おかしな健康診断…日本人は「糖質中毒」にさせられている!?

健康のために「糖質制限」にチャレンジしたものの、美味しいご飯の誘惑に勝てず挫折してしまった経験はありませんか?  本連載では医師の市川壮一郎氏の著書、『ゆる糖質オフ そうだったのか 食事術!』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、「糖質中毒」のメカニズムや、挫折しらずのゆるい糖質制限の方法を紹介していきます。今回は、日本人が糖質中毒に陥りやすい理由について説明していきます。

国が国民を「糖質中毒」に仕立てている!?

◆あなたが悪いのではありません。あなたは中毒のレールに乗せられていたのです

糖質中毒に陥っているにも関わらず、あなたがこれまで何の対策も打てずにいたとしても、それは仕方がないことです(関連記事:『お菓子がやめられない…恐るべき「糖質中毒」の無限ループ』)。あなたはずっと、そのように仕組まれた環境のもとで暮らしてきただけ。一つの落ち度もありません。現代社会で普通に暮らしていれば、いつの間にか「炭水化物のとりすぎ→肥満→大病」というレールに乗せられてしまうのです。

 

レール1:「お上」の誘導

厚生労働省は1日に必要なエネルギー量の50~65%を糖質(炭水化物)からとることを推奨しています。それに従うなら、一般的なビジネスマンは1日270gくらいの糖質をとることになります。3食で割れば1食約90gです。医師の私から見て、絶対にとりすぎです。

 

ところが、驚くことに厚生労働省は、それを推奨しておきながら、科学的根拠はまったく示していません。加えて、厚生労働省はコマにたとえた「食事バランスガイド」というものを作成して、健康を維持するために「何をどのくらい食べればいいか」を私たちに示しています。

 

このコマを見ると、「主食」と呼ばれるご飯などの炭水化物をしっかりととるように推奨されているのが分かります。しかし、このコマには問題があります。それはこのコマの通りに主食をとると、炭水化物を1日200~300gも摂取することになるのです。少なくとも、炭水化物をこんなにたくさんとったら、あなたの「健康」というコマはちゃんと回りません。

 

そもそも、「主食」という言葉自体あやふやです。でも、子どもの頃から聞かされていることもあって、みんな「炭水化物を主に食べるべきなんだ」と思い込んでいるわけです。

 

ここで、ちょっと冷静に考えてみましょう。日本人が米を食べるようになったのはたかだか数千年前。欧米人が小麦粉を食べ始めたのは約1万年前で、長い人類の歴史において炭水化物は「主食」ではありませんでした。

 

本当は私たちの体は、今ほど多量の炭水化物を食べるようにできていません。それなのに、なぜ米は「主食」と呼ばれるようになったのか。誰かがその位置づけをしたからです。日本に限らず、世界中で炭水化物を主食としているのは、それが国民に広く安定して食料を行き渡らせる一番いい方法だからです。

 

実は、先に紹介した「食事バランスガイド」という表は、厚生労働省だけでなく農林水産省も作成に携わっています。このことを見ただけでも、お上がいかに日本の米を守ろうとしているかが分かるでしょう。

 

レール2:白米への憧れ

今、働き盛りを迎えているビジネスパーソンの両親や祖父母は、ことさら「白いご飯」をありがたがる世代です。とくに、貧しい時代の日本で暮らしてきた経験を持つ祖父母世代にとって、「白いご飯をお腹いっぱい食べること」は最高の贅沢でした。だから、その子どもや孫たちにも、よかれと思って「もっとご飯を食べろ」とすすめます。

 

あなたは幼い頃から「ご飯を食べるのはいいことだ」と刷り込まれているだけでなく、実際にせっせと食べてきたことで中毒になっているのです。

 

