「正しい節約」「悪い節約」の違いとは?
お金の使い方とセットで考えるべきもう一方の課題は「節約」の仕方です。「節約」ということについて、簡潔な結論を先に書きます。それは、「不必要なものには一切お金をかけない」。それに尽きます。
年齢がいくつであろうが、経済的に恵まれていようが関係ありません。自分がいくつであっても、「不必要なものには一切お金をかけない」ということを常に意識しておくことが大事です。また、いくらお金持ちになっても、「不必要なものには一切お金をかけない」ということを忘れてしまっては、いつか財産をなくします。
なお、世間でよくいわれる「節約術」というのは、私はあまりおすすめしません。「節約が趣味だ」と言い切れる人ならば問題ないのですが、そうではないのが普通です。であれば、いわゆる「節約」(たとえば電気代を節約するとか、食費を節約するとか)は、あまり意識しないほうがいいように思います。自分の心が貧しくなることのほうが、損害が大きいからです。
不本意な「節約」をすることで「貧乏マインド」を培ってしまうのが、最も大きな損失です。「貧乏マインド」とは、「自分は貧乏なんだ」という自己暗示です。これをやってしまうと、本当に「貧乏」になってしまうのです。「節約」した結果が「貧乏」という矛盾を生んでしまうのです。やめたほうがいいと私は考えます。
前述したように、「不必要なものには一切お金をかけない」ということは大切です。そして、この命題が真であれば、論理的には「お金をかけるべきものは、必要なものに限るべし」ということもまた真理です。
しかし、「節約」というと、時として必要なものまで削ってしまう場合があります。それこそが「貧乏マインド」の始まりです。「必要なものまで削ってしまうような節約」こそ、すべきではない「節約」です。
「節約」には2種類あって、「不必要なものにお金をかけない節約」と「必要なものまで削ってしまう節約」です。前者は正しい節約で、後者がおすすめできない悪い節約です。
悪い節約をするくらいなら、もっと稼ぐことに注力を
そして、より効果的なことは、悪い節約に使うエネルギーがあったら、それを「もっと稼ぐこと」に使うということです。節約とは支出を削ることで、稼ぐことは収入を増やすことです。そして、収支の差額が「蓄え」となり、これが多ければ多いほど「お金持ち」でもありますし、老後の安心につながるわけです。
だとすれば、私は悪い意味の節約はせず、その分のエネルギーで、同額かそれ以上の金額を余分に稼ぐことを考えます。そうすれば、「貧乏マインド」を抱え込むことなく、逆に「お金持ちマインド」を増大させることができます。「余分に稼ぐこと」というのは「お金持ちマインド」の始まりだからです。
つまり、乱暴な言葉で言ってしまえば、「『貧乏マインドの節約』はせずに、そのエネルギーを善用して少しでも余分に稼ぐほうがいいですよ」ということです。「必要なものにまでお金を出し惜しんでケチケチするのはやめて、全力で稼ぐほうが効率的です」というわけです。
巷によくある自己啓発本と同じようなことを書いてしまって恐縮ですが、「貧乏マインド」と「お金持ちマインド」というのは本当に影響力がありますから、留意してください。
榊原 正幸
青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授