※本記事は、2019年10月17日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。

 

関東圏を直撃して大きな被害をもたらした台風19号。これを機会に、株式投資で不測の事態が起きた時の備えについて考えてみませんか?

日本各地に甚大な被害を引き起こした台風19号

10月12~13日にかけて日本列島、特に関東圏を直撃した巨大な台風19号。被害を受けた地域にお住まいの皆様におかれましては、心よりお見舞い申し上げます。

 

前回の台風15号以前、これ程強い勢力を維持したままの首都圏上陸は筆者も記憶になく、台風の中心が筆者の住まい近くを通過したこともあり、一時は暴風雨に恐怖を感じるほどでした。

 

今回の台風襲来は、土曜~日曜日にかけてでしたので、株式市場は開いていませんでした。でも、平日の昼間に台風が襲来することもあります。

 

また、台風以外にも、地震、雷、火山の噴火など、さまざまな自然災害の可能性があります。それにより、売買の注文ができなくなることも大いに考えられます。

 

株式投資を行うに当たり、こうした自然災害による不測の事態が起きたときに備え、どのような点に気を付けるべきかを考えたいと思います。

筆者が考える「最悪の事態」とは…

筆者は、株式投資をするときは、全ての可能性を排除せずにリスク管理を行うべきと思っています。

 

したがって、最悪の事態を想定し、そうならないようにするには、どのような行動を取るべきかを考えるようにしてください。

 

筆者が考える最悪の事態とは、例えば次のようなケースです。

 

・A社の株価が大きく上昇すると考え、現物のみならず信用取引も使い、レバレッジをかけて手持ち投資資金の約3倍の金額をA社に集中投資していた

 

・巨大台風がA社工場を直撃し、生産ラインが完全にストップ。復旧までに2~3年かかるほどの甚大な被害を受けた

 

・大規模な停電・通信障害により、株式市場での売買注文の発注が不可能に(株式市場自体は動いている)

 

・A社株は甚大な被害を嫌気して約40%の下落

 

・A社株の急落により信用取引の評価損が膨らみ強制決済。手持ち投資資金の全額を失う

もし1つの銘柄に資金を集中させて投資していたら…

上記のケースでは、最終的に投資に回せるお金の全額を失ってしまうことになります。そのような最悪の事態を防ぐためにはどのようにすればよいでしょうか?

 

最もやってはいけないこと、それは「1つの銘柄への集中投資」です。

 

筆者は、1つの銘柄へ集中して投資することにより、大失敗をして全財産を失ってしまう個人投資家を何人も見てきました。

 

でも、集中投資せずに複数の銘柄に投資していたら、ほとんどのケースでそのような最悪の事態は回避することができるのです。

 

1つの銘柄へ集中投資したとしても、例えば株価が値下がりを始めたらすぐに売却すれば事なきを得ることができます。

 

でも、自然災害により停電や通信障害が発生し、売買の注文ができないとなればどうでしょう? 株価が大きく値下がりしても売却できないのですから、含み損がどんどん拡大していきます。信用取引を使ってレバレッジを目一杯かけていれば、株価が30%ほど下落しただけで、投資している全ての資金が吹き飛んでしまうのです。

どうすれば最悪の事態を防げるか

もし上のケースで、A社株に集中投資するのではなく、10銘柄に分散投資していればどうでしょうか? A社株が大きく下がっても、投資資金全体からみれば小さい金額に収まりますから、全財産を失うという恐れはなくなります。

 

また、東日本大震災のときのように、A社株のみならず、日本株全てが急落するようなケースもあります。これに備えるためにはプットオプションをあらかじめ買っておくことが有効になります。

 

A社株だけでなく、複数の銘柄に分散して投資しておけば、A社株だけ大きく値下がりしたときのリスクを軽減できますし、全ての株が大きく値下がりするようなときはプットオプションにてカバーできます。

 

信用取引をする場合も、レバレッジを最大にかけて目一杯勝負するのではなく、万が一にそなえてレバレッジも控えめにしておいたほうが安心です。

 

なお、1つの銘柄に集中して投資することで発生するリスクは、「買い」だけでなく「空売り」でも同様です。1つの銘柄に集中して空売りをした結果、好材料などにより株価が急騰すれば、投資資金の全てを失ってしまうことになりかねません。

大規模な停電・通信障害への備えは?

自然災害では、大規模な停電や通信障害が引き起こされることがあります。それでも株式市場は物理的にオープンが不可能な状況でない限りは、原則としてオープンします。

 

停電や通信障害により自分自身が株式の売買の注文をすることが不可能な状況に陥った場合、これはどうしようもありません。注文できない間、株価が値下がりしてしまう可能性もあります。

 

ただ、やはり1つの銘柄に集中しているよりは複数の銘柄に分散している方が、リスクを軽減することができます。あとは繰り返しになりますが日本株自体の急落に備えたプットオプションの買いも有効です。

 

最も避けるべきなのは、スマートフォンなど携帯端末のバッテリー切れです。停電となると、コンセントからの充電ができなくなり、スマートフォンのバッテリー切れを起こします。そうなれば、注文をすることができません。

 

したがって、自然災害が起きる前から、電池で充電するタイプの充電器と、電池を備蓄しておくことをお勧めします。

 

株式の売買注文に限らず、自然災害時にはスマートフォンが情報収集の頼みの綱になります。通信障害で注文できないのであれば仕方ないのですが、注文可能であるにもかかわらずバッテリー切れで注文できず、それにより大きな損失を被ってしまう、ということのないようにしましょう。

 

備えあれば憂いなし。もしもの事態に備えて、できる限りのことは事前に準備するとともに、リスクの高い投資行動は常日頃から控えるようにしましょう。

 

 

足立 武志

足立公認会計士事務所

 

※本記事は、2019年10月17日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。

 

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