円満家族こそ「マイホームを50代で手放すべき」これだけの根拠

念願だったマイホーム。子どもも独り立ちし、「この家も広すぎる。名残惜しいけど売ろうかな…」と考えたそのとき、すでに手遅れかもしれません。人口減少時代に突入した今、中古物件の価値下落は目を見張るものがあります。本記事では、株式会社Hope Home 代表取締役・池田洋三氏が、マイホームこそ50代で手放すべき理由を解説します。

「リフォームしたんだから価値は上がる」は甘い考え

不動産に限らず、あらゆる商品は売り手と買い手の関係によって価格が決まります。簡単に言えば、需要が多く、売り手が少なければ価格は上がりますし、反対に需要が少なく、売り手が多ければ価格は下がります。

 

不動産についても同じように考えることが大切です。とくに不動産の場合、値付けはかなりアバウトだと思っておいた方がいいでしょう。現に、不動産業者によっては、同じ物件でも、数十万円から数百万円ほど値付けが変わります。

 

イメージしやすいように分かりやすく説明すると、木造の30坪の一般的な住宅の場合、築年数が20年も経ってしまえば、固定資産税評価額では約百万円ほどしかありません。ですので、土地代に約百万円を上乗せした価格が、マイホームの一般的な市場価格になります。

 

よくある誤解として、「数百万円かけてリフォームしているから、そのぶん、住宅の価値も高まったはず」というもの。実際には、リフォーム代金がそこまで考慮されることはありません。新築物件並みの価格に近づくことは皆無です。

 

また、土地の価格については、課税価格を導き出すための「路線価」や市場に流通している価格から相場が算出されます。しかし、相場はあくまでも相場でしかありません。

 

市場原理や売り手の事情が考慮される不動産マーケットでは、当然、人気のある地域の方が売りやすくなります。人気のある地域とはつまり、都心部をはじめとする、利便性の高い住宅密集地のことです。

 

需要があるから購入予備軍が増える。しかし、土地には限りがあるため、建築できる物件の数には限界がある。すると、土地の価格が高くなり、不動産の価値そのものも上がっていきます。これが不動産マーケットの実態です。

 

一方で、地方はどうでしょうか。過疎化も問題になっているように、これから先はさらに人口の格差が進んでいくと予想されます。そうなると、どんなにいい建物であったとしても、築年数によって価値が下落してしまうため、結果的に不動産全体の価値としては低くならざるを得ません。

 

価値が下がるということは、価格が下落するということ。そして、どんなに価格が下落しても、買い手がつかなければ売ることはできません。だからこそ、とくに地方の物件を売却したいと考えている方は、需要があるうちに手配しておくことが重要です。

 

少なくとも、「地方創生」のような国の施策に期待していても、マイホームを高値売却するのは難しいのが実情です。不安があるのであれば、すぐに行動を起こすことが肝要です。

マイホームが「負動産」になってしまっていないか?

私が相談を受けた事例に次のようなものがありました。

 

相談に来たのは、千葉県の外房地方の不動産を所有している女性の娘。築30年ほど経過していたのですが、家が古くなってきたこともあり、将来のことを考えて売却を検討していました。

 

ただ、雨漏りなどもあったため、このまま中古物件として売却できるかどうか? 欠陥品を売った後で損害賠償をとられないか? 分からないことだらけなので相談にのってほしいとのことでした。建物を取り壊し、更地にして売却し、マンションに住み替えるなども考えていました。結果的に、更地にするようアドバイスしたところ、建物が解体されているのを隣地の年配の方が見て、売りに出ることを知り買い取ってくれたとのことでした。

 

この件は、数年前のこと。まだ隣の方が元気だったから良かったものの、もし15年後であればどうなっていたか分かりません。場合によっては、買い手がつかない可能性もあるのです。

 

もし、所有している不動産を売却できなければどうなってしまうのか。不動産は資産ではなく、ただの負債になってしまいます。そうならないために、不動産を無条件に資産としてとらえるのではなく、人口動態や利便性から今後の状況を考慮し、対策を講じなければなりません。

 

