サブリース事業者が解約に応じない理由
サブリース事業に関しては、そのトラブルばかりが話題となっていますが、サブリース自体は有効なスキームです。サブリースの事業者は、転借人(入居者)の退去リスクや募集費用を考慮しながらオーナーに対し賃料を保証することになるので、その額は通常賃料の80~85%とされるのが一般的な設定となっています。100%稼働であれば、事業者は安定的に15~20%の転貸益を収受できるのです。
ここで、サブリース事業者である法人に対し、一般消費者であるオーナーは保護されるべき立場にあるはずなのですが、借地借家法にのっとると、法人が借主の立場にあることで保護されてしまうところに「ねじれ」が生じてしまうのです。サブリースのトラブルは賃料減額交渉にある場合が多いのですが、これはサブリースの事業者が、賃料保証をうたって賃貸借契約を締結したにもかかわらず、その後、経済環境の変化を理由にその保証額を下げることができてしまうことにあるのです(一律に減額交渉が認められるというものではなく、固定資産税額の増減や支払い金利水準等いくつかの事情を汲むことが求められる場合もあります)。
賃貸アパートの企画開発では、その売主や仲介を行う不動産会社が、同時にサブリース事業も行う場合が大半です。つまりサブリース保証賃料を高めに設定しさえすれば投資利回りを高く表現できるため、当該不動産も割高の価格で販売することが可能になります。この組み立てで販売された一棟物件は、保証賃料をオーナーに対して支払えているうちはいいのですが、ひとたび保証賃料が滞ってしまうと、カラクリが露呈することになるのです。
ほかにも、「サブリース事業者が解約に応じてくれない」というトラブルがあります。不動産のオーナーはサブリース事業者に転貸することで、マーケット価格より低いものの、安定的な賃料を得るというメリットを享受しています。このオーナーが物件を売却したくなったとき、半年前に予告すればサブリース契約を解除できるという契約上の文言がはいっているのが通常です。
ところが、いざ不動産を売却して、サブリースを解除しようとすると、賃借人の立場であるサブリース事業者はこれを認めないとするのです。そうなるとオーナーは期待した売却が頓挫してしまいます。これも賃借人を保護する借地借家法の規定で、法人のほうが守られてしまうため、現行やむを得なくなっています。
同法では、たとえ賃貸借契約書に貸主から解約できると書いてあっても、借主の落ち度がなければ、貸主からの契約解除は基本的にはできなくなっているからです。やはり借家人を保護するための規定であり、サブリース事業者は転貸益を継続的に得られる案件を手放したくないので、賃貸借契約における借主保護の立場を盾に解約に応じないのです。
本来サブリースは健全で収益性のある事業だが…
総合すると、不動産の売買価格に合理性があって、保証賃料の水準が適切に設定されている本来のスキームであれば、サブリースは健全で収益性のある事業と言えます。もちろん、消費者を置き去りにするような法解釈は慎まなければなりません。
「レントクリップ」は、将来に向けて、借り上げ保証をするものであり、借り上げた際には、対象物件を第三者に転貸します。そのためサブリースの予約契約と言い換えることもできます。不確定な未来において賃料を保証することになりますので、前述のトラブルが発生しないように、あらかじめ賃料の見直し規定について定めることにしています。具体的には、客観性が高い固定資産税評価額を拠りどころにするのが合理的と考えています。その他、賃料増減の変動幅をあらかじめ定めておくことも検討します。
また、「レントクリップ」では保証の対象物件をリノベーションマンションに限定することにしています。リノベーション物件であることは(所有者が退去する際の)原状回復についてその負担割合を明確にしやすく、原状回復費用そのものの圧縮にも有効です。またサブリース事業者としてリノベーション物件は転貸益を生みやすい下地があるのです。
リノベーションとはフルリフォームとは異なり、従前の住まいを超えた価値を具備した物件のことを言います。システムキッチンやユニットバスなど最新の住宅設備が設置されていることが多いリノベーション物件ですが、最近では、可変性の高い間取り(家族構成の変化にあわせて家具や間仕切りで間取り変更が可能)や、自然素材の内装材(吸湿性の高い壁材、温もりのあるフローリング)など意趣をこらした物件も増えています。
古民家風、山小屋ロッジ風、ベイサイドの倉庫風など、内装のテイストを工夫したものもあります。またIoTホームとして、AIスピーカーが装備された物件もでてきています。これらリノベーションは賃料アップと相性がよく、マーケット賃料より強く貸せる分、転貸益に反映すると考えています。
競争力のある賃貸物件であれば、オーナーは「レントクリップ」を適用せず、みずから賃貸することも十分に考えられます。その場合は転貸益期待を失うことになりますが、一転、賃貸管理会社としてリーシング報酬や管理手数料を得ていくことにシフトチェンジします。それら物件のセカンダリーマーケット、再販売の際にも優先的にアクションをとることも可能になっていくのです。