評価規定が「同じ」にもかかわらずブレる評価額
相続税は、相続財産の大きさに対して課される税です。その大きさとは、相続財産をどう評価するかによって決まります。とはいえ預金の1億円は、誰がどう考えてもその評価額は1億円です。評価規定(財産評価基本通達)にもそう書いてあります。
では土地の評価はどうやるのでしょうか。
むろん土地に関しても、同じ評価規定に評価方法が定められています。しかしこの評価規定を使っても、一般には1億円と評価されるであろう土地が、9000万円にも、場合によっては6000万円にも評価されることがあります。
こんなに評価額にブレが生じれば、税額ベースで軽く数百万円、場合により1000万円を優に超える違いが生じます。繰り返しますが、これは同じ評価規定に基づく評価です。脱税でも何でもありません。
「何だいそれは?」という話にもなりましょうが、それはひとえに、評価規定の不出来ぶりと利用する税理士側のそれへの理解力の不足に起因しています。もう少し具体的に言うと、評価額にこうしたブレが生じる原因は主に次の三点によります。
①評価規定の簡便さ・・・評価規定は不動産の素人が使用します。複雑なものは使い切れません。
②評価規定の拙劣さ・・・評価規定を作成した国税庁も不動産の素人です。その精度・正確性には期待できません。
③評価規定の曖昧さ・・・上記の二点から、評価の細部や微妙な部分の規定は、放置されたり、粗っぽく定められたりしています。
評価額のブレは国税庁と税理士の「知識不足」が原因!?
この三点のうち①は、評価規定の性格上やむを得ないことだと思います。しかし、②は当局の勉強不足が大いに責められるべきでしょう。何より、その不出来に起因して、土地の評価は不当なまでに高い方向へ評価されてしまっているのが現状です。
したがって、申告書の作成に際しては、不動産の実力と評価規定の知識とをフル動員して、妥当な評価額に引き下げる工夫が必要となります。
③は、評価額の引き下げを狙う人にはおいしい部分となります。つまり評価規定が認める目一杯の範囲で、評価額を引き下げるのです。
誤解のないように申し上げます。筆者は「ただ単に評価額を下げればいい」などと考えているのではありません。一番の目的は、妥当な評価額の追求です。漫然と評価規定を適用すると、少なからぬケースで相続税法が定める「時価」をかなり超える評価額になってしまいます。
それを防ぐにはこうした対応をするより他ありません。つまり②や③という状況がある以上は、無防備に評価したのではダメなのです。
そして、それらの結果が先に述べる1億円の評価額と、9000万円さらには6000万円の違い、つまりは妥当な水準へ向けての評価額の引き下げに結実するのです。