死の間際の入籍に物言い…相続トラブルで葬儀がめちゃくちゃ

年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、実父の再婚が招いた相続トラブルについて、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

30年連れ添ったパートナーが、病床でプロポーズ

今回ご紹介するAさんは、50歳を過ぎたころに離婚。長男と長女、2人の子どもが成人を迎えたタイミングでした。結婚以来、性格の不一致で夫婦関係は冷え切っていましたが、子どもが大人になるまでは……と2人とも我慢に我慢を重ねた結果の離婚だったそうです。

 

妻と離婚してからは、子どもと会う機会もぐっと少なくなりました。

 

「子どもたちはみな、前妻の味方でしたから。前妻のほうが圧倒的に子どもたちと一緒にいましたし、私のことを色々と悪いように言っていたみたいですよ、前妻は!」とAさんは振り返ります。子どもたちとも疎遠になってしまったのは寂しかったものの、やっと離婚できた、という解放感からの喜びのほうが大きかったそうです。

 

またAさんは若い時に起業し、それなりに成功を収めていました。大きな悩みがなくなったからでしょうか、離婚後はさらに精力的に仕事をこなしました。そんなときに仕事を通じて出会ったのが、B子さんでした。

 

B子さんとの出会いは経営者が集う懇親会です。たまたま席が隣になっただけでしたが、話が弾み、意気投合。その後、お互いバツ1同士であることがわかると、似た者同士だからか、さらに親密になり、自然とパートナーの関係になりました。

 

B子さんも子ども(男)が1人いましたが、子どもが大学生になったのを機に離婚。「会社を経営しながらの子育ては大変でしたよ。家に帰れば、息子が2人いるような状態でしたから。手のかかる夫でしたよ」と、笑いながら振り返るB子さん。仕事をする以外、家事も子育ても何もしない前夫に、愛想を尽かしての離婚だったそうです。

 

AさんとB子さんがパートナーとなってから20年以上の歳月が流れました。2人とも70歳を前に経営していた会社を譲渡。2人で楽しい余生を過ごそうと考えた結果でした。

 

それから10年ほど経ち、2人とも80歳を超えたある日、Aさんが病に倒れました。そして病床のAさんは1通の紙をB子さんに渡しました。それは婚姻届けでした。

 

「君ときちんと夫婦になってから死にたい」

 

Aさんは、そうB子さんにプロポーズをしたのです。B子さんも承諾し、その日のうちに婚姻届けを提出しました。それから1ヵ月ほど経ったころ、Aさんは天へと旅立っていきました。

 

「一度結婚に失敗した同士でしたから、カタチにはこだわらない、とお互い言っていたんですよね。でも本当は言い出せなかったんですよね、結婚しましょうと。だからAさんからの申し出は、素直にうれしかったです」とB子さんは、Aさんからのプロポーズを振り返っていました。

 

しかし、ここからは素敵なラブストーリーではなく、争族の話。問題は、Aさんの死後すぐに訪れました……。

前妻の子どもたちの罵声で葬儀が台無し

それは、Aさんの葬儀で起こりました。B子さんに話しかける人がいました。Aさんの前妻の2人の子どもです。すごい剣幕で怒っていました。

 

長男「ちょっといいですか? 父といつ結婚をされたんですか?」

 

B子「Aさんが亡くなる1ヵ月ほど前のことです」

 

長女「なぜ、そんな大切なこと、黙っていたんですか!」

 

B子「Aさんは、もう子どもたちとは会っていないと言っていましたし、結婚することを子どもたちに言う必要はないと、Aさんは言っていましたから」

 

長男「そんなの関係ないんですよ。私たちにとっては、どんなに嫌いな人でも、父であることは変わらないんです。そこらへん、わかりますよね?」

 

B子「それはもちろんです」

 

長女「だいたい、死ぬ間際に結婚なんて。80歳を超えた老人が何をやっているのよ」

 

B子「……(長女のひと言に、B子さんはかなり腹を立てている様子)」

 

長男「私たちは、父が意識混濁しているなか、あなたが無理やり結婚を迫ったと考えています」

 

