男女トラブルは、いつの時代でも尽きないもの。なかには、こじれにこじれて、破滅へと追いやられるケースすらあります。もちろん、トラブルを起こさないに越したことはありませんが、万が一「ドロ沼」になったとしても、適切な法的知識やノウハウがあれば、ダメージを最小限に抑えることが可能です。本連載では弁護士の稲葉治久氏に、よくある男女トラブルと、それに適切に対応するための法的知識をわかりやすく解説していきます。今回のテーマは「不倫」。※本連載は『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編したものです。

未婚とウソをついて不倫…バレたらどうなる?

男女トラブルといったときに、まず真っ先に思い浮かぶのは「不倫」でしょう。芸能人や政治家、有名スポーツ選手などが女性絡みで起こした事件・スキャンダルを伝える週刊誌やワイドショーの見出しで目にするのも、多くの場合、この二文字の単語です。

 

また、身の回りでも、不倫が原因となったトラブルを耳にしたり、あるいは目にしたりしたことがある人は少なくないはずです。

 

「ほら、営業の○さん、この前の人事異動で、なぜか××に飛ばされたでしょう。あの人、経理の○○さんと不倫していたそうよ。○○さんのだんなさんが本社にまで怒鳴り込んできて、大騒ぎになったんですって」

 

「ねえ、あなた。お隣の大学教授の○さん、昨日、道で会ったときに頭に包帯を巻いていたでしょう。あれ、教え子の女子大生と泊まりがけで旅行に行っていたのが、奥さんにばれたからみたい。さっき、自治会長さんがニヤニヤしながら教えてくれたわ」

 

もしかしたら、こうした不倫話が他人事とは思えない人も、今現在まさに不倫問題に悩まされている人もいるかもしれません。

 

では、不倫トラブルに図らずも巻き込まれてしまった場合には、どのように対処したらよいのでしょうか。不倫が原因で発生する問題の中身やその解決策は、不倫相手が未婚者なのか既婚者なのかによって異なってきます。

 

まずは、相手が未婚者の場合に起こりうる法的問題について、具体例をもとに確認していきましょう。

 

◆不倫相手が未婚者の場合(Aさんのケース)

Aさんの目の前には、一糸まとわぬ姿でベッドに横たわっている若い女性がいました。たまらなくなったAさんが、抱きつこうとしたところ……。

 

「待って、もう一度確認させて。本当に結婚はしていないのね。私、不倫だけは絶対に嫌だからね。軽い女とは思ってほしくないの」

 

女性は行きつけのバーでバーテンダーをしていました。一目ぼれしたAさんは、言葉巧みにデートに誘い、二人だけの時間を重ねた末、ついに念願の状況を迎えることに成功したのです。

 

「もちろんさ。そこの神社の神様に誓うよ」

 

その答えを聞くと、安心した女性は優しげな微笑を浮かべて言いました。

 

「電気を消して」

 

Aさんは、スイッチに手をかけながら心のなかでつぶやきました。

 

「捕らえた魚を逃がしてなるものか。ウソも方便さ」

 

一読しておわかりのように、Aさんは既婚者であることを隠して未婚女性と肉体関係を結んでいます。この場合、Aさんは相手の女性に対して法的な責任を負うことになります。

 

まず、女性は、Aさんが既婚者であることを知っていれば関係をもたなかったでしょう。そこで、貞操権の侵害などを理由に慰謝料を請求される可能性があります。

 

また、万が一、妊娠させたり、子どもができてしまった場合には、認知や養育費を求められたり、あるいは堕胎費用を請求されることにもなるでしょう。

 

なぜか男のウソは、すぐにバレる
なぜか男のウソは、すぐにバレる

風俗店でのサービスは「不貞」にはならない

さらに、Aさんの行為は「不貞行為」にあたるので、自分の妻からも法律上の責任を問われる可能性があります。夫婦はともに、配偶者以外の者とは性的行為を行わない貞操義務を負っています。不貞行為は、この義務に反するものであるため、配偶者から請求されれば慰謝料を支払わなければなりません。

 

もっとも、不貞行為はあくまでも性的行為に限られるということは覚えておくとよいかもしれません。つまり、「妻以外の女性とデートをした」「手を握って歩いていた」「キスをした」だけでは、不貞行為にはなりません。少なくとも妻との関係では法的な問題は生じないわけです。

 

また、性的関係があっても、いわゆる風俗店におけるサービスの場合には、それが1、2回程度にとどまっている限りは、不貞にならないと考えられています。

 

ただし、度を過ぎたような場合、例えば妻から「そんな店に行くのはやめてほしい」と懇願されていたにもかかわらず、やめずに通い続けていた場合には不貞とみなされる可能性があります。

不倫の代償…配偶者への慰謝料はいくら?

では、「不倫のお値段」、すなわち配偶者に対して慰謝料を支払わなければならなくなった場合、その額はどの程度になるのでしょうか。

 

慰謝料の具体的な額は、夫の資産の額や、婚姻期間の長さ、未成年の子どもがいるのかなど諸々の事情で変わってきますが、悪質性の程度がそれほど大きいとは言えない、ごく一般的な不倫の場合には100万円前後が相場です。

 

一方、悪質性が高い場合、例えば、不倫相手を妊娠させてしまったような場合や相手の女性が妻に対して「お願いだから、だんなさんと別れてください!」などと迫ってきたような場合には、配偶者の精神的なショックが大きくなるので、支払う額もより大きくなります。

 

さらに、離婚まで至ってしまった場合には、200万円から300万円にまで一気に額が跳ね上がります。それに加えて、離婚の場合には財産分与も行わなければなりません。その結果として、不倫をした男性は全財産を失うこともありえます。

 

このように、不倫の代償が高くつく危険性が大きいことは十分、肝に銘じておく必要があります。

 

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