先行CI前月差▲0.7と4カ月連続、一致CI前月差▲0.2で2カ月連続下降
致CIの3カ月後方移動平均の前月差▲1.20で2カ月連続の下降
11月分の機械的な基調判断は「悪化を示している」で据え置き
●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.7ポイント下降した。4カ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な9系列で、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の3系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差マイナス寄与になった。
●11月分の一致CIは前月差▲0.2ポイントで、2カ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な7系列で、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の4系列が前月差マイナス寄与になった。引き続き、消費税増税引上げの影響や台風などの後遺症がマイナスに働いたとみられる。
●11月分の一致CIの指数水準は2015年=100として95.1となった。なお、直近のピークは17年12月分の105.2で、足元の水準はそれに比べると10.1ポイント低い。18年で最も高かった4月分の104.1に比べると9.0ポイント低い水準である。一方、13年2月の93.8以来6年9カ月ぶりの低水準となった。
●一致CIの3カ月後方移動平均は前月差▲1.20ポイントと、2カ月連続の下降になった。7カ月後方移動平均は前月差▲0.90ポイント下降し、13カ月連続の下降になった。
●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年3月分では景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」に下方修正され、4月分でも「悪化」だったが、5月分で「景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す」意味を持つ「下げ止まり」に上方修正され、6月分・7月分も同じ判断だった。「下げ止まり」から「悪化」に下方修正されるには、「3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスであること」が条件である。5月分の一致CIの指数水準は、5月1日・2日の祝日に工場を稼働させた企業が結構あったことなどもあり高水準、このため8月分では、3カ月以上連続して一致CIの3カ月後方移動平均が下降という条件は満たしやすかった。また8月の前月差の符号がマイナスになったため、8月分の基調判断は再び「悪化」に転じた。
●9月分では3カ月後方移動平均が4カ月ぶりに上昇に転じ、かつ当月の前月差の符号がプラスとなったものの、3カ月後方移動平均の前月差が1標準偏差分の0.90にとどかないため、「下げ止まり」には戻れず、基調判断は「悪化」継続になった。「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの3カ月後方移動平均の前月差がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累計)が振幅目安の+0.90以上になることが必要だ。
●10月分では3カ月後方移動平均が2カ月ぶりに下降に転じ、かつ当月の前月差の符号がマイナスとなったため、基調判断は「悪化」継続になった。11月分では当月の前月差、3カ月後方移動平均の前月差ともマイナスとなったため、基調判断は「悪化」継続になった。
●なお、11月分までが不変で、12月分以降一致CIが毎月前月差+0.6ずつ上昇すると、20年2月分で3カ月後方移動平均の2カ月累計が前月差+0.93と1標準偏差分の0.90上回る。かつ当月の前月差の符号がプラスであるため、基調判断は「下げ止まり」に転じることになる。
●11月分の先行DIは44.4%と7カ月連続して景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の4系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になった。
●一方、11月分の一致DIは2カ月連続で0.0%と景気判断の分岐点の50%を2カ月連続で下回った。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列全てがマイナス符号となった。
●1月23日発表予定の11月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は1月16日である。また在庫率関連データが1月20日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●11月分景気動向指数・改訂値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。11月分速報値は94.1と10月分の96.3から低下した。1月22日発表の確報値が速報値と同じだとすると、前月差寄与度は▲0.43程度で下方修正要因になる。また、DIではマイナス符号として加わることになろう。他の系列の符号が変わらなければ、一致DIは0.0%で速報値と変わらないだろう。生産指数関連データなどが1月20日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●12月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。4系列とも前月差プラス寄与になることが判明している。
●また、12月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の3系列がプラス符号に、中小企業売上げ見通しDI1系列がマイナス符号になることが判明している。12月分速報値段階の先行DIは33.3%以上88.9%以下になることが確定している。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年11月分景気動向指数(速報値)について』を参照)。
2020年1月14日
宅森 昭吉
株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト