4年で資産6億円、家賃収入7500万円
これまでお話ししてきた資産づくりでは、なるべく返済が終わるまで、その資産からの収益には手をつけずに残していく方法をお伝えしました。しかし、セミリタイアを目指すなら、最終的にはマンション経営をすることが近道です。
この本の主旨とは変わってきますが、たった4年でセミリタイアした人がいます。
当時、サラリーマン大家さんだった35歳の豊田さん(仮名)は、仕事を辞めてセミリタイアして専業大家さんになることを目標にしました。そのためには退職しても食べていけるだけの資金と建物を維持管理するための資金を確保する収入が必要でした。
普通のサラリーマンの豊田さんですから、最初からたいした資金はありません。そこで、物件評価(積算評価)が高く、頭金がなくても、銀行がフルローンで融資してもらえそうな物件を中心に探すことにしました。なおかつ4年でセミリタイアする目標があったので、短期間で一気に物件を見つけて購入をしていく必要がありました。
豊田さんは、ビジネスで学んだ企業買収の投資家、ウォーレン・バフェット氏の言葉「バカでも経営できる会社の株を買え!」に見習って、「バカでも経営できる賃貸マンションを買う」と方針を決めました。豊田さんの考えた購入ポイントは4つありました。
①賃貸人口の増えているエリア
②周辺物件の間取りや家賃を調査してそれ以上の優位性がある。たとえば、家賃、部屋の広さや、南向き、駅近など
③将来のリスク、近隣に新しい競合物件が増えないところ
④サラリーマンでも融資が受けられやすい「担保(積算)価格」が売却価格より高い物件
担保(積算)価格は、金融機関が融資にあたって担保価値としてみる評価額です。
●土地は一般に路線価(相続税評価額)からその80%の間で評価します。
●建物は構造別に木造(W)は平米当たり16万円。鉄骨(S)は平米当たり18万円。鉄筋コンクリート(RC)は平米当たり20万円。
●各法定耐用年数は、木造22年、鉄骨34年、鉄筋コンクリート47年。
新築時延べ床面積をかけて新築価格を出すと、
●「新築価格×残年数÷耐用年数分=残存価格」からその70%の間で評価します(金融機関により評価方法は異ります)。
このようなポイントを意識しながら物件を探し始めました。
あらゆる有名な不動産サイト(楽待、健美家、不動産投資連合隊等)に登録し、条件が合った物件を問い合わせ、家賃収入状況がわかる「レントロール」を取り寄せ、現地訪問、現地調査という手順を繰り返しました。毎日、帰宅後ご夫婦で、各不動産サイトの物件を30~40件チェックしました。何と月間で1000件、年間で1万件にのぼります。
そうして買えたのが、次の6棟のマンションでした。
1年目で、7200万円のマンション1棟。
2年目で、2億600万円のマンション1棟。
3年目で、6200万円と5800万円のマンション2棟。
4年目で、1億6600万円と3600万円のマンション2棟。
不動産投資は「モチベーションの維持」が鍵
購入にあたっては、先に買った家賃を頭金として使いながら、余分に自分の蓄えをつぎ込まなくてもいいように計算しました。これだけ加速できたのは2棟目で年間の家賃収入が2800万円ある物件を買えたことで、それ以降の物件購入の資金繰りが楽になったからです。
物件購入当初の5年ほどは建物の減価償却費のおかげで税金がほとんどかかりません。そのため、家賃収入のうち返済と経費を支払ったあとに残った資金が、まるまる物件購入に使えたわけです。
[合計6棟]
総資産額 6億円
借入総額 5億6550万円
家賃収入 7540万円
借入返済 3306万円
諸経費 1508万円
手元資金(キャッシュフロー) 2726万円
これで仕事を辞めても、年間2726万円(月227万円)のお金が残ります。この中で、建物を維持するための費用を積み立てても、月100万円以上が生活資金として使えるようになります。これだけあれば、セミリタイアしても、家族でゆとりを持って暮らせます。
短期間にたくさんの借金を抱えるリスクと心理的な重圧がありますが、セミリタイアという大きな目標の中では、想定されている心理です。
豊田さんは物件購入にあたっても、銀行の返済やリスクについてもかなり緻密に分析していました。豊田さんは言います。
「不動産投資は経営です。起業するのと同じで、軽い気持ちで参入すると、やけどするので、やめたほうがいいと思います。逆に、本気でやるなら3~5年で月100万円のキャッシュフローを得るのはそんなに難しくありません」
この豊田さんのようにセミリタイアを考える人は、時間とお金を集中的に投資して、途中であきらめずに、目標を明確にして毎日続けることが大切です。私が見ている中でも、途中であきらめてしまう人が多いので、不動産投資はいかにモチベーションを維持していくかが鍵です。