前回は、「銘柄乗り換え株式投資法」のメリットなどを説明しました。今回は、実際に「銘柄乗り換え株式投資法」によって利益を得た成功例を見ていきます。

懸念材料がある銘柄から乗り換え、投資効率を上げる

銘柄の乗り換えを行ったことで、その後の運用状況が大きく変わったケースを紹介しましょう。筆者の運営する投資顧問サービスでは「乗り換え」の提案は投資を行う上での重要なポイントなので、ケーススタディはいくつも挙げることが可能です。

 

ここでは、ソフトバンクグループ(9984)からミクシィ(2121)への乗り換えを取り上げます。

 

どちらも、よく知られている銘柄ですが、念のために説明すると、ソフトバンクグループは、ソフトバンクモバイルなどの通信サービスを手掛ける東証1部の銘柄です。一方のミクシィはかつてSNSの「mixi」で人気を博し、一時は経営危機も言われましたが、2013年9月にリリースしたスマホ向けゲーム「モンスターストライク」のヒットで再び浮上しました。こちらは東証マザーズ銘柄です。

 

ソフトバンクは、2014年2月28日に買い推奨をしました。買い推奨株価は7850円、株数は100株です。

 

注目したポイントは、当時は出資している中国のネット取引最大手アリババ・グループの上場を控えていたこと。上場すれば莫大な含み益が得られるためです。また、傘下の米国携帯電話会社を通じて、同じく米国の別の携帯電話会社を買収する話も進んでいて、こちらも成功すれば大きな利益につながることが期待されました。

 

しかし、それから約2か月半後、ミクシィへの乗り換えを実行しました。なぜ、乗り換えを検討、実行するに至ったのでしょうか。

 

なお、ソフトバンク100株の売却資金だけではミクシィ(当時の200株)を購入することはできません。ここではソフトバンクの売却資金+もともと現金としてあった資金でミクシィに乗り換えています。

 

<乗り換えを実行した日 2014年5月15日>

 

●売却した銘柄と売り推奨株価ソフトバンクグループ7117円(100株)(5月15日の高値7216円、安値7110円)

 

●買い推奨した銘柄と買い推奨株価ミクシィ1310円(1000株)(5月15日の高値1370円、安値1292円)※2014年6月26日に1:5の分割をしているため、分割調整後の株価、株数を表示しています(当時は6550円で200株)

 

<乗り換えた理由>

 

●ソフトバンクグループの状況の変化アリババの上場への期待は、4〜5月になるとすでに株価に織り込まれてしまったこと。さらに、米国の携帯電話会社の買収話も米国の規制当局が難色を示しているとして雲行きが怪しくなってきたこと。

 

●ミクシィの好調5月14日に決算発表があり、業績が大幅拡大したこと。「モンスターストライク」の大ヒットで、2015年3月期も大幅な増収増益を見込んでいること。モンスターストライクについては、アジア圏のほか世界展開も視野に入れていて、さらなる飛躍が期待できること。

 

☆藤村コメント・・・6月に1:5の株式分割を控えていて、分割までの間にも株価上昇が予想されました。一方のソフトバンクは懸念材料があり、明らかにミクシィに乗り換えたほうが、投資の効率が上がると判断しました。

 

<その後の展開>

 

ミクシィは2014年8月8日に4745円で売却しました。3カ月弱で株価はなんと3倍に増加。343万5000円もの利益を確定することができました。売却した理由は、他のタイミングでもミクシィを購入し保有していたことから、一部を利益確定して銘柄の分散化を図るためです。

乗り換えをするかどうかで、投資格差が広がっていく

<まとめ>

 

乗り換えを実行した場合としなかった場合で、どのくらいの差が出たのか。8月8日時点の資産の差を改めて数字で確認してみましょう。

 

ソフトバンクについては、ミクシィを売り推奨した2014年8月8日まで保有し続けたという前提で、8月8日の終値6801円で売却したという設定です。なお、本来はさまざまな銘柄を保有中でしたが、わかりやすくするためにソフトバンク、ミクシィの2銘柄と現金のみで計算しています。

 

ソフトバンク購入前の資産総額は138万3300円。ソフトバンクからミクシィに乗り換えて、8月8日にミクシィを売却した場合の資産総額は474万5000円。一方、8月8日までソフトバンク株を保有して6801円まで下落したところでようやく売却すると、資産総額は127万8400円です。

 

つまり、乗り換えを実行したのとしなかったのでは、474万5000円-127万8400円=346万6600円も差がついてしまったのです。

 

このことは、単にこの時点の金額差に留まりません。300万円超も資産が増えれば、30万円の株なら10銘柄も購入できます。それらの銘柄がまた利益を生めば、将来的には何百万円、あるいは1000万円超の差になってくるのです。つまり、乗り換えをしたかしないかで、投資格差がどんどん広がっていくということです。

 

5月の乗り換え時点では、ソフトバンクの売却損が▲7万3300円発生しましたが、後から振り返ると、ほんの小さな損失と言えるでしょう。この損失を確定するのをためらっていたら、ミクシィには乗り換えられず300万円の利益も得られませんでした。

 

これはあくまで過去の事例ですが、決して珍しいことではありません。たった一度の乗り換えがその後の運用をぐっと楽にさせることがある、それをしっかり認識しておいてください。

 

[図表1]ソフトバンクグループ

 

[図表2]ミクシィ


 

※売買のタイミングは筆者の会社で扱っているコースの一例です。

本連載は、2016年2月1日刊行の書籍『資金30万円を巨額資産に大化けさせる銘柄「乗り換え」株式投資法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書のケーススタディと本文で取り上げた銘柄の売買タイミングは、すべて「ライジングブル投資顧問」で提供している売買サポートの一例です。売買タイミングは、各コースで異なります。投資はご自分の判断で行ってください。本書を利用したことによるいかなる損害などについても、著者および幻冬舎グループはその責を負いません。

資金30万円を 巨額資産に大化けさせる 銘柄「乗り換え」株式投資法

資金30万円を 巨額資産に大化けさせる 銘柄「乗り換え」株式投資法

藤村 哲也

幻冬舎メディアコンサルティング

給料がなかなか上がらない、預貯金をコツコツ貯めてもほとんど増えない――。資産運用の難しい時代です。 株式投資は、実は資産を安定的に大きく増やせる“堅実”な運用術です。安定運用のコツはただひとつ。上手に銘柄を「乗…

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