米中貿易交渉第1段階、概ね予想通り…為替市場には注目を

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米中貿易交渉の第1段階の合意内容は概ね想定されていた通りであったこともあり、株式、債券、為替など各市場の動きは小幅にとどまりました。ただ、合意文章の中で、投資や市場に関連する項目を見ると、従来の決め事の繰り返しが見られる反面、為替市場などについては、今後の動向を見守る必要がある内容も見られました。

米中貿易交渉:第1段階の合意で正式に文書に署名、米中貿易戦争はとりあえず休戦

米国と中国は2020年1月15日、貿易交渉を巡る「第1段階」の合意に署名しました。この合意により、米国が中国からの輸入に課している関税の一部が取り下げられます。

 

中国の企業および政府機関による米国の技術と企業機密の窃取に対し中国側が取り締まりを強化するとしています。また、対米貿易黒字の縮小に向け、中国は今後2年間で2000億ドル(約22兆円)相当の追加購入計画が盛り込まれています。

どこに注目すべきか:第1段階、制裁関税、補助金、為替操作国

米中貿易交渉の第1段階の合意内容は概ね想定されていた通りであったこともあり、株式、債券、為替など各市場の動きは小幅にとどまりました。ただ、合意文章の中で、投資や市場に関連する項目を見ると、従来の決め事の繰り返しが見られる反面、為替市場などについては、今後の動向を見守る必要がある内容も見られました。

 

今回の第1段階の合意を受け、市場の反応が限定的であったのは、昨年12月中頃の発表(米中で食い違いはありましたが)に沿ったものであったことによります。

 

中でも、目先の注目は追加制裁関税取り下げの時期と規模でしたが、19年9月に発動した制裁関税第4弾(1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に(2月を目処に)引き下げることや、見返りに中国が米国から農産物の輸入を拡大することへの合意は、新鮮味には欠ける内容です。

 

また、金融サービスの項目を見ても、既に公表された内容が手直しされただけの面も見られます。例えば、米国の格付け会社が中国国内での格付けを認可するとしていますが、昨年、米大手格付け会社は認可を受け、活動しています。

 

一方で、中国の国有企業に対する補助金など中国の体制にかかわる問題には踏み込んだ印象が低いように思われます。このような問題を後回しにして、第1段階の合意を急いだ背景は政治的動機が強いと市場が見ていることも、小幅な反応の背景と思われます。

 

ただ、市場の関心は第1段階から第2段階へ進んで、制裁関税の削減・撤廃が実現するかにシフトしています。その場合、トランプ大統領が示唆したように、第1段階の合意内容、特に中国の農産物輸入動向が当然ながら注目されます。

 

なお、金融サービスに関連する項目では為替市場にも注目が必要と見ています。人民元は一時、政治的な緊張感高まる水準(経済的な意味は?)として1ドル=7.0人民元が警戒ラインとして意識されていました(図表参照)。人民元は管理変動為替相場制で運営され、中国人民銀行(中央銀行)が毎朝中心レート(基準値)を発表し、その日の為替は中心.レートから2%以内の変動を許容するとしています。米国は中心レートの設定などに恣意性があると判断している模様で、人民元が7.0前後で推移する局面では為替を巡り米中の緊張が高まるという経緯もありました。

日次、期間:2016年1月18日~2020年1月16日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表]中国人民元(対ドル)レートの推移 日次、期間:2016年1月18日~2020年1月16日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

米国が19年8月に中国を唐突に為替操作国に認定した背景も、恐らく為替レートの運営方法への不信感などがあったものと思われます。なお、米国は今回の合意直前となる1月13日に、中国を為替操作国から解除しました。

 

そこで今回の合意文章で為替を見ると、次の2つの点が為替操作国の解除に関連した可能性があります。一つは為替介入(フォワード取引)データの定期的な報告です。もう一つは2国間による紛争解決メカニズムを導入するとした点です。為替レートについて不満、不信があればこの条項を発動するという内容で、このメカニズムの使われ方が米国の中国に対する姿勢を判断する目安となるかもしれないからです。

 

中国の農産物輸入の動向だけでなく、為替市場(過度な人民元安)にも目を配る必要がありそうです。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米中貿易交渉の第1段階、概ね予想通り…為替市場には注目を』を参照)。

 

 

(2020年1月16日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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