ニッチな分野は難しいからこそ価値がある
ビジネスにおいて、ニッチな分野へ参入することは難しいことです。なぜなら、その狭い分野の詳しい知識や経験を持たなければいけないからです。
だからといって諦めてしまうのは早計だといえるでしょう。逆に考えれば、その分野の参入障壁の高さは他者にとっても同じであるため、もし知識や経験を持っていれば非常に有利な戦いができるといえます。
身近な例で見ていきましょう。
雑誌には付録が付いているものがあります。定価500円ほどのとある雑誌の付録には、稀にトレーディングカードが入っているとします。このトレーディングカードはとても人気で枚数も限られている……それを知っていたうえで、実質約500円で付録を手に入れ保有していたとします。しばらくすると、トレーディングカード1枚の価格は2,000円以上にも跳ね上がり、雑誌の定価を大きく超えました。
こういったことはよくある話です。しかし、それを計画的に実行することは難しいことです。今回の場合なら、トレーディングカードがゲームにおいてどれだけ有用で価値あるものか事前に知っている必要があります。
もし、トレーディングカードの知識を持っていなければ、そもそも価格が上がっていくと予測することは不可能です。
このように参入が難しいニッチな分野だとしても、自分に知識や経験があるだけで他者より圧倒的に有利な戦いができるのです。
一見、株式投資とは関係な話のように感じるでしょうが、ニッチな分野で戦っていくことは個人投資家にとって有効なことです。なぜなら、機関投資家や他の個人投資家はその分野の本当の魅力になかなか気づけないからです。
たとえば、筆者は「業務スーパー」から投資のヒントが得たことがあります。「業務スーパーと株になにか関係があるの?」と思った人が多いでしょう。そのように疑問を持たれるということは、業務スーパー自体が株式投資においてニッチな分野であることを証明しています。
業務スーパーでは食材や調味料などが特に安く手に入り、主婦層を中心として多くの人気があることがわかります。人気があるということは、業務スーパーを運営している企業は儲かっているかもしれないと予測できます。
このように業務スーパーという見向きもされないような分野からも、投資のヒントが生まれるかもしれないのです。
もし、小売りという広いセクターで銘柄を探していたら、業務スーパーの魅力に気づく時期はやや遅くなる可能性が高いのではないでしょうか。周囲が気づかないうちに業務スーパーを運営している企業の株を仕込んでおけば、大きな利益をあげられるでしょう。
これは分野を細かく絞ったからこそ掴めたチャンスです。
ちなみに、業務スーパーを運営しているのは「神戸物産」という会社。神戸物産は業務スーパーを全国展開して主に収益をあげています。現在も店舗数と業績を伸ばし続け、株価も順調に上昇している優良な銘柄です。
もし筆者が業務スーパーというニッチな分野で銘柄探しをしていなければ、神戸物産という銘柄に出会うのは遠のいたでしょう。もしかしたら、出会うことさえなかったかもしれません。
このようにニッチな分野に注目すれば、個人投資家でも株式投資で勝てる機会を見つけられる場合が大いにあるのです。
個人投資家は戦うべき場所を見極めよう
このように、個人投資家はニッチな分野で戦うからこそ勝機が見えてくるという側面があります。だからといって、ニッチな分野を多岐にわたって勉強するのは厳しいでしょう。求められる知識の量と細かさが原因で、あまりにも時間と労力が負担になってしまいます。
そこで個人投資家は自分が好きであったり、日常的に使っていたりするものでニッチな分野を探すとよいでしょう。そうすれば比較的楽に自分の戦える場所が見つかります。
たとえば、ゲームが趣味なら、任天堂やカプコンなどのゲーム関連銘柄で戦えます。もし、スポーツが好きなら、アシックスやコナミなどのスポーツ関連銘柄を見ていても楽しいでしょう。
このように自分の得意分野で勝負することで、自分にしかできない分析ができるようになり、結果、株式市場で利益をあげるチャンスが見つかる可能性が上がるのです。
1980年代に自身がファンドマネージャーを務めたファンドの資産額を2,000万ドルから140億ドルにした伝説の投資家のピーターリンチも下記のように言っています。
『個人投資家としての強みは、ウォール街の専門家から手に入れる者ではなく、自分がすでに持っているものの中にある。すでに理解している企業や業界に投資することによってその強みを生かせば、プロをしのぐ運用成績があげることも可能だ。』(2015年 ダイヤモンド社 ピーターリンチ 『ピーターリンチの株の法則』より引用)
自分の生活から投資のヒントになりそうなものを探し、適した戦場を選択していきましょう。