内部統制強化にも有効…ペーパーレス化を導入すべき企業の特徴

帳簿や記録など、これまで紙で保存しておいた情報をデータ化する「ペーパーレス化」。ペーパーレス化が進む海外諸国と比べ、日本は遅れを取ってしまっているといえます。対して、自社は先駆けてペーパーレス化に取り組めていると思っていたら、間違った方法を行ってしまっているケースも。本記事では、ペーパーレス化普及に取り組む横山公一氏が、日本におけるペーパーレス化の現状を解説します。

今すぐペーパーレス化すべき企業の特徴とは?

ペーパーレス化は基本的に、すべての企業が導入すべきものです。ただ、その効果の表れ方は、企業規模や業界によって違ってくるでしょう。

 

社員数があまり多くない企業ですと、ペーパーレス化の効果はさほど大きくはならないかもしれませんが、人数が少ない分、導入はスムーズかもしれません。逆に社員数が増えていくと、ペーパーレス化を徹底するのに少々骨が折れますが、かなり大きな効果を上げることができます。

 

また、次に挙げる三つのニーズのいずれかに該当する企業は、できるだけ早くペーパーレス化に舵を切ったほうが良いでしょう。

 

【ペーパーレス化の三つのニーズ】

①業務を効率化・高速化したい

②内部統制を強化したい

③印紙税を削減したい

 

いずれもペーパーレス化によって達成できることではありますが、どれを重視するかによって導入のしかたやシステムの構成が変わってくるでしょう。もしかしたら「三つともすべて重要」という企業もあるかもしれません。あなたの会社がどこに当てはまるか、まずは考えてみてください。

 

では、それぞれの内容について、もう少し詳しくお話ししましょう。

ニーズ①「業務を効率化・高速化したい」

これは最もスタンダードなニーズで、ほぼすべての企業が当てはまるものです。従業員数にして30〜50人ほどの中規模の組織以上が導入効果が高いと思われますが、そこはやり方次第。それ以上の組織であれば、特定の部署やチームからスモールスタートを切るというやり方が効果的でしょう。

 

日常的に多くの情報を扱い、しかも紙を多く取り扱う金融業、不動産業などでは、ペーパーレス化によってかなりの恩恵を得られるはずです。

 

不動産業や人材派遣業を例に挙げましょう。これらの業界では契約書と関連資料が非常に多くなり、その扱いにも手間がかかります。まず契約書を作ったらプリントし、製本して相手先に送ります。そして印鑑を捺してもらって、印鑑証明とともに1部返送してもらい、金庫なり保管庫なりで保管されます。ここまでの段階ですでに多くの手間と時間がかかっています。またこうした契約書は誰にでも見せられるわけではありませんから、閲覧者を制限しなくてはならず、さらに保管コストがかかります。

 

ペーパーレスになれば、これらの手間と時間とコストが不要になるのです。

 

建設業も導入効果は高いでしょう。行政に提出する各種の届出書、それに伴う資料などが膨大になり、やはりその管理のための手間やコストがかかってしまいます。私たち公認会計士・税理士と同様に「紙に埋もれやすい」ため、ペーパーレス化による効果はかなり大きなものになるでしょう。

 

もちろん製造業やサービス業であっても、職場にあふれる紙が消え去るだけで、日々の仕事をよりスムーズに回すことができるはずです。

ニーズ②「内部統制を強化したい」

これはIPOを控えた企業、あるいは上場直後の企業などに多いニーズです。

 

新規株式の公開に向けた作業では組織的な運営を求められますが、その中の一つに内部統制の整備と運用があります。アナログ時代であれば作業に関する「お作法」を決めておき、それにしたがって運用されているかどうかを監視する「お目付け役」を置く・・・という具合に、大きなコストがかかるものでした。

 

しかしデジタル化された内部統制の仕組みはとてもシンプルで、こうした状況に有効なものです。まず業務の流れをルール化し、そのルールにしたがって相互牽制によってチェックをする仕組みを作っておき、イレギュラーなことが起こればそれをフィードバックする体制を保持しておけば良いのです。

 

