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英国に利下げの可能性が浮上しています。短期金融市場を見ると、一連のMPCメンバーの発言等を受け、年初にはあまり織り込まれていなかった利下げが、足元1月もしくは3月のMPCでの利下げを5割前後織り込む展開となっています。欧州連合(EU)からの離脱に左右される英国ですが、今年も様々な話題を提供してくれそうです。

イングランド銀行:景気回復が市場予想を下回り、利下げ観測が台頭

イングランド銀行(英国中央銀行)の金融政策委員会(MPC)メンバーであるブリハ委員が2020年1月14日に(次回の)MPCで利下げ票を投じることを示唆しました。これに先立ち、10日には同じくMPCのテンレイロ委員が、景気が加速しないなら利下げを支持する可能性を示唆しています。さらに、イングランド銀行のカーニー総裁がMPC内で短期的な金融緩和の相対的な利点を巡る議論があると述べています。

 

なお、英国のMPCは、次回が1月30日、その次が3月26日に予定されています。

どこに注目すべきか:MPC、月次GDP、PMI、移民流入、平均賃金

英国に利下げの可能性が浮上しています。短期金融市場を見ると、一連のMPCメンバーの発言等を受け、年初にはあまり織り込まれていなかった利下げが、足元1月もしくは3月のMPCでの利下げを5割前後織り込む展開となっています(図表1参照)。欧州連合(EU)からの離脱に左右された英国ですが、今年も様々な話題を提供してくれそうです。

 

日次、期間:2016年1月14日~2020年1月14日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]英国ポンド(対ドル)レートと政策金利の推移 日次、期間:2016年1月14日~2020年1月14日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

利下げの可能性が台頭してきた要因を振り返ります。

 

まず、英国の景気回復が鈍いことです。例えば、月次で算出されている英国のGDP(国内総生産)は19年11月が前月比マイナス0.3%と、市場予想(0.0%)、前月(0.3%)を下回りました(図表2参照)。EU離脱を巡る不透明感により投資などが抑制されたた可能性があります。

 

月次、期間: 2015年11月~2019年11月、前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2] 英国月次GDP(国内総生産)変化率の推移 月次、期間: 2015年11月~2019年11月、前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、英国の12月の製造業並びにサービス業購買担当者景気指数(PMI)は製造業が49.3、サービス業が50.0と景気の拡大・縮小の目安となる50と同等、もしくは下回っています。他の先進国ではサービス業が堅調で、製造業が軟調というパターンが多く見られますが、EU離脱の不透明感がサービス業に、少なくとも昨年まで、影響したようです。

 

次にインフレ率上昇懸念が低いこともあげられます。英国のインフレ率上昇が懸念されていた主な背景は過去のポンド安局面の影響と、移民流入の減少です。しかし、英国の12月の消費者物価指数(CPI)は総合、コア共に前年同月比1%台となっています。既にポンドは回復傾向とも見られます(図表1参照)。

 

(雇用コストが低い)移民流入の減少が賃金上昇圧力となることも懸念されていましたが、今のところ賃金は上昇傾向ながら、物価への波及は抑えられている模様です。

 

これらの要因を背景に、英中銀が1-3月期に利下げする可能性もあると見ています。一方で、利下げを慎重にさせる要因があることにも注意が必要です。仮に利下げとなれば16年の国民投票後の混乱以来ですが、英国中銀はそれでもゼロ金利を回避しています。ゼロ金利政策への抵抗感が強いようで、そうなると利下げ余地は限られます。しかし英国経済を混乱させるEUからの無秩序な離脱のリスクが完全に払拭されたわけではありません。わずか1年しかない移行期間でEUと新たな貿易協定を結ぶのは至難のわざだからです。過去の他国とEUとの貿易協定は5年以上かかるのが通例です。移行期間延長(2年間)の申請期限は7月月初とさらに時間は限られます。今年も英国の動向に注意が必要です。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英国、利下げの可能性が浮上した「複数の要因」を探る』を参照)。

 

 

(2020年1月15日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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