本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

11月分生産指数前月比▲0.9%と2カ月連続減少。経産省基調判断「弱含み」に据え置き

 

10~12月期前期比減少は避けられないが、1~3月期の前期比は増加に転じそうな局面に

 

11月分景気動向指数・一致CI前月差は僅かに下降か、基調判断は「悪化」継続の見込み

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・11時月分速報値・前月比は▲0.9%と2カ月連続の減少になった。15年を100とした季節調整値の水準は97.7と、13年3月分・4月分(97.7)以来の低い指数水準になった。また、前年同月比は▲8.1%と2カ月連続の減少になった。

 

●10月分鉱工業生産指数では、自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、電子部品・デバイス工業の3業種が前月比増加。生産用機械工業、電気・情報通信機械工業、その他工業等の12業種が前月比減少となった。

 

●生産用機械工業の前月比は▲8.9%で、12業種中で減少率が一番大きかった。台風19号の影響で部品供給が滞ったショベル系掘削機械や海外向け生産が減少した半導体生産装置などの影響が大きかった。一方、自動車工業の前月比は+4.5%の増加になった。台風による減産の影響が薄れたようだ。

 

●経済産業省は基調判断を8月分・9月分の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正したが、今回11月分でも判断を据え置いた。

 

●鉱工業生産指数の11月分製造工業予測指数・前月比は▲1.5%の減少であった。また、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値である先行き試算値でみると、11月分の前月比は最頻値で▲1.8%の減少の見込みだった。90%の確率に収まる範囲は▲2.7%~▲0.8%になっていた。▲0.9%という実績は上限に近い伸び率である。

 

●11月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.7%で2カ月連続の減少となった。前年同月比は▲7.7%で2カ月連続の減少となった。

 

●11月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.1%の減少になった。2カ月ぶりの減少である。前年同月比は+1.5%と13カ月連続の増加となった。

 

●11月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+1.8%で2カ月連続の前月比上昇となった。11月分の指数水準は115.4で2015年基準の最高水準である。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年4~6月期は出荷の前年同期比が▲2.7%、在庫が同+3.0%、19年7~9月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.7%であった。19年10~11月は出荷の前年同月比が▲7.5%、在庫が同+1.5%と、依然として45度線を上回っていて「在庫調整局面」の状態にある。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月分は同+2.8%の増加、1月分は前月比+2.5%の増加の見込みである。そのうち、生産用機械工業は12月分は同+11.6%の増加、1月分は前月比+5.8%の増加の見込みである。台風の悪影響から脱しそうな様子が窺われる。但し、過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.4%の増加にとどまる見込みになる。90%の確率に収まる範囲は▲0.6%~+1.4%になっている。

 

●製造工業予測指数の調査時点は12月10日なので、米中貿易協議進展に対する期待の高まりで日経平均株価が前日比598円高となった12月13日の影響は含まれていない。このため、12月分、1月分が上振れる可能性もあると思われる。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、12月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.4%)、1月分を前月比(+2.5%:製造工業予測指数)、2・3月分の前月比を横ばいで延長すると、10~12月期の前期比は▲4.3%の減少、1~3月期の前期比は+2.5%の増加になる。

 

●また、12月分は製造工業予測指数前月比(+2.8%)、1月分を前月比(+2.5%:製造工業予測指数)、2・3月分の前月比を横ばいで延長すると、10~12月期の前期比は▲3.5%の減少、1~3月期の前期比は+4.0%の増加になる。両者の試算値から見て、10~12月期の前期比減少は避けられないものの、生産の持ち直し基調が年末頃からしっかり出てきて、1~3月期の前期比は増加に転じそうな局面と言えよう。

 

(11月分景気動向指数、一致CIは前月差僅かな下降に、基調判断は「悪化」継続)

 

●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.7程度と下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の3系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●11月分の一致CIは前月差▲0.1程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列では、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の4系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分に続き、11月分も「悪化」継続になると予測する。12月分も「悪化」が予想され、変化があるとすれば、早くても1月分か2月分になると思われる。

 

●11月分の先行DIは44.4%程度と7カ月連続して景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9列中、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の4系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になると予測した。

 

●11月分の一致DIは0.0%程度と景気判断の分岐点の50%を2カ月連続で下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列全てがマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年11月分 鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

2019年12月27日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

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