不動産を購入したときの「領収書」を捨ててはいけない理由

※本記事では、一般社団法人全国空き家流通促進機構専務理事、株式会社リライト代表取締役の田中裕治氏の著書、『売りたいのに売れない!困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版)から一部を抜粋し、事例をもとに「困った不動産」の具体的な内容や解決方法について解説します。

「売れた金額×5%」が「みなし取得額」に…

親が突然亡くなり、不動産に関する書類がどこにあるかわからなくて困ったという話をよく聞きます。

 

ですので、親が元気なうちに絶対にやっておいてほしいことは、所有している不動産のリストと、それぞれの不動産にまつわる権利関係の書類の準備です。たとえば、登記簿や権利証、設計図面、測量図面、領収書、近隣との合意書などです。

 

なかでも、忘れてはならないのが不動産を購入したときの領収書です。

 

なぜなら、領収書がないと、子供が相続した不動産を売却したとき、税金をたくさん払わなければいけなくなる可能性があるからです。ちなみに、不動産を売却した場合、売却益に対して長期保有(所有期間5年超)の場合は20%、短期保有(所有期間5年以下)の場合39%の税金(譲渡所得税)がかかることになります。

 

たとえば、親から相続した不動産が1000万円で売れたとしましょう。

 

この場合、売却価格の1000万円の20%=200万円が税金で取られるわけではありません。あくまで売却益に対してなので、1000万円から不動産を買ったときの金額を引いたものに対して、20%の税金がかかるわけです。

 

たとえば、買った金額が800万円だったとしたら、1000万円-800万円=200万円に対して20%の税金がかかるので、税金は200万円×20%=40万円となるのです。

 

ただ、先祖代々の土地など、何代も前のご先祖様が手に入れたような土地で、領収書や売買契約書がない場合はどうなるのかというと、その場合は「売れた金額×5%」を買った金額(みなし取得費)として計算することになります。

 

たとえば、1000万円で売れた場合は、1000万円×5%=50万円が買った金額となり、税金は(1000万円―50万円)×20%=190万円となるわけです。

 

つまり、800万円で買った領収書があれば、税金は40万円ですんだのに、領収書がないために、150万円も余計に税金を払わなければいけなくなるというわけです。

 

このようなことにならないためにも、親は不動産を買ったときの領収書や売買契約書を準備しておいてあげることが大切なのです。

 

なお、ご先祖様がむかし、低い価格で手に入れた土地で、買ったときの金額が、売れた金額の5%以下になるような場合は、領収書があったとしても「売れた金額の5%」を選択したほうがいい場合もあるかもしれません。

「揉め事」を抱えた不動産を子供が相続したら?

最近の分譲住宅地はお隣との境界がはっきりわかるように、境界杭が打たれていたり、ブロックで囲まれていたりしますので、お隣と境界線のことで揉めることはありません。

 

しかし、そのような境界線がはっきりしない土地は世の中にたくさんあり、なかには境界線のことでお隣と揉めていたりするケースが結構あります。

 

また、境界線以外にも、土地を貸している場合は借地人と揉めていたり、家を貸している場合は借家人と揉めていたりするケースもあります。

 

このような揉め事を抱えた不動産を子供が相続した場合、売ろうと思っても売ることができなかったり、安い値段でしか売れなかったりというように、相続した子供が大変な目に遭うことになるのです。

 

たとえば、境界線のことでお隣と揉めているような土地の場合、誰も買いたがりませんので、当然安くしないと売れないということになります。

 

私の経験で言うと、そのような土地はだいたい相場の半額くらいまで値段を下げなければ売れないケースがほとんどです。

 

また、トラブル処理に精通した不動産会社が、トラブルを解決してから転売する目的で買う場合でも、相場の3割くらいになっていないと買わないでしょう。したがって、子供に損をさせないためにも、揉め事を抱えた不動産を所有している場合は、できるだけ親の代で揉め事を解決しておくことが重要です。

相続前に「境界線」をはっきりさせておく

お隣と揉めていない場合でも、お隣との境界線があいまいな場合は、親が元気なうちに土地家屋調査士にお願いして、きちんと測量してもらって境界線をはっきりさせておくことが重要です。

 

親がやっておいたほうがいい理由は2つあります。

 

1つは、測量して境界線を確定させる際に、お隣の人の承認が必要になるわけですが、お隣を知らない子供がやるよりも、お隣を知っている親がやったほうが承認を得やすいからです。

 

もう1つは、相続前にやったほうが、子供が払う相続税が少なくてすむからです。測量代は平均30~40万円かかるのですが(広さや難易度、地域により異なります)、これを子供たちがやる場合は、相続税を払った後に残ったお金でやることになります。

 

これに対して、生前に親がやった場合は、測量代の分だけ相続財産が減るので、その分相続税が安くなるのです。

 

お墓を買うなら親が生きているうちに自分で買ったほうがいいと言われますが、それと同じ理屈です。

 

揉め事が解決しないうちに親が亡くなってしまい、揉め事を抱えたままの不動産を相続してしまった場合は、不動産鑑定士にお隣と揉めていることを伝えて、鑑定評価をしてもらうことをおすすめします。

 

なぜなら、揉めている不動産は相場の半額くらいでしか売れないのに、相続税評価額にはそのことが反映されないため、高い相続税を払わなければいけなくなるからです。

 

しかし、不動産鑑定士に鑑定評価してもらうと、揉めていることによる売りづらさが考慮されるため、その評価額をもとに相続税の計算をすれば、相続税が安くなりますし、不動産鑑定士の鑑定評価書があれば、税務署も認めてくれる確率が高くなります(ただし、必ず鑑定評価の金額が通るというわけでもありません)。

 

ですので、揉めている不動産を相続してしまった場合は、不動産鑑定士に揉めていることを伝えて鑑定評価してもらうことをおすすめします。

 

一般社団法人全国空き家流通促進機構専務理事
株式会社リライト代表取締役 

1978年、神奈川県生まれ。大学卒業後、大手不動産会社に勤務した後、勉強のために買取再販をメインとする不動産会社に転職。34歳で不動産会社を設立し独立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけていき、役所の担当者や近隣住民と辛抱強く交渉し、数多くの「負動産」を「富動産」に変えるなど、「困った不動産」を抱えた人たちの悩みを解決してきた。現在も、日本全国の「売れない」と言われて困っているお客様に寄り添い、「売れないはずの物件」を多数売却する傍ら、市役所や区役所、NPO法人などで無料相談員も務めている。人生のミッションは、相続でワケアリ物件を抱えて困っている人を1人でも多く救うこと。著書に『不動産相続対策~貰って嬉しい富動産、貰って損する負動産』(ギャラクシーブックス)がある。

著者紹介

連載売れない、貸せない…「困った不動産」を相続したら?事例で学ぶ“負動産”対策

売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ

売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ

田中 裕治

ぱる出版

現在、日本には約820万戸の空き家がある。少子高齢化によって田舎の親の家が空き家になる率が高まり、住むに住めず、売るに売れず、管理もできない家を相続した子供にとっては深刻な問題だ。本書では、親から相続した「お荷物…

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