本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

9月分機械受注(除船電民需)は前月比▲2.9%と3カ月連続の減少

 

製造業・前月比は▲5.2%と2カ月連続の減少、非製造業は3カ月ぶり増加

 

7~9月期実績▲3.5%、見通しを上回る。10~12月期見通しは+3.5%

 

3カ月移動平均前月比▲4.0%。「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正

 

 

 

●9月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲2.9%と3カ月連続の減少になった。3カ月移動平均は前月比▲4.0%で2カ月ぶりの減少となった。これで7月分以降3カ月中2カ月が減少になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は+5.1%で2カ月ぶりの増加になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回8月分では大型案件は0件だったが、今回9月分でも大型案件は0件だった。

 

●9月分製造業の前月比は▲5.2%と2カ月連続の減少。製造業17業種中、10業種で増加し、減少は7業種だった。

 

●9月分非製造業(除船電民需)の前月比は+2.6%と3カ月ぶりの増加になった。8月分の電力業は大型案件が火水力原動機、発電機、化学機械の3件あったことから前月比+201.2%の増加になった。9月分の電力業は大型案件が火水力原動機1件にとどまったことから前月比▲66.9%の減少になった。電力業を含む、非製造業全体では前月比▲30.1%と2カ月ぶりの減少になった。非製造業12業種中、6業種が増加で6業種が減少となった。

 

●大型案件は、前回8月分では合計9件。内訳をみると、前述の電力業の3件の他は、官公需(その他官公需)の1件(電子計算機等)、外需5件(鉄道車両1件、航空機1件、火水力原動機1件、電子計算機2件)であった。今回9月分では合計6件。内訳をみると、前述の電力業の1件の他は、外需5件(航空機3件、船舶2件)であった。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は9月分で前月比+0.9%と3カ月連続の増加となった。前年同月比は▲2.6%と5カ月連続の減少になった。代理店受注の7~9月期の見通しは前期比▲16.8%だったが、実績は▲5.6%と上振れた。

 

●外需は9月分で前月比▲12.6%で2カ月ぶりの減少になった。大型案件は8月・9月とも5件だが、8月に前月比+21.3%と大きく伸びた反動が出たものとみられる。前年同月比は▲7.3%と6カ月連続の減少になった。外需の7~9月期の見通しは前期比+16.5%と大幅な増加率だが、実績は+6.8%の増加にとどまった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、18年10月分と11月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断だったが、18年12月分に「足踏みがみられる」に下方修正され、19年3月分まで4カ月連続して「足踏みがみられる」という判断だった。4月分では3カ月移動平均が+3.6%と4カ月ぶりに増加に転じたこともあり、4月分では「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。5月分・6月分・7月分に続き8月分でも「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断で据え置きとなった。今回9月分では前月比が3カ月連続減少かつ3カ月移動平均が▲4.0%の減少に転じたことなどから下方修正され、18年10月分・11月分以来の「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断になった。

 

 

●機械受注(除船電民需)10~12月期の前期比見通しは+3.5%である。10~12月期の前期比実績は見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの10年間でみると、上振れ7回、下振れ3回であり、上振れしやすい傾向がある四半期である。19年(令和元年)の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率94.8をかけたものである。今年が上振れるかどうか、世界経済の動向が不透明な中、予断を持つことなく注視する必要があろう。

 

●19年9月調査の19年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+6.6%になった。19年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲6.7%だった。19年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は+2.4%になった。また、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2019年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+7.4%。19年度の中小企業・全産業で▲2.8%だった。19年度の全規模・全産業では+5.3%と底堅い数字になっている。

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIの最近の動きをみてみよう。18年12月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIは55.0(同5人)、設備投資関連・先行き判断DIが50.0(同9人)。18年のうちは底堅い動きだった。

 

 

●しかし、19年に入ると変調をきたし、米中貿易摩擦など先行きの不透明材料を受けて、設備投資関連・現状判断DIは8月に36.5(同13人)まで、設備投資関連・先行き判断DIは6月・9月に31.8(同11人)まで低下した。

 

●9月には、設備投資関連・現状判断DIは45.6(同17人)で7月の50.0(同8人)以来の水準に戻った。足元では底堅さが見られる。しかし、設備投資関連・先行き判断DIが31.8(同11人)へと再び悪化した。

 

●9月調査では「前年の北海道胆振東部地震を踏まえて、道内企業ではBCP対策として、ITや通信関連での設備投資がみられるようになってきている。案件数、受注量共に着実に増加している。(北海道・通信業(営業担当)」、「民間の設備投資案件を中心に受注量が拡大傾向にある。(東北・建設業(従業員))」という声がある一方、「企業の設備投資に停滞感が出ており、下半期から年末にかけての設備更新の話がなかなか確定しない。(近畿・電気機械器具製造業(経理担当))」、「取引先の設備投資が停滞していることから、当社製造装置の受注が減少している。(中国・電気機械器具製造業(総務担当))」といった意見がみられる。

 

●10月調査は本日11日午後2時に発表される。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年9月分「機械受注」データの分析』を参照)。

 

2019年11月11日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

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