B子「なぜ、そんなことを?」

 

長男「簡単なことだ! 入籍すれば、父の遺産の半分はあなたのものだ」

 

長女「そうよ、死ぬ間際に入籍なんて、どう考えても財産目的でしょ!」

 

B子「そんなこと、まったく考えていないわ」

 

長女「嘘よ! これは結婚詐欺よ!」

 

葬儀の最中にも関わらず、大きな声でB子さんを罵倒するAさんの2人の子ども。結局、式の途中で2人は帰っていきました。

 

「なんなんでしょうね、あの子たちは。葬儀の場でさんざん怒鳴り散らして……」とB子さん。本当は遺産放棄をして、Aさんの遺産はすべてAさんの子どもたちに相続してもらうつもりでいたそうです。しかし大切な人の葬儀を台無しにされた恨み。きちんと、もらえるものはもらう、という姿勢で遺産分割協議に臨んだそうです。

 

葬儀の場で…無礼は許しません!
葬儀の場で…無礼は許しません!

配偶者は「1億6000万円」相続税額が軽減されるが…

今回の事例は事実婚を続けてきた夫婦でしたが、最終的に入籍したので、B子さんは法定相続人になれました。配偶者は、法定相続分と1億6000万円のいずれか多い金額まで、相続税が非課税となります。少しわかりにくいので、たとえば、財産を2億円持っている人がいて、この人が亡くなってしまったときに、妻はいくらまで相続税が非課税になるか考えていきましょう。

 

妻の法定相続分は全財産の2分の1です。つまり半分です。夫は2億円の財産を持っていたので、法定相続分は1億円ということになります。この1億円と1億6000万円を比べてみましょう。どちらが多い金額かというと、1億6000万円ですよね。 このことから、2億円の財産を持っている人が亡くなってしまった場合には、妻は1億6000万円まで相続しても相続税がかからないということになります。

 

では続けて、4億円の財産を持っている人の事例で考えてみましょう。4億円持っている人の奥さんは、いくらまで相続しても相続税が課税されないでしょうか? まず、4億円の法定相続分は2億円です。この2億円と1億6000万円を比べてみましょう。どちらが多い金額になりますか? 2億円ですよね。このことから、4億円の財産を持っていた人が亡くなってしまった場合には、奥さんは2億円まで相続しても相続税が課税されない、ということになります。

 

「夫婦の間では最低でも1億6000万円まで相続税がかからないなら、最大限それを使った方がお得に決まっているじゃない」と思う人も多いでしょう。しかし、ここが相続税の最大の落し穴といって過言ではありません。配偶者の税額軽減があるからといって、必要以上の金額を配偶者に相続させてしまうと、結果として損をしてしまう可能性が非常に高くなるのです。

 

それは一次相続で配偶者がたくさん相続すれば、確かにその時の相続税は少なくなりますが、問題は二次相続の相続税です。一次相続で配偶者が多くの財産を相続すると、次に、その配偶者が亡くなったときの相続税が高くなります。

 

当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、実は、多くの人が次のことを知らないのです。一次相続と二次相続とでは、仮に、同じ金額の財産を相続する場合でも、圧倒的に二次相続のときのほうが、相続税は割高になります。一次相続と二次相続の相続税を合計すると、一緒になるわけではないのです。

 

お得そうに見える配偶者の税額軽減ですが、夫婦でどれくらい相続させあうかは慎重に考えないといけません。筆者は、「一次相続では、奥様が今後これだけあれば安心して暮らしていける、と思える金額を相続してください」とお伝えしています。

 

 

【動画/筆者が「相続税の配偶者控除」について分かりやすく解説】

 

橘慶太

円満相続税理士法人

 

円満相続税理士法人 代表 税理士

大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社する。
勤務税理士時代は相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算400件以上。また、銀行や証券会社を中心に、年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。
2017年1月に独立開業し、現在6名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は4万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。

円満相続税理士法人:https://osd-souzoku.jp/

著者紹介

連載円満相続税理士が楽しく解説!「相続の基礎知識」

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