組織にはそれぞれにルールがあり、そのルールに沿ってあらゆる作業を進めていきます。エラーが起こってはいけない部分はより厳格なルール設定をしたり、ダブルチェックを行うなどの措置がとられます。ですが人の目と手で行う以上、エラーやミスを完全に排除することはできません。

 

そこでデジタルの強みが発揮されます。デジタルの世界では「見落とし」ということはありませんから、情報の中に何らかのエラーがあれば、そこで処理を止めることができます。間違いをスルーしたまま業務を流してしまう、ということがありません。

 

さらに、そのルールはすべてのスタッフに適用することができます。

 

アナログによる内部統制では、どんなに厳格なルールを作ったとしても、そのルールを作り、チェックするべき立場の人間が恣意的にスルーすることがあり得ます。つまりトップの了解のもとに不正が行われる・・・という余地を残してしまうのです。

 

ところがペーパーレス化すれば、そうしたことが起こりません。現場のスタッフから組織のトップに至るまで、あらゆるレベルでの統制が可能になるのです。

ニーズ③「印紙税を削減したい」

ペーパーレス化の効果が最も分かりやすいのが、このケースでしょう。特に不動産関連、金融関連の会社などでは、非常に大きなコスト削減効果が表れます。

 

不動産関連業界では、土地の売買など多数の契約が扱われており、それらの契約書の取り交わしの際に印紙税が必要になるケースが多くあります。企業の規模が大きく、扱う案件の数が増えれば、それだけ印紙税額が増えていきます。

 

大手の不動産会社では年間に億単位の印紙税を支払うケースもありますから、非常に大きなコスト削減効果が得られることになります。これは誰にでも分かりやすい、直接的なメリットでしょう。金融関連の会社では、やはり金銭消費貸借契約で必要となる印紙税の削減が、電子契約によるメリットになります。

 

また紙の契約書は作成する手間、流通させる手間、締結する手間、保管する手間など、大きなコストがかかります。そうした面では派遣業界にも有益でしょう。派遣会社では顧客先企業に派遣するスタッフと、雇用や請負に関する契約書を交わしますが、人材を多く抱える派遣企業ほど、扱う契約書は多くなります。印紙税のように直接コスト削減になるわけではありませんが、間接的な効果はきわめて高いでしょう。

 

ペーパーレス化によるコスト削減効果は、あらゆる場面に表れます。これは業務の効率化とリンクすることでもありますが、資料の作成や各種書類のプリント、発送などの手間がなくなれば、郵送費はもちろん、それらの作業にかかっていた人件費も削減できることになります。

 

日頃はあまり気にすることもないと思われますが、ペーパーレス化を前提にして現場での業務や作業を点検してみると、いかに「要らぬ作業」に時間と手間を取られているかが見えてくるものです。まずはこうした視点で業務をチェックし、ペーパーレス化によってどれほどの削減効果が期待できるか、試算してみると良いでしょう。

 

 

横山 公一
ペーパーロジック株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
公認会計士・税理士

 

ペーパーロジック株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
公認会計士・税理士 

1991年、監査法人トーマツに入所し、監査業務、株式公開支援業務、関与先のABS発行の会計税務等を担当。
1999年、創業メンバーとして金融特化型の会計事務所を設立、代表パートナーとして同社を取扱ファンド数1,500、管理金額4兆円へと成長させ、金融特化型会計事務所としては国内最大手にまで成長させる。ファンド管理のスペシャリスト。

<略歴>
・学習院大学法学部政治学科卒業
・公認会計士 税理士
・一般財団法人日本情報経済社会推進協会 インターネットトラスト研究会委員
・一般財団法人日本情報経済社会推進協会 電子契約ワーキンググループ委員
・監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)出身

著者紹介

連載オフィスの生産性革命!電子認証ペーパーレス入門

本連載は、2018年10月13日刊行の書籍『オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門』(TCG出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門

オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門

横山 公一(著)、久野 康成(監修)

TCG出版

「ペーパーレス化」=「PDF化」だと勘違いしていませんか? 「書類のPDF化」を、「法令準拠」と「データのデジタル化」と併せて行うことでこそ、真のペーパーレス化が実現可能なのです。 本書では、正しいペーパーレス化…

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