本当に貧しかった時代には、「白いご飯をお腹いっぱい食べること」はあくまで夢であり、実現したとしても、祝い事などごく特別な日に限られました。ところが、いくらでも食べられる時代になっても同じ感覚でいるために、ほとんどの日本人は、明らかにご飯の食べすぎに陥っているわけです。

 

レール3:赤ちゃんの頃からの習慣

日本人の赤ちゃんが最初に食べる離乳食は「おかゆ」です。子育て経験者なら分かると思いますが、赤ちゃんにおかゆを食べさせようとすると最初は嫌がります。その理由として「もともと米を食べるように人間のDNAはできていないからだ」という考え方があります。

 

つわりに苦しむ妊婦さんが、ご飯が炊き上がる匂いを嫌がるのも、実はそうした生命の根源的要素からくるのではないかとも言われています。

 

ところが、だんだんと慣れていくにしたがって、赤ちゃんは積極的におかゆを食べるようになります。それを見て親は喜ぶわけですが、赤ちゃんを糖質中毒の入口に立たせてしまったとも言えます。

 

愛煙者に聞くと、たばこも最初の一服から「おいしい」と思ったわけではないようです。何度かむせて、それでも繰り返し吸っているうちに中毒になってしまうのです。

 

日本人のお米好きは仕組まれてたこと!?
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世間の常識が「糖質中毒」を助長している

レール4:カロリーのウソ

健康的な食事について論じるときに、必ず持ち出されるのが「カロリー」です。カロリーとはエネルギー量を表す単位で、正確にはキロカロリーと表示します。

 

残念なことに、「高カロリーの食事=健康を脅かす悪者」という間違った認識が浸透しています。日本糖尿病学会では、糖尿病の方に対する食事療法の中で、食事についてカロリーを制限した上で、そのエネルギー比率は、炭水化物を摂取エネルギーの50~60%からとり、たんぱく質は20%以下を目安とし、残りを脂質とするとしています。

 

一般人の関心もカロリーに向いていて、何かにつけて「低カロリー」「カロリーゼロ」の食品がもてはやされています。ファミリーレストランのメニューにもカロリーが表示されていて、それを参考に注文を決める人もたくさんいます。

 

例えば、脂身たっぷりの豚肉をソテーした料理は600キロカロリー、付け合わせのロールパンは1個100キロカロリーだったらどうでしょう。「カロリーが高い食事が血糖値を上げるし、肥満を呼ぶ」という昔ながらの発想をする人ならば、豚肉の脂身を残してパンをお代わりする道を選ぶでしょう。そして、みすみす血糖値を上げ、糖質中毒を悪化させてしまうのです。

 

さらに、もう一つとても重要なポイントがあります。それは、脂質はとりすぎたら便に出てしまう一方で、糖質は100%吸収されるということです。だから、単純に食べ物のカロリーを、活動によって消費されるカロリーに置き換えることはできません。豚肉の脂身のカロリーが、そのまま体に残るわけではないのです。

 

加えて、私たちの体は、そう簡単にはエネルギー不足で死なないようにできています。これまで2000キロカロリーをとっていた人が1500キロカロリーに落とせば、1500キロカロリーで事足りる体になります。しかし、それではパワーも落ちるし、お腹もすきっぱなしで長続きしません。また、「なるべくエネルギーを燃やさないように」と調整されることで冷え性にもなりますし、その人が、再び2000キロカロリーをとれば見事にリバウンドします。

 

だから、「カロリーを低く抑えよう」という意識は捨ててしまったほうがいいのです。

 

レール5:産業界の思惑

最近になって、果物の消化吸収のメカニズムについて新しい知見がもたらされました。これまで果物の果糖は、ほとんどが肝臓に送られて中性脂肪になると考えられていたのが、どうやら腸でかなり分解されてしまうようなのです。ただ、それがどの程度の割合なのかといったことまでが分かったわけではなく、人の体ではっきりと実験証明されたわけでもありません。

 

