転職にも、サイドビジネスのスタートにも、老後対策にも適しているのは40代。この時期にどこまでできるかが、以降の幸せを左右するといえます。※本記事は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸先生が、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術をわかりやすく解説します。

「サイドビジネス起業」秘話

40代というのは、「転職」「サイドビジネスを起業」「老後対策を開始」するのには、最適な時期です。「転職」については、必要を感じない方は着手しなくてもいいのですが、「サイドビジネス」と「老後対策」については、ぜひとも着手されることをおすすめします。

 

サイドビジネスとして「何をやったらいいか」ということについて考える際に、最も大事なことは「自分がワクワクすることを選ぶこと」です。これが成功の秘訣です。自分がワクワクすればするほど、それはお客さんにも伝わりますから、商売は繁盛しやすいのです。

 

そもそもサイドビジネスというのは、やらなければならないという性質のものではありません。通常の場合、やらなければならないのは「本業」です。もちろん、「本業」も好きなことをやれていれば、それに勝るものはないでしょう。しかし現実には、よほど才能に恵まれた人か、経済的に恵まれた人か、運に恵まれた人か、最初から好きなことしかやらないと決めている人でもなければ、「本業」で好きなことをできている人は希だと思います。

 

私も、大学教授という本業はかなり気に入っている仕事ではありますが、その仕事が100%大好きでやりたい仕事だけなのかといえば、やりたくない部分もあることを認めざるを得ません(研究・教育以外の会議や雑用がそれです)。

 

このように、「本業」には多くの場合、「やりたくないこと」も含まれているため、なにもわざわざ自発的に始めるサイドビジネス(副業)にいたってまで「やりたくないこと」をするのはやめておいたほうがいいでしょう。ですから、サイドビジネスで何をやったらいいのかを考える際には、「自分が好きなこと、得意なこと」の中から選ぶべきなのです。そして、好きなことを商売にしようと思って活動すると「ワクワク感」が生まれます。これが起爆剤となってビジネス(商売)がうまく回るのです。

 

サイドビジネスとして、何をやったらいいのか?

 原則1. 「 自分が好きなこと、得意なこと、ワクワクすること」の中から選ぶ

 

そこで問題となるのは、「自分が好きなこと、得意なこと、ワクワクすること」の中で、「何がビジネス(商売)になるのか」です。実は、どんなことでもビジネス(商売)になるのです。たとえば、フェラーリが好きであれば、「よりよいフェラーリをより安く売るお店」を開店すればいいですし、映画鑑賞が好きであれば、「映画評論」を有料メルマガにして拡散すればいいでしょう。その有料メルマガを宣伝するにあたっては、今はブログやツィッターがあるので、そういったSNSを使って拡散する方法もあります。

 

また、おいしいスイーツが好きであれば、おいしいスイーツを出すお店を開店するか、もしも自分では作れないのであれば、やはり「おいしいスイーツ紹介」の有料メルマガを拡散すればいいのです。「インターネットの時代」といわれるようになって、すでに20年以上が経っています。「インターネットの時代」だからこそ、誰でもが起業できる世の中になっているのです。

 

そして、このように「どんなことでもビジネス(商売)になる」のですが、とても重要な要素がひとつあります。それは、「皆様の笑顔」です。すなわち、「みんなが喜ぶようなことを提供しなければビジネスとして成立しない」のです。

 

たとえば、フェラーリが好きでも、自分が乗り回しているだけでは商売にはなりません。映画鑑賞が好きでも、自分が映画を観て楽しんでいるだけとか、映画を観終わってから、一緒に観に行った彼女を相手に評論をしているだけでは商売にはなりません。おいしいスイーツの場合も同様です。ですから、ポイントは「皆様の笑顔」ですし、もっと大きな風呂敷を広げてしまえば、「世のため人のためになること」です。

 

 サイドビジネスとして、何をやったらいいのか?

 原則2. 「 皆様の笑顔」のためになること、「世のため人のためにること」という基準で選ぶ

 

次に、サイドビジネスを起業するにあたって、絶対に必要な要素をひとつだけ挙げておきます。それは「行動力」です。

 

「本業」以外に何もしなければ、「本業」以外には仕事としては何もない人生です。何もしないのですから当たり前のことです。自分の人生が、本業だけでは経済的に、もしくは「やりがい」の意味で満足できないという人は、ぜひ「はじめの一歩」を踏み出してください。サイドビジネスとして何かを始めるということは、それを実行する「行動力」がすべてだと言っても過言ではありません。「行動力」のないところには何も生まれません。

 

そして、「はじめの一歩」を踏み出すにあたって解決すべき現実的な問題点として、「副業禁止ではない仕事場(会社)に移る」ということが重要です。

 

