「機関投資家」が株式市場に与える影響力を知る
個人投資家が市場で勝ち続けていくために、知っておかなければいけない存在が「機関投資家」です。国内外の銀行・証券会社・保険会社など、企業単位で取引を行う投資家のことを指します。
機関投資家は莫大な資金力によって、市場に大きな影響をもたらしています。それがわかるのが、東京証券取引所が毎週発表している「投資部門別売買状況」です。投資部門別売買状況では、法人や個人、海外投資家など投資主体別の売買状況がわかります。
たとえば、2018年の東証一部における売買代金と比率を見てみましょう[図表1]。
最も大きな売買金額である投資主体は、「海外投資家」(74.1%)であることがわかりますね。売買金額が大きいほど市場にインパクトを与えますので、日本の株式市場は海外投資家による影響が最も大きいといえます。そして海外投資家の売買のほとんどが、法人によるものです。つまり、機関投資家の市場における影響力を測るならば、海外投資家の法人による売買も含める必要があります。
国内の法人と証券会社も合算すると、売買代金の82.9%を機関投資家が占めています。株式市場で、機関投資家の一時的な売買によって株価が急変動するのも、当然といえるでしょう。
この事実から、日本の株式市場において「個人投資家」がいかに小さな存在かがわかります。
資金力があまりない個人投資家は、否が応でも振り回されてしまいます。弱小な個人投資家が株式投資で勝ち続けるためには、機関投資家のやり方について詳しく知っておく必要があるといえるでしょう。
「個人投資家」が「機関投資家」に勝てない理由
「機関投資家が市場を大きく動かす存在だとわかったなら、より高度な分析を用いて勝つしかないのでは」と考えるかもしれません。しかし、そのような思考は今すぐ捨ててほしいと思います。
なぜなら、個人投資家が機関投資家に立ち向かっていくのは、あまりに無謀すぎるからです。機関投資家は市場で利益をあげるために、綿密な分析と調査を重ねています。それは個人で到底できるものではありません。
また、個人投資家は市場を動かす出来事が起きた際、情報を手に入れるスピードが遅く、常に不利な状況に置かれています。
たとえば、2019年10月10日に吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞したことをきっかけに、所属企業である旭化成の株価は取引開始直後に前日比3.9%まで急騰しました。出来高は普段の4倍以上となり、なんと1,918万株にもなりました。
日々、あらかじめ化学分野の調査を重ねていれば、吉野氏がノーベル化学賞を取る可能性があることは、事前に予想できたかもしれません。しかし、一般の個人投資家でその予想までたどり着く人は、ほとんどいないでしょう。
むしろ、ニュースが報道されたことをきっかけに、慌てて旭化成株を購入した個人投資家の方もいたかもしれません。そして、タイミングが一足遅かったため、損失を出してしまったのではないでしょうか。
というのも、10月10日の旭化成株は始値こそ高かったですが、その後は利益確定売りが続いて前日比1.8%高に落ち着きました。つまり、ニュース報道後に慌てて購入した個人投資家は高値掴みとなってしまい、結果的に2.1%の損失を抱える事態になってしまったのです。
このように、個人投資家はどうしても資金力だけでなく、調査力や分析力などで機関投資家に劣ります。機関投資家に真っ向勝負を仕掛けても、個人投資家に勝てる見込みはまずないと考えましょう。
個人投資家は日本の株式市場で、どう戦うべきか?
それでは、個人投資家は株式投資において、なす術もなく負けるしかないのでしょうか。いえ、そうではありません。
そもそも機関投資家に勝とうとしていること自体が間違いです。機関投資家よりいい成績をあげようとせず、機関投資家の戦略を理解して、その流れに乗ることが大切なのです。個人投資家による投資判断よりも、緻密な調査と分析に基づいた機関投資家の判断のほうが信頼できるからです。
個人投資家はどうしても「稼ぐ」ことを目的としてしまいがちです。そのため、根拠もないのに、小手先のテクニックに頼ってしまい、最悪の場合、悪質な投資詐欺の被害にあってしまう個人投資家も珍しくありません。小手先のテクニックは無意味に等しく、むしろ負けにつながることが多いでしょう。
個人投資家は弱小であることを認めたうえで、機関投資家の動向を掴めるよう学んでいくことが重要です。そして、機関投資家についていくことが、市場で勝ち残る個人投資家の戦い方といえるでしょう。