2019年10月分「鉱工業生産指数・速報値」の分析

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

10月分生産指数前月比▲4.2%の大幅減少。消費増税、台風、9月の大型案件の反動など重なる

 

10月分の経産省の基調判断は15年8月分以来の「生産は弱含み」に下方修正

 

10月分景気動向指数・一致CI前月差は下降に転じ、基調判断は「悪化」継続の見込み

 

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・10月分速報値・前月比は▲4.2%と2カ月ぶりの減少になった。15年を100とした季節調整値の水準は98.9と、16年5月分(98.5)以来の低い指数水準になった。また、前年同月比は▲7.4%と2カ月ぶりの減少になった。

 

●10月分の大幅減少は、消費税増税、台風19号等の被災、9月にコンベア、運搬用クレーン、海外向けの化学機械など一部品目で大型案件があった反動減、昨年10月分が9月の地震、台風の影響を受け挽回生産をしたことにより季節調整値への影響など、様々な要因が作用したと考えられよう。

 

●10月分鉱工業生産指数では、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業、窯業・土石製品工業の3業種が前月比増加。自動車工業、汎用・業務用機械工業、生産用機械工業等の12業種が前月比減少。

 

●10月分の大幅減少で10~12月期の前期比の減少がほぼ確実となった。7~9月期の前期比は▲0.5%に続く連続減少だ。このところ鉱工業生産指数は四半期ごとにみると前期比増減を繰り返していたが、そのパターンが崩れることになろう。

 

●経済産業省は基調判断を8月分以降の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正した。

 

●鉱工業生産指数の10月分製造工業予測指数・前月比+0.6%の増加であった。なお、台風19号の影響は調査時点の後の現象なのでこの数字には含まれていなかった。経済産業省は過去の修正パターンを機械的に反映させた鉱工業生産指数の先行き試算値を発表している。10月分の前月比は最頻値▲1.6%の減少にとどまり、90%の確率に収まる範囲は▲2.6%~▲0.6%になっていた。マイナスになることは確実視されていたが、実績は前月比▲4.2%で、先行き試算値の下限をも大きくに下回る伸び率となった。

 

●10月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲4.3%で2カ月ぶりの減少となった。前年同月比は▲7.1%で2カ月ぶりの減少となった。指数水準は98.3で15年12月の98.3以来の低水準である。

 

●10月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+1.2%の増加になった。4カ月ぶりの増加である。前年同月比は+2.5%と12カ月連続の増加となった。

 

●10月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+4.7%で2カ月ぶりの前月比上昇となった。10月分の指数水準は113.5で2015年基準の最高水準である。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年4~6月期は出荷の前年同期比が▲2.7%、在庫が同+3.0%、19年7~9月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.7%であった。19年10月は出荷の前年同月比が▲7.1%、在庫が同+2.5%と、依然として45度線を上回っていて「在庫調整局面」の状態にある。

 

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると11月分は同▲1.5%の減少、12月分は前月比+1.1%の増加の見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、11月分の前月比は最頻値で▲1.8%の減少にとどまる見込みになる。90%の確率に収まる範囲は▲2.7%~▲0.8%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、11月分は先行き試算値最頻値前月比(▲1.8%)、12月分を前月比(+1.1%:製造工業予測指数)で延長すると、10~12月期の前期比は▲4.3%の減少になる。

 

●また、11月分は製造工業予測指数前月比(▲1.8%)、12月分を前月比(+1.1%:製造工業予測指数)で延長すると、10~12月期の前期比は▲4.1%の減少になる。どちらのケースでも鉱工業生産指数は四半期ごとに前期比増減を繰り返すという最近のパターンが崩れることになる。生産の持ち直し基調が年末頃からしっかり出てくるかどうか、予断を持つことなく見極めたい局面と言えよう。

 

(10月分景気動向指数、一致CIは前月差大幅下降に、基調判断は「悪化」継続)

 

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.2程度と下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが11月29日午前9時現在で確定している。残る、新設住宅着工床面積は前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●10月分の一致CIは前月差▲3.8程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列は全系列が、前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分では3カ月後方移動平均が4カ月ぶりに上昇に転じ、かつ当月の前月差の符号がプラスとなったが、3カ月後方移動平均の前月差が1標準偏差分の0.90にとどかなかったため、「下げ止まり」には戻れず、「悪化」継続だった。10月分では3カ月後方移動平均が2カ月ぶりに下降に転じ、かつ当月の前月差の符号がマイナスになるので、「悪化」継続になると予測する。

 

●10月分の先行DIは33.3%程度と6カ月連続して景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、マネーストック、東証株価指数の3系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になることが確定している。先行DIは33.3%以上44.4%以下と50%を下回ることが確定している。残る、新設住宅着工床面積はマイナス符号になると予測した。

 

●10月分の一致DIは0.0%程度と景気判断の分岐点の50%を2カ月ぶりに下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列全てがマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年10月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

2019年11月29日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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