大阪:主要エリアの空室率は低水準で推移
◆グレードA・Bともに賃料上昇が継続
2019年6月期の大阪グレードA*の空室率は、対前期(同年3月期)比0.3ポイント低下の0.2%、グレードBは対前期比0.1ポイント低下の0.8%と、空室率の低下が続いている。さらに、オールグレードの空室率も、対前期比0.1ポイント低下の1.2%と、空室不足がより一層深刻化している。
*グレードについては、記事下の資料を参照
エリア別の空室率を見ても、「梅田」の0.2%をはじめ、「堂島」「淀屋橋」「新大阪」は1%未満で推移している。「本町」「中之島」においても1%台となっており、軒並み低水準である。
この空室率の低さを背景に、限定的な空室に対して、複数の企業が賃借意向を表明し、競合する状況が発生している。こうした場合には、賃貸条件を含めた内容で入居者選定を行うこともあり、賃料相場を押し上げる格好となっている。そのため、想定成約賃料は、グレードAが25,200円/坪(対前期比+3.5%)、グレードBが14,000円/坪(対前期比+2.2%)と上昇を続けており、グレードAは12期連続、グレードBについては21期連続で上昇をしている。今後も、賃料の上昇傾向は継続すると見られるうえ、上昇のスピードも加速する可能性が考えられ、注視する必要がある。
◆大阪都心部に待望の新規供給
来年、「淀屋橋」エリアにおいて、「オービック御堂筋ビル」が竣工を予定している。これを皮切りに、大阪では大型開発が見込まれており、「梅田」「淀屋橋」の大型開発に加えて、「本町」「新大阪」にも複数棟の供給が予定されている。2022年には、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」が竣工し、2024年以降には、「うめきた2期開発」が控えるなど、テナント企業にとっては、待望の新規供給となるだろう。
しかし、裏を返せば、これらの供給がなされるまで空室は限定的であり、テナント企業にとっては、苦しいマーケットが継続することが予想される。
そうした中、オフィススペース改善の一つの方法として、コワーキングスペースやシェアオフィスを活用する企業も見受けられるようになってきた。昨今のキーワードである「働き方改革」と併せて、オフィスの在り方を見直す機会と言えるかもしれない。
神戸:空室率微増も、大型&好立地のオフィスは不足
◆神戸のオフィスマーケット
神戸における2019年6月期の空室率は、対前期(2019年3月期)比0.1ポイント上昇し1.8%となった。100~200坪の数棟の解約予告が予告期間中に消化されずに現空室となった影響で、2年半ぶりに空室率はわずかに上昇に転じた(CBREでは空室率を現空室ベースで集計)が、まだまだ大型空室や好立地空室の絶対数は少なく、移転候補物件決定の際、テナント側には諸条件(立地・スペック・時期・経済条件)で若干の妥協を強いられる状況が続いているといえる。
想定成約賃料は2017年3月期の10,780円/坪から緩やかながらも上昇を続けており、今期は対前期比で1.4%(160円/坪)上昇の11,740円/坪となった。この約2年間で960円/坪上昇したことになる。
新設・拡張・立地改善・分室設置等、前向きな動きが主である一方で、金融機関の統廃合やメーカー系企業の縮小・大阪への集約といったマイナス要因の動きも目立つように感じる。新規供給がないため、タイトなマーケットが保たれているものの、手放しにオフィス需要の強さを実感することはできない。
京都:需給逼迫から賃料相場の上昇が顕著に
◆京都のオフィスマーケット
京都における2019年6月期の空室率は、対前期比0.1ポイント低下して0.4%となった。依然として新規供給がない中、面積の拡張や新規開設意向のあるテナントは多く、需給の逼迫した状況が続いている。主要オフィスエリア内で100坪を超える空室は数える程度で、まとまった面積での移転を検討するテナントにとって候補物件はほぼない。やむを得ず残留し、近隣で分室を開設するというケースも珍しくない。
想定成約賃料は対前期比2.4%(340円/坪)上昇し14,640円/坪となった。賃料相場の上昇は著しく、今期も過去最高を更新している。スペースの確保を課題とするテナントは多いものの、想定する予算との兼ね合いで、計画の延期・中止を余儀なくされるという事例も見受けられる。
一方で、新規募集賃料と継続賃料との乖離が大きくなっている状況に対して、頭を悩ませているオーナーも多い。結果的に、新規募集賃料の値上げに二の足を踏み、リーマンショック後の景気の谷の時代に入居したテナントへの増額交渉に注力するというオーナーも散見される。