長期的な視点で資産形成が行えると、サラリーマンにも興味・関心が高まっている不動産投資。しかし難しそうなイメージが先行し、二の足を踏み人が多いのも事実です。本連載ではWEBサイト「みんかぶ不動産」のプロデューサーとして活躍する八木チエ氏が、これから不動産投資を始めようとする初心者が抱きがちな疑問や不安について解説していきます。今回は、不動産投資にまつわる「収支」について説明していきます。

不動産投資で発生する、様々な「収入」と「支出」

購入した物件を他人に貸して、家賃収入により資産を増やしていくのが不動産投資の目的です。コストと利益を正しく計算しておくことで、どれくらいの不動産所得を得ているのかを把握できます。

 

なかには「マンションやアパートに投資しても、最初は毎月5,000円程度のマイナスになる」と考える未経験者はいるはずです。ただ、収支がマイナスでは投資する恩恵が減ってしまいます。

 

赤字であれば節税できるメリットはありますが、それ以上に損失が大きくなるデメリットもあるのです。条件のよい物件に投資して、収支をプラスにすることが投資家には求められます。

 

間違った考え方で投資しないために、不動産投資により発生する収入と支出について知っておきましょう。

 

■「不動産投資」で得られる収支とは

不動産投資で得られる収入といえば「家賃収入」です。購入した物件を他人に貸すことで、家賃を毎月受け取れます。家賃は相場や物件の価値によって決まり、入居者がいれば受動的に利益を受け取れるのが特徴です。

 

サラリーマンは会社で働くことで給料を貰うため、働けなければ収入が無くなってしまいます。しかし家賃収入は自分が働かなくても貰えるものであり、不労所得として最適です。

 

また、所有する物件を増やすことで、より多額の不労所得を期待できます。なかには家賃収入だけで年収500万円以上を稼ぎ、本業よりも稼ぐ方もいらっしゃいます。

 

出口戦略として不動産を売却することもできます。売却するタイミング、売却方法などにもよりますが、売却益を得ることも可能です。つまり、不動産投資は所有している時も、手放すときも利益を得ることができるのです。

 

一方、不動産投資において、物件を購入するコストと運用するコストの2つが発生します。銀行のローンにより物件を購入する場合、毎月ローンの元金と利息を返済することが必要です。

 

また、物件の購入時には仲介手数料や不動産取得税などの支出も発生します。物件を取得するのに発生する諸費用の目安は物件価格の8%であり、高額な物件ほど諸費用も高くなる傾向です。

 

物件の購入が完了した後も、入居者が使い続けるために運用コストが発生します。管理費や修繕費、水道光熱費や固定資産税といった費用を不動産オーナーは支払わなければなりません。

 

運用費の目安は1年間の想定家賃収入における20~30%ほどです。空室期間があるとローンの返済や運用費によって赤字になってしまうため注意しましょう。

 

■「不動産の購入」で発生する「収支」とは

 

投資家が物件を購入すると、主に「各種手数料」と「税金」が発生します。

 

不動産会社が取り扱っている物件を購入する場合、取得時に仲介手数料が発生します。仲介手数料は不動産会社によって異なるものであり、物件価格の3%が上限手数料です。また、不動産の登記を司法書士に依頼するために、印紙代や報酬といった手数料も発生します。

 

さらに土地や建物を購入すると不動産取得税が発生して、都道府県に対して納税しなければなりません。不動産取得税の税率は原則として、住宅または宅地の評価額に対して4%と決められています。

 

しかし2021年3月31日までは特例として、住宅または宅地の評価額に対して3%に軽減。住宅以外の家屋については4%のままであり、住居用物件には税金が減るメリットがあります。

 

他にも登録免許税や固定資産税、都市計画税といった税金も物件取得時に発生する場合があります。公的機関から税金の通知が届いたら、期日までに税金を納めましょう。

 

「不動産の運用」で発生する「収支」とは

 

所有している不動産を運用することで収入と収支が発生します。

 

まず収入としては「家賃収入」です。購入した物件を誰かが入居することで、毎月決まった金額の家賃収入を受け取れます。想定家賃収入は一部屋の家賃に物件の戸数を掛けることで計算が可能です。実際には物件が空室になるリスクもあり、空室率によってどれくらい収入額が変動するのか知っておくことがポイントです。20%の空室リスクがあっても、収支がプラスになるのが理想です。

 

支出としては、「管理費」「賃貸管理費」「税金」の3つです。

 

