「ロスカット(損切り)」は確かに大切だが…
株式トレードを始めたばかりの方は、何回かトレードを重ねると、ロスカットの重要性に気付きます。勉強熱心な方は、テクニカル指標を基にしたロスカットの設定を学ぶことでしょう。
証券会社や有名トレーダーのブログを見ても、ほぼ確実にロスカットについての記述を見つけられます。移動平均線やトレンドライン、直近安値など、様々な設定でロスカットの解説をしています。
これらは知識としては間違っていません。何度か損失を確定するトレードを経験すると、感情に負けてロスカットをためらうことがあります。これを避けるため、数字やチャートで割り切って損失を確定させることは、有効な手段といえます。
しかし、本当にその考え方は間違っていないでしょうか。
ロスカットは損失を限定するための手段です。あいまいな感情に負けて、資産を減らさないようにするため設定するものです。しかし実際は、多くの方が「勉強のしすぎ」で、ロスカットの設定方法に従うこと、もしくは多くの手法を使うことが、目的になってしまっています。
あなたのトレードの目的は、ロスカットの設定に従うことではないはずです。あなたのやるべきことは、失っても良い金額を決めたうえでポジション量とロスカット位置を設定し、それに見合うエントリーポイントを探すことです。資産を増やすための、正しいロスカットの決め方を、忘れないように気を付けましょう。
株式投資で必ず悩む「ロスカット」と「塩漬け」
資産を増やすためのトレードでは、損失金額を決め、ポジションの量を調整し、それに見合ったエントリーポイントを探すことと伝えました。短期間で大きく儲けるプロトレーダーも、手法が異なっても、同じ考え方でトレードをしています。では、なぜ塩漬けと呼ばれる状態が発生するのでしょうか?
最も多いと思われる原因は、先ほどのようにトレードの手段と目的を間違えている場合です。ニュースやチャートの値動きで、儲かるという期待に心を奪われ、ロスカットの位置を決めないでエントリーします。こうなると、口座の含み損を眺め、後悔の念をいっぱいにして、どこかでロスカットすることになります。まれに株価が戻って損失を回避できても、同じことを繰り返せばいずれ損失を出すことになります。
次に多いと考えられるのは、エントリー前にロスカットやトレードの時間軸をしっかり決めているのに、いざとなると注文を執行できないパターンです。このパターンは、トレードルールの勉強をしっかりして、ルール通りトレードしようと、まじめにやっている方に散見されます。頭で計算していても、感情を無視しているので、いざとなると行動できないのです。
塩漬けとは、ロスカットルールを守らないで保有している、すべての株式を指すと考えましょう。短期トレードでありがちな、設定価格を割り込んでも保有を続ける、デイトレのポジションを持ちこすなど、ロスカットルールの数だけ塩漬けのパターンがあることを忘れないでください。
そして、塩漬けにしないロスカットの決め方は、自分の感情をコントロールできるようにルール設定することです。難しいテクニカルやファンダメンタル、ニュースなどを基準にロスカットをしようとしても、感情がついて行かないと行動できません。この感情が受け入れられるルールを、設定できるようになりましょう。
ATRを使ったロスカット設定のテクニック
ロスカットルールの設定は、エントリー前に感情的に受け入れられるものであるべき、ということをお伝えしました。それでもトレードをすると、自分の設定した価格にわずかに届かなかったり、逆にローソク足の髭で狩られたりすると、せっかくのルールを変えたくなります。ここでは、そのようなボラティリティや株価の不安定性を少しでも取り除ける分析手法を一つ紹介します。
その分析手法はATR(Average True Range)です。たとえば、日足チャートで移動平均線やトレンドラインを使ってロスカットを設定したとき、ちょっとはみ出た株価のせいで、損切りになったことはないでしょうか。自分の損切株価がチャートの底値になるパターンです。これは非常に悔しい損切として、記憶することになります。こんな悔しい思いを少しでも減らしたい方に、このATRはおすすめです。
計算方法の詳細はネットで調べていただくとして、ATRの意味を解説します。ATRは一定期間の株価のボラティリティを数値化した指標です。いろいろな銘柄を調べていると、一日の値幅が多種多様であることに気付くと思います。
もし値幅が大きい銘柄なら、テクニカル決めたロスカットに対して、誤差を設定したほうが妥当だと考えられます。このATRはその誤差の幅を示してくれます。自分で設定したロスカットラインに、このATR分だけ下げた株価で発注してみてください。悔しい下髭ロスカットが減って、自分のロスカット設定に自信が持てるようになるでしょう。