年後半は55米ドル近辺で推移
今年は29%上昇
■2019年の原油価格は、代表的な指標であるWTI先物価格で年初の1バレル当たり46.54米ドルから、協調減産やイラン産原油の禁輸措置を背景に同66.30米ドルまで上昇した後、いったん下落に転じ、7月以降は概ね同55米ドルを挟んだレンジで推移しています。12月は石油輸出国機構(OPEC)などの減産拡大合意や、米中貿易協議に対する楽観的な見通しから上昇傾向となり、16日の同60.21米ドルまでの騰落率は+29.4%となりました。昨年の年間騰落率は3年振りのマイナスとなりましたが、今年は総じて堅調と言えそうです。
減産拡大、サウジは追加減産
協調減産を日量170万バレルに拡大
■協調減産の背景には、米中貿易摩擦などによる世界経済減速から原油需要の伸び悩みが懸念されることに加え、米国のシェールオイルを中心とした増産などがあります。
■ロシアなど非加盟主要産油国を加えたOPECプラスは、12月の会合で日量120万バレルから同170万バレルに減産拡大することで合意しました。またサウジアラビアは更に自主的に同40万バレルの追加減産を表明しました。
2020年は緩やかな上昇を予想
■サウジアラビアには国営石油会社の新規株式公開で株価を高めたい意向があったと見られます。OPECのリーダーである同国主導の追加的な減産は原油需給を一層逼迫させ、原油価格の押し上げ要因となります。
■原油需要は、世界経済の持ち直しから緩やかな増加が見込まれます。OPEC月報12月号によれば、19年の原油需要量は世界全体で日量9,980万バレル、前年比1.0%増、20年は同1億88万バレル、同1.1%増と予想されています。
■一方、原油の供給量は19年1~9月実績で日量9,868万バレルと需要量を下回りました。12月の協調減産合意が遵守される可能性は高く、原油需給は更に逼迫することが見込まれます。足元では米中協議が第一段階の合意に達し、世界経済に対する最大の不透明感が後退したことや、今後、景気鈍化の底入れが予想されるなど経済見通しが上向いていることも原油価格にとって明るい材料です。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油市場、2019年の振り返りと2020年の見通し』を参照)。
(2019年12月17日)
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