドや中国人民元(中国本土外で取引されるオフショア人民元)、オーストラリアドルは対米ドルで下落し、ユーロやタイバーツ、フィリピンペソは上昇しました。為替市場が、新型肺炎の感染拡大に対する懸念は後退したと判断するならば、これらの通貨はそろって対米ドルで上昇すると思われます。ただ、実際にそうなっていないことを踏まえると、昨日は感染拡大の懸念後退を理由に、相場が反応した訳ではないと考えられます。

円安は日銀の追加緩和期待が背景か、110~115円のレンジ定着を試すも期待剥落に要注意

19日の為替市場では、少なくとも「日本円を売る」ことが、焦点だったと思われます。そこで、改めて最近の日本に関する材料に目を向けると、2019年10-12月期の実質GDPや2019年12月の機械受注など、このところ市場予想を下回る弱い経済指標が相次いでおり、また、日本国内でも新型肺炎の感染者数が増加しているなど、景気の先行きに不安を抱かせるものが目立ちます。

 

したがって、19日の円全面安は、「日銀の追加緩和期待」が、いくらか背景にあった可能性が高いと考えます。ドル円は現在、下値支持線と上値抵抗線からなる「三角保ち合い(もちあい)」を形成していますが(図表2)、今週、上値抵抗線をしっかりと上抜ければ、110円~115円のレンジ定着の可能性が高まります。ただ、追加緩和期待が剥落した場合、急速な円高方向の戻りも起こり得ますので、今しばらくは警戒が必要です。

 

(注)中国人民元は中国本土外で取引されるオフショア人民元。  (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]主要通貨の対米ドル変化率 (注)中国人民元は中国本土外で取引されるオフショア人民元。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2019年4月5日から2020年2月21日の週ベース。ただし2月21日週は19日まで。下値支持線は2019年8月26日安値と2020年1月8日安値を結んだ線。上値抵抗線は2019年4月24日高値と2020年1月17日高値を結んだ線。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]ドル円の下値支持線と上値抵抗線 (注)データは2019年4月5日から2020年2月21日の週ベース。ただし2月21日週は19日まで。
   下値支持線は2019年8月26日安値と2020年1月8日安値を結んだ線。
   上値抵抗線は2019年4月24日高値と2020年1月17日高値を結んだ線。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドル円は111円台を回復~今後の方向性を考える』を参照)。

 

(2020年2月20日)

 

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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