果物にはビタミンやミネラルも豊富ですが、「だから健康的」とばかりたくさんとってはいけません。たくさん食べれば確実に太ります。しかし、果物の健康的イメージは強く、多くの人たちは「果糖」という言葉についても誤解しています。

 

「果糖ブドウ糖液糖」という甘味料が、あちこちで使われています。「果糖」と書かれると、「なんだか健康によさそう」と考える人もいるようですが、これはとらないほうがいい成分の代表格です。試しに、コンビニやスーパーの棚に並ぶ清涼飲料水の成分表示を見てください。甘みがあるものなら必ずといっていいほど入っているはずです。そのほか、調味料のソースなどにも広く使われています。

 

これは主にトウモロコシを原料につくられた甘味料で、体に悪い糖質たっぷりなのです。ちなみに、「ブドウ糖果糖液糖」というのもありますが、これは「果糖とブドウ糖のどちらが多く入っているか」の違いです。多いほうを先に表示する義務があり、たいていは「果糖ブドウ糖液糖」です。

 

それにしても、なぜ、こんな甘味料がつくられたのでしょう。日本では1960年代から70年代にかけて、余剰気味になったサツマイモの使い道として果糖ブドウ糖液をつくる技術が確立されました。つまり、ここにも農業を守らねばならない事情があったのです。

 

今は、もっぱらアメリカなどから輸入されるトウモロコシを使っています。そのアメリカでも、果糖ブドウ糖液糖は余剰トウモロコシの使い道としてなくてはならないもので、じゃんじゃんつくられ、じゃんじゃん消費されています。コーラは、その典型例です。

 

トウモロコシ農家だけでなく、食品業界にとっても利点があります。工業的につくることができる果糖ブドウ糖液糖は、砂糖より安価に手に入り、また保存もしやすく扱いが楽なのです。一方で、私たち消費者には何の利点もありません。そうしたものが、私たちの身の周りにあふれているのです。

 

レール6:おかしな健康診断

あなたが受けている会社あるいは自治体の健康診断では、「朝ご飯は食べないで来てください」と言われ、空腹時血糖値を測定しているはずです。そして、110未満であれば、空腹時血糖値に関しては「異常なし」とされます。

 

医師としてここで明確に述べておきますが、この検査はあなたにとってほとんど意味がありません。意味があるとしたら、空腹時血糖値すら基準を超えるような糖尿病になっていることに気づくくらいのもの。大事なのは食後血糖値です。

 

繰り返しますが、炭水化物を食べたことでグワーと血糖値が上がり、その上がりすぎた血糖値を下げようとインスリンが出て、今度は急降下することで、あなたの体にさまざまな問題を引き起こします。

 

だから、食後の血糖値がどうなっているかを把握することこそ必要なのですが、従来の健康診断ではそれは不可能です。むしろ、空腹時血糖値が「異常なし」だということで油断してしまう分、害さえあると私は思っています。

 

実際に、「年のせいか最近、疲れが取れない」とクリニックに来たAさんもそうでした。彼は自分の体の中で血糖値の乱高下が起きているなんて思ってもいなったのです。あなたも、同様の状況に置かれていると考えていいでしょう。

 

循環器専門医、日本糖質制限医療推進協会提携医

1975年生まれ、東京都出身。千葉大学医学部を卒業後、循環器専門医として救急医療に邁進する中で、病気となってから受診するのではなく、その前に予防できればより多くの方が毎日を健やかに過ごすことができると確信。2018年に生活習慣病を中心とした診療をするため、千葉県船橋駅前に「いちかわクリニック」を開業(https://ichikawa-cl.com)。日々訪れる数多くの患者さんに、食生活を含めた生活習慣の改善を行っている。特に糖質制限については、遠方からの受診を希望される患者さんも多く、糖質の取りすぎを無理なく是正することで、数多くの糖尿病患者さんの改善に成功している。

著者紹介

連載無理をせずに体質改善!「ゆる糖質オフ」食事術

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