副業が推奨される世の中になってきた
私たちの多くはメインとして働く先を一つ持ちます。普通の会社員であれば「本職」ということになりますが、日中の多くをそこで働く場所、雇用契約を結ぶ場所を一つ定めます。
これは、さらにもう一つの働き場所を持つことが直ちに禁止されるものではありません。しかし、多くの雇用契約、就業規則などは兼業(副業)の禁止規定を設けてきました。
ところが時代は変わりつつあります。厚生労働省のモデル賃金規定からも兼業禁止規定は除外されましたし、実際に兼業禁止規定の除外に踏み切る会社が増えてきています。
また、もう一つの企業とも本格的にタッチし、二つの会社に勤務するような「複業」を行う会社員も出てきているのです。
もう一つの仕事を持つとき、本業に差し障りのないようにしなければいけないのは当然のことです。業務時間内に内職をしたり、業務上の顧客を奪って内職をしたりするようなことは、これからも禁止であり、認められません。
しかし、許されるならば、副業や複業にチャレンジする人が増えてほしいと思います。それはもう一つの収入源を得るだけではなく、働きがいや生きがいの多様化にもつながるからです。
投資はあなたにとって副業なのか
ところで、世間のイメージとしての副業を見ていると、「投資」を副業と位置づけている人が少なからずいるようです。
副業に関する調査をいくつか見ると「投資」がランクインしていることがあります。設問に含めない調査もあるので一概には言えませんが、投資を副業の候補として設問をした場合、一定割合が回答する傾向があるようです。
私はこの種類の調査について違和感を覚えます。資産形成として考えたとき「銀行預金」を副業として考える人はいないにもかかわらず、「投資」を副業として考える人は少なからずいるのはなぜでしょうか。
確かに投資スタイルによっては、投資は副業的です。本業の仕事を退社した後の時間を費やすことでお金を増やそうとしている場合、それをバイトやブログ運営などと同列で考えることも分からなくはありません。
実際、FX(外国為替証拠金取引)を紹介する雑誌などで、「副業として収入を増やす」と呼び込むキャッチコピーも目につきます。
あなたの投資は副業的なトレードスタイルかどうか考えてみよう
投資は副業か、といった議論は結局のところ、投資にどれだけのリソースを割くか、という問題にも通じているように思います。
ブログのアフィリエイト収入を増やそうとする人は、毎日数時間をブログ運営に費やすでしょうが、デイトレードやスイングトレードを中心に行う短期投資のスタイルであれば、毎日数時間をトレードの準備や実際の売買に費やすことになり、これに近いことになります。
また、短期トレードを行う場合、その収入をすぐ目の前の生活費用に回そうとイメージしている可能性が高いといえます。これまた毎月の追加の収入を得たいというスタンスですから副業的発想です。
一方で、入金のタイミングは月に一度、中長期でリターンを得る積立投資を行うのであれば、これはほとんど時間を要しません。投資信託によるインデックス運用をベースに据えれば、銘柄選択や売買タイミングもほとんど検討不要であるからです。
また、長期投資を行う人は、収益をすぐ翌月の生活費に回すようなことを想定しません。投資額もそれほど大きくないし、市場の騰落を考えれば毎月数万円以上を安定的に得ることは難しいからです。こちらは資産形成であっても副業的ではない、ということになります。
投資に限らず、副業にどれだけ時間を費やすかは、時間頼みではなく、やってみるといい
お金を増やす方法を「副業」と呼ぶ場合、なかなか定義は難しくなります。例えば「アパートを経営する会社員大家さん」のアパート経営を副業と呼ぶかどうかも、最後は本人の考え方一つで決まるような気がします。
ただし、ここで考えておきたいポイントとして「副業とそこに使う時間」については検討の余地がありそうです。
「時間を費やす」ことで追加的な収入を得る発想を持つ場合、時給としてどれくらい期待できるかという視点と、その費やす時間が、本業である仕事やプライベートにどれだけ影響を及ぼすかを考える必要があります。
週末の土日に12時間バイトをすれば、時給1,000円として1万2,000円、1カ月で4万8,000円の収入を増やすことができますが、これによって疲労し、本業に支障が出て、むしろ収入が減る場合も出てきます。
資産運用も同様で、睡眠時間を削って情報収集し、深夜のトレードをしていては仕事にもプライベートにも影響が出てくるでしょう。
副業は簡単なようで簡単ではありません。投資もそうです。一方で、「どんな副業や投資スタイルを選ぶか」「どれくらいコミットするか」は自分で決定できる要素でもあります。
無理せず、バランスよく、そして欲をかき過ぎないようにしながら、「副業」や「投資」をあなたの生活の中に取り入れてみてください。
山崎 俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー
※本記事は、2019年10月15日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。