祖父の財産に24名の相続人…「相続登記がない」物件の売却法

今回は、祖父の代で「相続登記」が途切れている物件を売却した事例を見ていきます。※本連載では、一般社団法人全国空き家流通促進機構専務理事、株式会社リライト代表取締役の田中裕治氏の著書、『売りたいのに売れない!困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版)から一部を抜粋し、事例をもとに「困った不動産」の具体的な内容や解決方法について解説します。

「相続登記がされていない」不動産はたくさんある⁉

不動産を相続した場合、基本的には不動産の名義を書き換える必要があります。たとえば、父親が亡くなって長男が土地と家を相続した場合、長男名義に書き換えなければいけないわけです。この相続登記をしていないと、登記上、所有者ではないことになりますので、そのままでは売ることはできません。

 

しかし、世の中には「忘れていた」といった理由に加え、「どうせ売れないし、売るつもりもない」とか、「手続きが面倒くさい」といった理由で、相続登記がされていない不動産がたくさんあるのです。

 

では、相続登記がされていない不動産を相続してしまったら、どうすればいいのでしょうか? そのまま売らずに住み続けるのなら、相続登記をせずに放っておくという選択肢もあるかもしれません。固定資産税さえきちんと払っていれば、差し押さえられることもないでしょう。

 

しかし、売却のことや、自分の子供への相続のことを考えるなら、自分の代で、きちんと相続登記をすませておくことをおすすめします。

 

相続登記は相続発生後、数年たってからでもできますので、法務局で相続登記をすれば売ることができます。たとえば、祖父が所有していた不動産の相続人が父親1人だけで、その相続登記がされておらず、その不動産を自分が相続した場合は、まず祖父から父親に名義を変更し、その後、自分に名義を変更すればOKです。

 

なお、「○年○月○日 父相続」「○年○月○日 相続」という登記(一件で自分名義にできる)が可能です。

相続登記が祖父の代で止まり父親の代が抜けていた…

ところが、相続人が何人もいるような場合は大変です。高知県のYさんからの依頼も、「相続登記がされていない不動産を売却したい」というものでした。

 

相続登記が祖父の代で止まっており、父親の代が抜けていたのです。Yさんの依頼に対し、私たちはまず相続人が誰なのかを特定することから始めました。すると、祖父の財産を相続する権利のある人は、Yさん以外になんと24人もいたのです。

 

そこで、まずは弁護士に依頼をして、24人の所在を調べてもらい、全員に「高知県の不動産をまずYさんの父親が相続し、その後Yさんが相続する」ことに同意してもらうための書類を送付しました。

 

かなり大変な作業でしたが、なんとか全員の同意を得ることができ、晴れてYさんが相続することになったのです。Yさんのように相続人が多い場合、自分でこの作業をするとなるとかなりの労力と時間がかかりますので、司法書士や弁護士にお願いしたほうがいいでしょう(ただし、相続人間で係争がある場合は、司法書士への依頼はできません)。

 

【ポイント】

・ 相続登記は相続発生後、数年たってからでもできるが、相続人が多いと大変な作業になる

地元の企業や工場の社員寮として使ってもらう方法も

アパートを1棟相続できれば、毎月家賃収入が入ってくるので普通はうれしいものですが、もしもそれが空室だらけだったとしたら…。ちょっと悩んでしまうのも無理はありません。アパートの空室対策としては、家賃を下げるという方法もありますし、倉庫や物置きとして貸すという方法もあります。

 

ただし、これらの方法は家賃収入が減ってしまいますので、ローンの返済がまだ残っている場合はあまりおすすめできません。おすすめなのは、地元の企業や工場の社員寮として使ってもらう方法や、語学学校と提携して初めて日本にやってきた留学生用のアパートとして使ってもらうという方法です。もし、近くに企業や工場、語学学校などがあれば、営業してみるといいでしょう。

 

神奈川県のTさんから、「ローンの返済がきついのでアパートを売却したい」という相談を受けたのは1年前のことでした。

 

Tさんの話によると、父親の死後、アパートを1棟相続したのですが、アパートの建築費のローンがまだ残っていたため、空室が出ると毎月のローン返済が厳しくなるとのこと。

 

現在、8部屋中3部屋が空室で、赤字の状態が半年以上続いていたため、これ以上傷口が大きくなる前にアパートを処分したいという依頼でした。そこで、私は不動産投資家向けのサイトにいくつか登録し、販売することにしたのです。

 

その結果、なんとか売却することができ、その売却代金でローンの残りを返済することができたのです。最悪の場合、自己破産しなければいけない状態だっただけに、最悪の事態を回避することができてよかったと思います。

 

今後ますます少子化が進むことが予想される中で、アパートやマンションの空室問題はそう簡単に解決できるとは思えません。したがって、Tさんのように空室だらけでローンの残債が残っているアパートやマンションを相続してしまった場合は、傷口が大きくなる前に早めに処分したほうがいいといえるでしょう。

 

【ポイント】

・空室だらけのアパート・マンションは早めに処分したほうがいい

 

田中裕治

株式会社リライト 代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構専務理事
株式会社リライト代表取締役 

1978年、神奈川県生まれ。大学卒業後、大手不動産会社に勤務した後、勉強のために買取再販をメインとする不動産会社に転職。34歳で不動産会社を設立し独立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけていき、役所の担当者や近隣住民と辛抱強く交渉し、数多くの「負動産」を「富動産」に変えるなど、「困った不動産」を抱えた人たちの悩みを解決してきた。現在も、日本全国の「売れない」と言われて困っているお客様に寄り添い、「売れないはずの物件」を多数売却する傍ら、市役所や区役所、NPO法人などで無料相談員も務めている。人生のミッションは、相続でワケアリ物件を抱えて困っている人を1人でも多く救うこと。著書に『不動産相続対策~貰って嬉しい富動産、貰って損する負動産』(ギャラクシーブックス)がある。

著者紹介

連載売れない、貸せない…「困った不動産」を相続したら?事例で学ぶ“負動産”対策

売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ

売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ

田中 裕治

ぱる出版

現在、日本には約820万戸の空き家がある。少子高齢化によって田舎の親の家が空き家になる率が高まり、住むに住めず、売るに売れず、管理もできない家を相続した子供にとっては深刻な問題だ。本書では、親から相続した「お荷物…

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