しかし、現在の仕事が兼業禁止だった場合に気をつけなければならないことは、「安易に独立してしまってはいけない」ということです。ここで提唱しているのはあくまでも「サイドビジネス」であって、本業は本業できちんと勤め上げたうえでの「サイドの」ビジネスなのですから。

 

すなわち、収入のチャネルはなるべくたくさんあったほうがいいので、本業という安定収入は確保したうえで、サイドビジネスを展開するのです。そしてサイドビジネスは、本業と何らかの関係があるもののほうが、いわゆるシナジー効果が働くので有利になります。

 

ただ、公務員(=原則的には兼業禁止です)とか、兼業を禁止している会社に勤めている場合、この「兼業禁止」という規制だけは取っ払わなければなりません。そのためには、「兼業を禁止していない職域」に転職する必要があります。用意周到に準備をして、「兼業を禁止していない職域」に転職するというのが、サイドビジネスを起業するために必要な最初の「行動力」の見せどころです。

 

本業のポジションをできるだけ下げないようにしながら、用意周到に準備をして、「兼業を禁止していない職域」に転職するというのも40代でしておくべきことのひとつです。それによって「所得倍増計画」を実践するのです。サイドビジネスを起業することによって「所得倍増計画」を実践するには、40代という時期は絶好のチャンスなのです。

 

★「老後対策」との関連で「サイドビジネス」について考える

 

サイドビジネスを起業することは、「所得倍増計画」を実践するための有効な方策であると同時に、「定年のない仕事」を身につけておくことでもあるのです。老後のことを考えた場合、「定年のない仕事」を得ておくのは非常に心強いことだといえます。

 

会社員(被雇用者)の世界では多くの場合、55歳~ 60歳でいったん雇用関係が終了し、65歳までの再雇用となります。そして、ここで必ずといっていいほど出てくる条件は「所得が半分とか3分の1まで減らされての再雇用」ということです。

 

これに対して通常は、蓄えを取り崩したり、支出を減らしたり、夜勤のアルバイトをしたりして対処することになるわけですが、40代のときにサイドビジネスを立ち上げておいて、55歳~ 60歳までに軌道に乗せておけば、それが大きな経済的な支えになりますし、サイドビジネスには定年がありません。ですから、40代でのサイドビジネスの起業ということは検討に値する課題だと思います。

 

地獄の沙汰ならぬ、「老後の沙汰」こそ金次第

私は、私の人生を振り返ってみたとき、「やっておいて本当によかったな」ということがいくつかあります。

 

10代では高校入試と大学入試でがんばったことです。

20代では大学院に進学したことと、株式投資を始めたことです。

30代では海外留学を決意し、博士号を取得したことです。

40代では私立大学に転職してサイドビジネスを起業したことと、老後対策を開始したことです。

 

各年代において、これらのことをやっておいたことが人生における成長という意味でとても役に立ち、豊かな人生を構築する礎になったと思うのです。

 

ここではとくに40代について書きますが、「老後対策」(自宅投資・定年のないプチビジネス・「金」で「貯『金』」)を40代で開始しておいたおかげで、55歳になった今、老後に対する不安はほとんどありません。

 

「地獄の沙汰も金次第」ではありませんが、「老後の沙汰こそ金次第」というところは否定できません。

 

ただし、人間そのものや人生そのものの価値は、決してお金だけでは計れません。「世の中、金次第」だとは決して思えないのです。たしかに、新車のフェラーリを買うのは金次第ではあります。しかし一方で、かわいい子供や素敵な女性と幸せな時間を過ごすのにはあまりお金はかかりませんが、新車のフェラーリに乗っているときよりも幸せなときもあります。だから、「世の中、金次第」ではないのです。

 

しかし、「老後を幸せに過ごすため」には「金次第」というところが否定できないのです。老後には仕事(本業)がありませんから、仕事のやりがいで人生の価値を計ることができにくくなります。そして、生きていくにも食費や生活費はかかりますし、娯楽をするにもお金はかかってしまうので、老後のQOL(Quality ofLife)というのは、お金があるかどうかで決まってしまう面が大きいと思うのです。

 

ですから、転ばぬ先の杖として、お金のことをしっかりと考えて、準備を開始するのが40代でやっておくべき最重要課題であり、40代(とくに半ば頃から)というのが「老後対策」を開始する好機なのです。「老後対策」は早く始めるに越したことはないのですが、20代や30代には、それぞれやるべき優先課題もたくさんありますし、「老後」というのが先のこと過ぎてピンとこないというのもあります。

 

その点、40代は「老後」というものが多少なりともはっきりと見えてくる年代だと思うのです。老眼も始まりますし、還暦までも20年を切ります。

 

そこで、人生に悔いを残さないためにも、現在40代の方は、ぜひとも「老後対策」に「開眼」してください。あとは実践あるのみ、です。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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