●アップルは1-3月期の売上目標の未達を示唆、市場は改めて新型肺炎による業績下振れを懸念。
●ただ、そもそも新型肺炎は、企業の技術革新や高付加価値製品への需要には、直接影響しない。
●日本株は総じて上値の重い展開だが、相対的に高い配当利回りなどから東証リートは底堅く推移。
アップルは1-3月期の売上目標の未達を示唆、市場は改めて新型肺炎による業績下振れを懸念
米アップルは2月17日、1-3月期の売上高予想(630億~670億ドル)について、達成できない見込みと発表しました。その理由として、新型肺炎の感染拡大の影響で、「iPhone」の供給が一時的に制限されることや、中国国内での製品需要が減少していることが挙げられました。今回の発表を受け、市場では改めて、新型肺炎問題による企業業績の下振れ懸念が強まりました。
2月18日の東京株式市場では、村田製作所やTDK、アルプスアルパインなど、いわゆるアップル関連銘柄が軒並み下落しました(図表1)。このほか、半導体製造装置メーカーや工作機械メーカーにも、業績下方修正の思惑から、売りが広がりました。17日が休場だった米国株式市場では、18日のアップル株の動向が注目されましたが、前営業日比1.8%安にとどまり、大幅な下落は回避されました。
ただ、そもそも新型肺炎は、企業の技術革新や高付加価値製品への需要には、直接影響しない
なお、アップルは2月17日時点で、1-3月期の売上高について、新たな予想は示しませんでしたが、状況は変化しており、4月の決算発表時に詳細を説明すると述べました。また、中国以外の地域については、製品やサービスへの需要は期待に沿っているとし、混乱は一時的であるとの見解を示しました。市場でも、おおむね今回の影響は一時的とみる向きは多いように思われます。
ここで、一般的なケースを考えてみます。今、付加価値の高い製品を生み出す企業が、生産設備は稼働する状態のまま、何らかの理由で生産休止を余儀なくされたとします。当然、その期間の生産は落ち込み、業績にはマイナスですが、休止が終了すれば、需要に見合う分の生産は回復し、業績は持ち直します。そもそも、新型肺炎は、企業の技術革新や、高付加価値製品への需要に、直接影響するものではありません。
日本株は総じて上値の重い展開だが、相対的に高い配当利回りなどから東証リートは底堅く推移
それでも、新型肺炎の感染拡大で中国のサプライチェーン(供給網)が混乱し、中国企業や、中国に進出する海外企業の生産に、一定程度、影響が生じることは避けられない状況です。その影響が、どれだけ続き、どの程度になるか、見通しにくいため、日経平均株価は足元で上値の重い展開が続いています。ただ、こうしたなか、比較的堅調に推移しているのが、東証リート指数です(図表2)。
東証リート指数の底堅い動きの理由として、①世界的に長期金利が低位で推移する現状、3%台の配当利回りは相対的に魅力が高いこと、②中国のサプライチェーン混乱の影響を受けにくいこと、などが考えられます。この先、必ずしも同じ状況が続くとは限りませんが、新型肺炎の感染拡大への懸念が市場にくすぶる間は、リートは投資対象として検討されやすい資産の1つになる可能性が高いとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型肺炎の影響拡大…それでも「東証リート指数」が堅調な理由』を参照)。
(2020年2月19日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト