被害金額は2018年比で「158%」増加
ブロックチェーン分析企業CipherTraceは、2019年の暗号資産関連詐欺および窃盗被害金額が44億ドル(4810億円相当)に及ぶとする結果をQ3報告書で発表した。
CipherTraceは、120もの取引所のKYC(顧客確認)とAML(資金洗浄対策)を検証し、暗号資産関連犯罪を調査していた。
2019年の合計被害金額は44億ドルに上り、2018年比で158%増。特に被害金額の大きい事案として、PlusToken詐欺「29億ドル」、カナダの取引所QuadrigaCXが失った暗号資産「約2億ドル」などがある。
一方で、Q3(9〜11月)の関連犯罪は過去2年間で最も少ない四半期になることが判明したという。
Q3の暗号資産被害状況としては、650万ドルに相当する暗号資産が暗号資産取引所から流出、900万ドルが詐欺によって騙し取られており、被害総額は550万ドルになった。
なお、今回の調査には、昨日確認された重大インシデント「韓国の最大手取引所Upbitハッキング事件」は含まれていない。Upbitの被害額は342,000ETHの約5000万ドルに相当する。
◆KYC導入状況
AMLやハッキング追跡対策として必要となるKYCの導入状況に関しても、CipherTraceは調査した。
120の取引所のうち、健全なKYC基準を施行しているのは42社で、未だ不完全なKYC状況の取引所が49社、緩いKYC状況の取引所も29社あるという。120の取引所のうち、38社はいわゆる「匿名通貨」を取り扱っており、KYCによる追跡が妨げられると見られている。
暗号資産のハッキング事例後の取引所間協力など、世界的にKYCの高水準が求められる一方で、匿名通貨の流動性懸念もある状況だ。
ポーランドの暗号資産取引所BitBayは、資金洗浄の懸念で匿名通貨モネロ(XMR)の上場を廃止すると発表。今年の8月、コインベースUKはイギリスの歳入税関庁の動きを懸念し、匿名暗号資産Zcash(ZEC)の取り扱いを中止した。AMLコンプライアンスが強化される一方、匿名機能の高い通貨は、取引所のコンプライアンスという障壁に直面しつつある。
※本記事は、2019年11月28日に「CoinPost」で公開されたものです。