まず管理組合に物件の管理を任せる場合、決められたタイミングで管理費を支払う必要があります。入居者に管理費を負担してもらうことで、コストを抑えて収支を改善できます。

 

賃貸管理費は入居者が生活する部屋の管理を賃貸管理会社に依頼する時に必要な費用です。一般的には家賃の5%前後をかかる場合が多いですが、中には家賃に関係なく定額制の会社もありますので、色々と調べてみるといいでしょう。

 

さらに不動産を所有すると毎年、固定資産税や都市計画税といった税金を支払わなければなりません。購入する物件によって税金は変動するものであり、物件価値が高くなるほど支払う税金も高くなります。

 

■「不動産を売却」する時に発生する「収支」とは

 

「物件価格が上昇しているから売却したい」

「他の物件に買い替えしたい」

 

などの理由で不動産を売却したい場合、その費用を知りたい人は多いでしょう。不動産を売却するときに発生する収支は、大きく「不動産の売却益」「ローン残高」「諸経費」「税金」の4つです。

 

まず収入ですが、中古物件は築年数や相場で物件価格が決まるものであり、売買契約が成立すれば所有者は売却益を得られる場合があります。高額な売却益を自己資金にして、他の物件に投資することは可能です。

 

次に支出ですが、不動産を売却するときにローンが残っていた場合、売却価格からローンの残債を差し引きます。所有期間が短く融資額があまり減ってない場合、売却価格よりローン残高が高くなり手出し金額が必要な場合もあるので注意しましょう。

 

さらに不動産を売却するには不動産会社に仲介してもらったり、抵当権抹消手続きをしたりすることも必要となります。売却時の手続きがあるため、仲介手数料や印紙代といった諸経費を支払わなければなりません。

 

そして不動産を売却すると売却益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。所有期間5年を基準に、5年を超えた場合、長期所有ということで税率は20%です。一方、5年未満の場合は短期所有になり40%の税率になります。

 

つまり、物件の所有期間が長くなるほど税率が低くなり、支払う税金が安くなるのが特徴です。

 

さまざまなシーンで税金がかかる、不動産投資
さまざまなシーンで税金がかかる、不動産投資

不動産投資で「リターンを計算」するには?

「不動産の収支はわかったけれど、実際にどれくらいのリターンを得られるのかわからない」という方もいるでしょう。不動産投資によるリターンを計算するには3つの方法があります。

 

1.表面利回りを確認する

 

1年間に回収できる不動産の物件価格の割合を示すのが表面利回りです。表面利回りは「想定年間家賃収入÷物件価格×100」に数字を当てはめることで計算できます。

 

たとえば物件価格が2,000万円で想定年間家賃収入が96万円の場合、表面利回りは約4.8%です。家賃収入が増えて物件価格が下がれば、表面利回りは高くなります。

 

2.実質利回りもチェックする

 

不動産を運用するときには諸経費がかかるため、リターンを考慮するときは家賃収入から費用を差し引いてから計算することが重要。実質利回りは「(想定年間家賃収入-諸経費)÷物件価格×100」により計算できます。

 

3.実際の収支シミュレーションをしてみる

 

インターネットには便利なツールが多くあり、 シミュレーションにより利回りを簡単に計算することが可能です。自分でリターンを計算するのが面倒な人には「収益・投資物件 簡易収支シミュレーション」「キャッシュフローシミュレーション」「収益シミュレーション」などのツールがあります。自分にとって使いやすいツールを選ぶことで、スムーズに収支をシミュレーションできるでしょう。

不動産投資で注意すべき3つの指標

不動産投資によるリターンは変動しやすいものであり、指標により収支がどれくらい変わるのか把握することが重要です。物件を所有する投資家が注意すべき指標は3つあります。

 

まず「家賃下落率」です。不動産の家賃は経年劣化や人口の減少によって下落しやすいものです。賃貸のポータルサイトでエリアの家賃下落率を確認して、家賃が下がりにくい物件に投資することをおすすめします。

 

そして「空室率」。所有する物件のうち、どれくらい空室があるのか割合で示します。空室率が高くなると家賃収入が少なくなり、想定よりも利回りが悪化してしまいます。

 

最後に「金利」です。銀行から資金を借りて不動産に投資している場合、金利が高くなると利回りが悪化してしまうリスクがあります。リターンを得るためには物件の利回りと金利の差を大きくすることが重要です。

 

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本連載は、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが運営するウェブサイト「みんかぶ不動産」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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