養子を迎えることで「課税対象額」を圧縮する
相続税対策を紹介するとき、必ずといっていいほど取り上げられるのが「養子縁組」を活用する手法です。
一昔前は、被相続人に何人も子どもがいるケースが一般的でした。ところが近年では、少子化により相続人の数が減少しています。そこで孫のなかから、養子を迎えて祖父、祖母の籍に入れ、一代飛ばしで財産の一部を引き継がせたいと考える方も増えてきました。
養子縁組が節税につながる要素は主に3つあります。
①基礎控除額の増額
②法定相続人が1名増加する
③生命保険金、死亡退職金の非課税枠増額
それぞれ、相続人の数によって基礎控除枠や非課税枠が増額されるため、養子を迎えて相続人の数を増やすことで、課税対象額を圧縮することができるのです。課税対象額が小さくなれば、累進課税の税率も低く抑えられますから、相乗的な節税効果が期待できます。
そんな素晴らしい効果があるのなら、なるべく多くの養子を・・・と考えたいところですが、相続税の計算対象とされる養子は1人に限られています。民法上は特に人数の制限はありませんが、税法上では過剰な節税を防ぐため「相続税の控除や非課税枠の対象となるのは1人だけ」と定められているのです。
逆に考えれば、養子による節税効果はそれほど大きい、といえます。
相続税額の2割加算の制度にも留意
一例を挙げて、養子を活用することによってどれくらい相続税の負担が軽くなるのか計算してみたのが、下記の図表です。
[図表]養子縁組を活用した場合の相続税額(平成27年1月1日以後相続開始)
Fさん夫婦には、子どもが2人、孫が3人います。ご主人のFさんが被相続人になるケースで、孫の1人を養子にした場合とそうでない場合で、相続税額がどれほど変わるのか、遺産総額ごとに試算してみました。
上記の通り、相続財産が多くなるほど、養子縁組による節税効果も大きくなっていきます。
こういった節税効果を自身で試算してみるのもおすすめですが、一点だけ気をつけていただきたいことがあります。孫養子が遺産を相続するときには、実子に比べ相続税が20%加算されることになっているのです。
「一代飛ばしで、孫にも祖父母の財産を相続させよう」と考えるときは、この点も考慮して相続計画を立てる必要があります。