布団の中で亡くなっていた──警察官「過酷すぎる労働」の内情

不正アクセスや煽り運転など、現在の日本では誰もが被害者になる可能性があります。そんな身近に潜む犯罪から身を守り、万一のときのために知っておきたい情報を、警察OBが伝授します。※本連載は『新装改訂版 警察は本当に「動いてくれない」のか』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、改編したものです。

現場で働く警察官の価値観は、一言で言えば体育会系

家族や友人、知人などに警察関係者がいなければ、生身の警察官を身近に感じる機会はあまりないかもしれません。そもそも、警察官とはどのような考えや価値観を持った人たちなのでしょうか。

 

まず、警察官という職業を志すだけに、一般の人に比べて正義を大切に思う気持ちが強いことは言うまでもありません。また、現場で働く警察官の価値観は、一言で言えば体育会系です。

 

たとえば、警察官の卵はまず警察学校に入りますが、まずはその集団行動に驚きます。何をするのも一緒で、食事や入浴も常に集団で動くことが当たり前です。もし一人でも部屋が汚かったり、時間に遅れるようなことがあれば、すべて連帯責任として全員外出禁止を命じられてしまうのです。

 

ちなみに、警察学校では警部補以上の階級をもつ者を「教官」と呼び、巡査部長以下の階級の者は「助教」と呼ばれています。教官と助教の二人一組でクラスを担当して教育を行います。

 

警察の仕事は気力・体力が命です。そこで、警察官にふさわしい適切な体型が自然と形作られるように、やせ過ぎている者には「もう少し筋肉をつけろ」とあえて大きめの服が、逆に太り過ぎている者に対しては「贅肉を落とせ」と小さめの服が用意されているわけです(私が警察学校に入った頃の話であり、今はそのようなことはないようです)。

 

また、生徒が風邪をひいてしまった場合、一般常識からすれば「学校を休め」となるはずです。しかし、警察の常識は違います。周囲からは「精神がたるんでいたから病気になるんだ!」と気合いを入れられます。

 

いざという時に病気で休んでいては国民を守ることができない、体をしっかりと鍛えなければ…このような精神修養を経て一人前の警察官になっていくわけです。

熱心でまじめな警察官ほど疲労困憊し、悩み苦しむ

警察官がどのような日常を過ごしているのかについても、一般にはあまり伝わっていないでしょう。

 

まず、現場の警察官のほとんどは殺人的な量の仕事に日々追われています。事件があれば捜査をしなければならないのはもちろん、そのために膨大な書類を作成しなければなりません。殺人事件のような重大犯罪の場合には、それこそ積み上げたら天井に届くほどの量の書類を作らなければなりません。知らない人が見れば、おそらく「こんなに!」と仰天するのではないでしょうか。

 

企業と同様に、国民の安全・安心を守るために検挙件数などの目標も決められているので、それを必死にこなしていかなければなりません。

 

「国民を守るために目標を達成しなければならない!」という強い責任感とプレッシャーのために、現場で働く警察官たちの中には、うつ病など心の病に罹る者が少なくありません。最悪な場合には、耐えきれなくなり自ら命を絶つ例もあります。最近、取り沙汰されることが多い警察官の不祥事も、おそらくその大半はストレスを晴らそうと、半ば自暴自棄な状態に陥って行われているものがほとんどでしょう。

 

とりわけ、警察官の仕事に熱心なまじめな人ほど疲労困憊しており、悩み苦しんでいる傾向がみられます。現場の警察官が満足に心身の健康を保てないような状況では、警察が犯罪に立ち向かうことが難しくなるでしょう。

 

近時、上場企業などを中心に社員の心身のケアに配慮した業務改革が進められています。警察でも同様に、今の時代に適合した形で現場で働く警察官の業務のスリム化・効率化が求められているのです。

 

過酷を極める警察の現場
過酷を極める警察の現場

365日休みなし、低賃金…さらに大変な警察署長

さらに、エリートであるはずの警察署長も現場の警察官と同様に、過酷な日常を強いられています。

 

まず、警察署長の居宅である署長官舎はほとんどの場合警察署のすぐ近くにあります。何か大きな事件があれば、昼夜関係なくすぐに署に駆けつけなければならないためです。また、事件に関する書類はすべて目を通さなければなりません。そのため、一日中、署長室に閉じこもりきりで、資料を読み続けなければならないこともあります。

 

また、深夜にでも突然たたき起こされるのが当たり前の毎日では、家族が同居していればその生活も悪影響を受けることになります。それを避けるため、署長のほとんどは、家族を実家に残し、署長官舎で一人暮らしの生活を送っています。

 

365日休みがない、家族とは離れ離れ、このような厳しい労働環境で、過労死する警察署長も中にはいます。実際、埼玉県のある警察署では、署長が出勤してこないので、部下が官舎に様子を見にいくと布団の中で亡くなっていた─―ということもありました。

 

そのうえ、署長の地位にあるからといって、必ずしも経済的に恵まれているとは限りません。それどころか、給料が部下よりも低くなることも…。

 

一般に、署長には、警視あるいは警視正がなります。警視までは地方公務員ですが、警視正からは国家公務員です。都道府県の中には、国家公務員よりも地方公務員のほうが給料水準が高いところがあります。そのため、警視正で署長になっている場合には、結果的に、警視で副署長になっている者よりも収入が低くなる可能性があるのです。

 

ドラマにおける警察署長のイメージは必ずしも好意的なものではありません。人気ドラマ『踊る大捜査線』では、〝スリーアミーゴス〟のニックネームのお気楽な警察署長たちが登場します。また、不正な手段で私腹を肥やしている〝悪徳署長〟が描かれることもあります。

 

しかし、今述べたように、現実の警察署長は、過酷な生活を強いられており、決して恵まれた経済的待遇を得ているわけでもありません。警察署長の多くは警察ドラマを嫌っていますが、あまりにも事実とかけ離れた描かれ方に「ふざけるな!」という思いを抑えられないからなのでしょう。

 

ただし、事実もあります。たとえばカップラーメンにまつわる話ですと、警察官は実際にカップラーメンをよく食します。

 

また、一つ独特の食べ方があり、カップラーメンが出来上がっても、蓋を全部剥がさずに食べるのです。こうすることにより、いつ出動指令が来て出動しても蓋を閉めておけば戻ってきた時にまた食べることができるからです(戻った時には麺はスープを全部吸いこんでふやけていますが…)。

 

 

佐々木 保博

株式会社SPI 会長

株式会社SPI 会長

危機管理コンサルタント。昭和55年から埼玉県警察官として28年間勤務したのち、円満退職。その後、国会議員の公設第一秘書を経て、日本の慢性的な危機管理意識の欠如を痛感。警察では立ち入れないところの「正義」を実現するため「民間警察」として困った人のあらゆる悩みに解決策を提供する、株式会社セーフティ・プロを設立し、代表取締役に就任。また、平成27年には業務領域の拡大を図り、株式会社SPIを設立。会長職に就任。

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著者紹介

連載ストーカー、不正アクセス、企業トラブル…誰もが被害者になりうる恐怖

新装改訂版 警察は本当に「動いてくれない」のか

新装改訂版 警察は本当に「動いてくれない」のか

佐々木 保博

幻冬舎メディアコンサルティング

ロングセラー書籍、待望の新装改訂版! ストーカー被害、いじめ自殺、家族の失踪・・・犯罪の多様化で、被害者になるリスクが激増しています。そして、困ったときに一般の人が助けを請うことになるのが「警察」。 しかし、…

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