「営業の成績が悪い」。一般的な会社に勤めている方なら、一度は聞いたことがある台詞でしょう。会社の収益に直結するため、期待も責任も一身に背負ってしまう営業部門。しかし、情勢が目まぐるしく移り変わる今、営業部門に責任を押し付ける風潮が、変化しつつあります。本記事では、株式会社インタラクティブソリューションズの代表取締役であり、2000人を超える営業社員向け社内イントラネットを構築した関根潔氏が、「営業」の現状について解説します。

優秀な「2割」の営業担当が全体の「8割」を売っている

経営者や営業部門のマネージャーは、営業担当者が顧客に合わせた提案や気持ちを動かす行動をして成果を上げることを願っています。しかし残念ながら、こうあってほしいと思い描くような対面営業はなかなか行われていません。では、営業の現場は実際にはどうなっているのでしょうか。

 

私は製薬会社2社に、合わせて20年間勤めていました。その間、数々の営業同行や、業界の各社が集まる各種の勉強会にも10年以上にわたり企画・参加してまいりました。そこで営業で苦労しているという話になると、経営者や営業部門の責任者が「うちは営業ができないんだよ」と嘆息することはあっても、活動に満足しているという声を聞くことはほとんどありませんでした。

 

その内容は各社似たりよったりで、「トークがうまくできない」「交渉ごとの手際がよくない」「提案するための資料が準備できていない」「訪問前に今日は何をしてくるか考えられていない」などの時間・計画性のなさ等々です。

 

営業間の情報がある程度共有できている会社とそうでない会社もはっきり分かれており、できていない会社の方は仕組みの問題以前に運用の問題に気がついていないことが多いと感じました。

 

例えば、日報を見ても「判で押したように同じようなことが書いてあり、話を聞くと売れない言い訳ばかりだ」ということでしたが、その原因のひとつは報告のあり方の教育ができていないことに問題があることを見落とされてもいました。

 

営業部門の責任者である部長・支店長・営業所長といったマネージャーの方々も、できるだけ多くの時間を営業現場に使おうと努力をしていますが、常に営業担当者と一緒にいるわけではないので実際のところが深く伝わってきません。そして、結局は営業担当の個人的なスキルの問題なのだからいくら指導しても改善できないと半ば諦めている方が多くいます。

 

もっとも〝できない営業〞ばかりがいるわけではありません。優秀な〝できる営業〞もいて、営業部門の業績を支えています。

 

よく顧客の2割が売上の8割を占めるといいます。これは「パレートの法則」といわれ、自然界でも社会活動でも一部分の要素が全体に対して大きな影響力を持つことがよくあることを数値化して表したものです。このパレートの法則に従えば、優秀な2割の営業担当が全体の8割を売っているはずです。また集団のうち上位が2割いれば、下位のできない営業もまた同じく2割程度いてもおかしくありません。残りの6割は普通の人、つまり〝そこそこの売上の営業〞ということになります。

 

優秀な2割はおそらく顧客の望みをかなえるトークができて、言われなくても資料を準備して訪問先で何をするかシミュレーションしています。課題を自分で発見し、売り方を考えて結果を出してくれます。

 

しかし、できない営業担当者は、なぜ自分が売れないのかを理解していません。そしてどうしたらいいか分からないまま悩んでいます。そして普通の営業は「これぐらいで大丈夫だろう」と思いこみがちで、あと一歩のことを多くのマネージャーは気がついています。

 

このような営業格差を埋めるためには全体の底上げが必要ですが、企業規模が大きくなればなるほど組織としての様々な問題が発生しやすくなります。多くの会社ではこの問題の解決のために奔走しているので、営業部門の格差の是正が後回しになっているのではないかと思います。

多くの企業ではプレゼンテーションの練習をしていない

営業担当者の能力が向上しない、成績を伸ばしてくれないと不満を持つ責任者やマネージャーはたくさんいますが、そのわりには支援策を実施している会社が少ないようです。

 

製薬会社では集合研修でのプレゼンテーションやロールプレイの練習は一般的です。ですが、それ以外の企業を訪問する際に「プレゼンテーションの練習をしていますか」と尋ねると、意外にも「あまりしていません」という答えが多く、その理由は「時間がとれないから」という答えがよく返ってきます。ある通信会社では、端末の新製品が出たときも機能や特徴をどのように説明するかが社員に任されていました。

 

製薬会社の場合、MR(医師に医薬情報を提供する担当者)は製品の勉強会を通常月初の集合研修で行っていますが、模擬プレゼンテーションはあっても、個々人の指導を深くまでを行える時間がとりきれている企業は少ないと思います。

 

ましてやその中でも説明の難しい製品を十何種類も一人のMRが抱えている会社もあり、優秀な人材を集めているのでなんとかこなせているのだろうと思いますが、最近の製品は高度化しているために難易度が高く、個々の担当者にここまで負荷をかけても大丈夫なのかと心配になります。

 

MRによる製品説明会を私は何十回も見てきましたが、仕事熱心なMRは練習に練習を重ね、上手に説明できるようになっていました。その一方で、逆に仕事に追われて説明のスキルを上げる暇がない、もしくは上司も指導できていない方が多くいるように思えました。成績上位者によるロールプレイを壇上で見せる機会をつくっている会社もあります。

 

参加するMRはそれを見て、「すごいな」で終わってしまい、自分が同様に話せるまで練習をしている時間がありません。多くのMRは「その人の言葉を覚えられるわけではないし、覚えたとしても現場ではどんな切り返しが待っているか分からないから」と考えています。やらないよりはましという程度に考えているためですが、ただ見ているだけでは学習効果は見込めません。

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関根 潔

幻冬舎メディアコンサルティング

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