患者の不信感を高める「コミュニケーション不足」
動物病院の集客力を高めるためには、スタッフ全体のコミュニケーション能力を高めることが不可欠となるでしょう。
たとえば、飼い主と病院との間でトラブルが起こったり、あるいは病院を訪れた人が受付に対して悪い印象を抱いたりする根本的な理由を探れば、スタッフが患者との間で、あるいはスタッフ同士で十分なコミュニケーションをとれていないことが原因となっていることが少なくありません。
また、満足にコミュニケーションをとれない獣医師や動物看護師は、患者さんの信頼を得ることはできません。信頼できないスタッフのいる動物病院で、大事なペットに治療を受けさせたいと思うような人はいないでしょう。
コミュニケーションに関しては、社会心理学などの分野において研究が進んでおり、そのスキルを体系的に学べる仕組みも整っています。そのような学問的成果も活用して、ぜひスタッフのコミュニケーション能力の向上を図ってください。ちなみに、動物病院スタッフのコミュニケーション能力育成に焦点をあてた以下のような専門書も市販されています。
●鷲巣月美、門平睦代、木村祐哉(監修)『動物医療現場のコミュニケーション』(緑書房)
コミュニケーションの基本的な解説から、動物医療において想定されるさまざまな場面におけるコミュニケーションについて事例を交えてわかりやすく解説しており、非常に実践的です。
スタッフ全員にコンプライアンスの意識の徹底を図る
動物病院の経営においては、コンプライアンスを心がけることも重要となります。コンプライアンスとは、「法令遵守」という意味です。そもそも病院経営には、非常に多くの法律がかかわってきます。まず、日々の診療、すなわち獣医師本来の仕事一つとっても、以下のような数々の法律が関係してくることになります。
●獣医事、薬事関連法規
獣医師法や獣医療法、薬事法、毒物及び劇物取締法、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法など
●公衆衛生行政関連法規
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、狂犬病予防法、食品衛生法、食品安全基本法など
●環境行政関連法規
動物の愛護及び管理に関する法律、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律、環境基本法など
また、スタッフの雇用に関しては労働基準法や労働契約法などの労働法規が、広告宣伝などを行う場合には前述した景品表示法や薬事法などが、さらに税務に関しては各種税法がかかわってきます。それらすべての法律を院長はもちろんスタッフ全員が、違反せずに守ることが求められているのです。
万が一、院長やスタッフがコンプライアンスに反するような行動をとったりすれば、最悪の場合、病院の社会的評価は大きく傷つき、患者が次々と離れていくような事態になりかねません。「法律は苦手だ」などと思わず、必要があれば弁護士をはじめとした法律の専門家の助けも借りて、コンプライアンスを確保できる万全の体制、すなわちコンプライアンス体制の構築に努めましょう。