決算発表シーズンも佳境を迎え、多くの銘柄の株価が決算発表後に乱高下しています。大きく株価が動いた後はどう動くべきなのか? 筆者の考え方をお伝えします。
3カ月に1度の恒例「決算発表シーズン」
今は11月上旬。3月決算の企業は第2四半期決算(いわゆる中間決算)の発表時期です。連日、多くの銘柄が決算発表を行い、その内容により株価も大きく上下に変動しています。
筆者も先日、保有している銘柄が、決算発表で業績の伸び悩みが鮮明となり、ストップ安比例配分で売るに売れず…ということがありました。
決算発表は3カ月に1回巡ってくるものなので、株価の乱高下は仕方がないと割り切るほかありません。
もちろん、保有株が決算発表後に急騰することもありますので、決算発表が一概に危険とは言えませんが、突然の株価急騰、急落は正直言ってやりにくいのは確かなところです。
決算発表で株価が急落したらどうする?
決算発表により保有銘柄の株価が急騰した場合は利益が増えるわけですから、それほど深く考える必要はないと思います。
筆者であれば、100%以上急騰した場合は、一部利食いなども考慮しますが、20~30%程度の急騰であれば、そのまま保有を続けることが多いです。
問題なのは、保有銘柄の株価が決算発表により急落した場合です。このとき、個人投資家が取りうる行動は、大きく分けると「売却する」「保有を続ける」の2つです。
筆者は、保有銘柄の株価が「25日移動平均線を明確に下回ったら売却する」というルールを設けています。このルールは、たとえ株価が急落して25日移動平均線を大幅に割り込んだ場合も適用されます。
売られた株を保有し続けるという危うい選択肢
しかし、多くの個人投資家の方が、決算発表により大きく売られた株を売却せずそのまま保有し続けるという選択をしているようです。
その理由として多いのが、「決算発表の数値は決して悪くなく、株価は過剰反応しすぎ」「そのうち決算内容が見直されて株価は元に戻るはず」というものです。
確かに筆者からみても、「この決算内容でここまで売られなくても…」と感じることは少なくありませんし、実際に増収増益が続く成長株では、決算発表でいったん売られてもその後株価が持ち直すケースは多いです。
それでも、筆者はやはり決算発表で大きく売られた銘柄をそのまま保有する、ということは危うい選択肢だと考えます。
売られた株がもっと売られたらどうする?
筆者は2000年のITバブル崩壊や2008年リーマン・ショックなど、日経平均株価が60%以上下落、個別銘柄が5分の1、10分の1になるような大きな下落局面を乗り越えてきました。
筆者が25日移動平均線を割り込んだら保有株を売却するというルールを設けているのは、このバブル崩壊のときの株価の下落がどれほどまでに凄まじいものだったのかを肌で感じているからです。
筆者が多くの個人投資家に対して危惧しているのが、「その判断は本当に正しいのか?」という点です。
確かに決算発表で出された数値は良かった。でも株価は大きく売られた。この状況で、「決算内容は良いから株価は売られすぎ。じき戻るはず」という考えが正しいと、本当に言えるのでしょうか?
決算発表の数値は良いが、それが業績のピークかも知れません。そうなれば、特に成長株であれば天井を付けた後の下落はとても大きなものになります。正しいのは、決算発表後に値下がりした株価の方だ、という可能性も大いに考えられます。
もし、決算発表で大きく売られた株を「売られすぎ」として保有を続けて、さらに株価が大きく値下がりしたら、いったいどうするつもりなのでしょうか?
値下がりした株を持ち続ければ、やがて行きつくのが「塩漬け株」の発生です。個人投資家が使える資金には限りがあるのに、その大部分が塩漬け株により固定化してしまいます。
その結果、多くの銘柄が将来上昇トレンドになり買い時が到来したとしても、買う資金がなく、波に乗ることができません。実際、アベノミクス相場の初期に多くの個人投資家が波に乗れなかったのは、これが理由です。
今までうまく行ったから今後もうまく行くとは限らない
いわゆる「アベノミクス相場」は2012年11月からスタートしています。7年もの間、日本株は長期的な上昇相場が続いていることになります。
実はバブル崩壊から30年の間、ここまで長い期間上昇相場が続いたことはありません。
一方、2008年のリーマン・ショックから10年を経過し、リーマン・ショック自体を経験していない、投資経験の浅い個人投資家が増えています。
アベノミクス相場しか知らない、つまり上昇相場しか経験していない個人投資家もかなり多くなっています。
上昇相場では、決算発表後に急落したとしても我慢して持ち株を保有し続ければ株価は回復してくれるケースが多いです。
そのため、「決算発表で株価が下がっても持ち続けていれば大丈夫だ」と自然に思ってしまいます。
でも、それは今が上昇相場だからだということに、ぜひ気づいていただきたいのです。個別銘柄の株価チャートを見ていただければ一目瞭然で、アベノミクス相場がスタートしてからと、それより前では株価の動きが大きく異なっていることが誰の目にも明らかです。
決算発表による急落で保有株を保有し続ける方は「そのうち戻るよ」と考える楽観的な方、保有株を売却する方は「さらに大きく下落したらまずい」と考える悲観的な方です。
筆者個人的には、株式投資で大失敗をしないのは悲観的なタイプだと考えています。もし急落した保有株を売却した後再度上昇に転じたら買い直せばよいですが、急落した保有株を持ち続けた結果さらに大きく下落したら、なす術がありません。
株式投資ではいかに大失敗を避けるかが非常に重要です。その観点から物事を考えていくと、どのような行動をとるべきかが自ずと見えてくるはずです。
足立 武志
足立公認会計士事務所
※本記事は、楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で2019年11月7日に公開されたものです。