極端な話で言えば、いくら安い物件があったとしても、都心から距離があり、さらにコンビニやスーパーなどの商業施設や公共施設が充実していなければ、多くの人は好んで住みたいとは思わないでしょう。そして建物そのものも、経年劣化によって価値が低下していきます。

なぜ50歳くらいから売却を考えた方がよいのか

ほとんどの方が、「まだ10年以上も住宅ローンが残っているのに、もう売却の検討をしなければならないのか……」と思うかもしれません。ここである一般的な家族を例にあげて説明します。

 

地方出身52歳会社員、奥さん50歳専業主婦、息子さん22歳大学生(就職が内定し、近いうちに一人暮らしを希望)、娘さん19歳大学生。32歳のとき、30年の住宅ローンを組み新築住宅を購入。62歳で完済予定。

 

60歳で定年退職後、同じ会社で再雇用を希望、65歳まで勤続予定。60歳のとき支払われる退職金でリフォームを検討中。65歳再雇用終了後、夫婦で出身地に移り住むかも悩み中。

 

まず、老後の生活についてですが、ゆとりのある生活をするために、必要な金額はおよそ月額35万円ほどだと言われています。総務省の家計調査によると、無職の高齢者世帯の場合、その支出は平均で29万円ほどです。そして、貯蓄額2000万円くらいは必要だと言われています。

 

仮に、支出を平均の29万円・年間約350万円としてこの家族にあてはめてみます。次に収入を年金受給後、社会保険を引かれ手取りで250万円とすると、年間100万円の貯蓄を切り崩していく計算になります。

 

年金については、世帯タイプ別厚生年金給付水準には厚生労働省が公表した次のような試算例があります。夫は40年間就労、妻は専業主婦、現役時の平均手取り収入が47.2万円の場合、受給額は23.7万円(2015年度からの受給者の場合)。

 

自分がどのくらい年金をもらえるかは年金定期便をみるか、もしくは、ねんきんネットで試算できますのでぜひ試してみてください。ただし、老後の資金を年金だけに頼るのは厳しいのが現状です。

 

現在、男性の平均寿命が80歳、女性が87歳くらいですから、20年で1500万円から2000万円もの額になります。先ほどの統計で貯蓄が2000万円くらい必要だといわれるのもうなずけます。では、60歳のとき、退職金が2000万円入るとして、その半分の1000万円を無計画にリフォーム費用として使ってしまったらどうなるでしょう?

 

その後、田舎に帰りたくなり更地にして土地を売ることになったら……。さらに、将来的に老人ホームに入居することになれば、他の費用も必要になります。とくに大きな支出となる住宅関連費用については、それだけ家計が圧迫されることになるので、慎重に時間をかけて考慮しておくべきです。

 

ライフプランから不動産の売却を考えたとき、おおむね50歳ごろから検討する必要があるというのはこのような理由からです。

 

10年あれば資金面の準備も比較的容易です。あらかじめ相場を把握していれば値付けに困ることもありません。その後の住み替えもスムーズに行えます。このことは、老後の生活を考慮するうえでも、とても重要な発想です。

 

そして、不動産マーケットは今後も買い手市場が続いていきます。そうなると、短期的な勝負ではなく、余裕のある売却計画の立案が欠かせません。なぜなら、利用する不動産会社や売却価格、あるいは購入者などの選択肢が増えるからです。マイホームの売却は早めの行動が大事であると、意識しておきましょう。

株式会社Hope Home 代表取締役
IGJ池田洋三行政書士事務所 所長 

1969年生まれ。宮崎県出身。宅地建物取引士など不動産関連資格に加えて、行政書士、ファイナンシャルプランナー(FP)、建築士の資格をもつ異色の不動産コンサルタント。その幅広い知識を活かして、住宅購入や売却などの不動産業のみならず、顧客一人ひとりの人生設計に合わせたファイナンシャル・プランを提案、高い評価を得ている。
取得資格は特定行政書士、相続診断士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、CFP認定ファイナンシャルプランナー、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー、二級建築士、フラット35適合証明技術者、耐震診断・耐震改修技術者、既存住宅現況検査技術者、応急危険度判定士、等々。

著者紹介

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池田 洋三

幻冬舎メディアコンサルティング

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