「老後のために」今の生活をどこまで犠牲にするべきなのか?

老後のためにお金を貯めようとすると、人は過度な節約や倹約に走ってしまいがちです。しかし、老後のためとはいえ「かけがえのない今」を犠牲にしてはいけません。本記事では、老後対策にどの程度の比重を置くのがベターなのか、わかりやすく解説します。※本記事は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸先生が、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術をわかりやすく解説します。

老後のために「過度な節約」に走る人もいるが…

これまで、中心的な問題意識として「老後対策」ということを考えながら、主にお金に関する対策について多角的な方向から検討してきました。そこで今回からは、あえてお金をどう使うかについても考えていきます。ここでは主に、40代になって老後対策を意識し始めてからのお金の使い方について、私の考えを説明していきます。

 

それというのも、人はひとたび「老後のために」といってお金を貯め始めると、ついどうしてもお金を使うことをためらってしまうようになりがちです。何でもかんでも「老後のために、このお金は使わずに貯めておこう」と思い始めてしまうと、ともすれば度を過ぎた節約や倹約に走ってしまいます。しかし、それでは本末転倒です。老後を豊かに過ごしたい。だから、「今」は倹約的に生活しよう。それはたしかにもっともなことなのですが、では果たして「今」を殺してしまっていいのかといえば、答えは「ノー」です。

 

「10代の青春は一度しかないし、戻ってこない」といわれますが、「40代の青春も一度しかない」のです。40代が「青春」なんて、おかしいと思われるかもしれませんが、40代だって、70代からみたら「まだまだ若い」です。その貴重な若い時代を無味乾燥なものにしてまで、「老後」に過度に重きを置くのは本末転倒だというわけです。

 

40代に限らず、50代だって貴重な時代です。今を殺してまで老後を大切にするのではなく、今も老後も大切なのです。「今」の価値と「老後」の価値。これらについて、自分なりに上手にバランスを取っていき、実践するのが幸せな人生を過ごす秘訣です。要はバランスが重要なのです。

適切なバランスは「今:老後=6:4」ぐらい

「今:老後」を「9:1」にしてしまうのは老後のことを考えなさすぎですが、「1:9」にしてしまうのは老後のことを考えすぎです。「今:老後」を「6:4」くらいにするのが適切なのではないでしょうか。老後対策の記事を書いておいて「今が6」というのも矛盾するように思われるかもしれませんが、やはり「二度と帰り来ぬ40代(50代)の青春」は大切ですから、「今:老後」は「5:5」ではなく、「6:4」くらいが適切だと思うのです。そして重要なことは、「老後のことも(今を6として)4は考えよう!」ということなのです。

 

そう考えて、これまでの記事で紹介したようないくつかの「老後経済対策」を40代から実践し続けることで、老後のお金の問題は解消に向かいます。はっきりいってしまえば、老後にお金のことで困ることはなくなると思います。

 

「使い切れないほどのお金」というと、数億円とか数百億円とかを想像しがちですが、数千万円くらいのお金でも、老後になれば使い切れません。数千万円が生み出す200万円~ 300万円(年額)の資産所得もありますし、年金だって、あてにはならないとはいえ、いくらかはもらえるのが通常です。

 

そして、何といっても老後には(若いときに比べて)支出も減るのが一般的です(日本には高額医療費支給制度が完備していますから、負担する医療費には通常、上限があります)。そうすると、老後における生活上の収支は黒字化してしまい、ストックの数千万円は使わなくても生きていけてしまいます。実は、しっかりと老後対策をしておくと、いざ老後になったときには、お金の収支は黒字になって、貯まっているお金は使い切れずに人生の最期を迎えることになるのです。

 

きちんと対策しつつ「かけがえのない今」を楽しむ!

このようなことから、本質的であり、かつ、意外な解答が導き出されます。すなわち、「今、お金を使うと、死ぬときに残るお金がその分、減る」というのが本質的な解答です。複利で運用していく場合には、減る金額も複利で大きくはなりますが(重要度のウェート付けを、「今:老後」=「6:4」とすれば)、「今」の価値のほうが「老後」よりも1.5倍大事なわけですから、減る金額が複利で大きくなっても、あまりアンバランスにはならないようなイメージです。

 

きちんと対策しておけば、死ぬ前にお金が底をつくということはないのです。であれば、「今、お金を使っても、死ぬときに残るお金がその分減るだけ」なのです。それを念頭に置いて、今も大切にしながら老後対策にも充分な意識を向けていきましょう。

 

しっかりと老後対策をしておいたうえで、40代や50代の「今」も大切にするのです。もっといえば、しっかりと老後対策をしているからこそ、40代や50 代の「今」も大切にできるのです。しっかりと老後対策をしながら、かけがえのない「今」を楽しむために、今のためにもお金を使いましょう。それが正しい「バランス感覚」です。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載会計学の教授に学ぶ、堅実な資産運用としての「株式投資」ノウハウ

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

老後資金、55歳までに準備を始めれば間に合います

老後資金、55歳までに準備を始めれば間に合います

榊原 正幸

株式会社PHP研究所

「安心老後」と「貧乏老後」の分かれ道は、55歳!? 「預貯金、株式投資、保険、副業、自宅購入、不動産投資、金地金・・・、結局どうすればいいの?」――還暦間近の大学教授が科学的に分析し、読者の疑問に答える画期的一冊。 …

現役大学教授が実践している 堅実で科学的な株式投資法

現役大学教授が実践している 堅実で科学的な株式投資法

榊原 正幸

PHP研究所

上昇期でも下落期でも勝率8割! 「Prof.サカキ式投資法」の最新版。コツコツ利益を積み上げて一生安泰! ■「安全で堅実な投資法」を長年研究してきた著者の最新作 青山学院大学大学院教授(専門は会計学と株式投資に関す…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